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鉄道公園として甦った廃線の小駅 若柳駅(旧くりはら田園鉄道)

7/9(日) 18:10配信

サライ.jp

文・写真/杉崎行恭(フォトライター)

見渡すかぎりの田んぼが続く宮城県栗原市の大平原。ここにかつて走っていた鉄道の駅が、保存鉄道の玄関として復活した。2007年に廃止されたくりはら田園鉄道の「若柳駅」だ。

もともと車庫があった駅で、廃止後も木造駅舎とホームや車庫が保存され、いまでは『くりはら鉄道公園』として整備されている。

毎月開催される『くりでんイベント』を訪ねると、廃止前は修繕を重ねてみすぼらしかった駅舎も、見事に改修されていた。

「取り壊された駅の材木を使って修理しました」とボランティアの駅員さんが語る駅舎は、外壁や窓枠も開業時のイメージでよみがえり、午前10時には大勢の人たちがつめかけていた。

今日は若柳駅から伸びる900mの線路を使ったレールバイクの日、駅舎の前から足こぎ式トロッコのレールバイクが次々と発車していく。

ここではくりはら田園鉄道で活躍したKD95形ディーゼル気動車も動態保存されていて、毎月その乗車会も開催されている。

私が最初にこの鉄道を訪ねたのは、まだ電車が走っていた栗原電鉄のころで、当時は栗駒山ろくの細倉鉱山から鉛や亜鉛の鉱石を運んでいた鉱山鉄道だった。やがて1987年に細倉鉱山が閉山、主力の鉱石輸送を失った栗原電鉄は1993年に電車ではなくディーゼル気動車の鉄道として第三セクター化された。

これがくりはら田園鉄道で、2007年の廃止まで東北本線石越駅と細倉マインパーク前駅を結んでいた。現役当時は石越駅や栗駒駅など、個性的な駅舎がならぶ面白い小私鉄だった。

若柳駅舎はその唯一現存する生き残りなのだ。

構内にはかつての島式ホームが残り、栗原電鉄時代のM15形電車や、名古屋鉄道からやってきたレールバス気動車KD10形(よく揺れる車両だった)、そして2両のKD95形気動車が保存されている。この2種類のKD(くりはら田園鉄道のディーゼル気動車の意味)はいずれも動態保存で、KD95型の方は毎月の試乗会に運転される。

また2017年4月には、かつての車両工場が鉄道の歴史を伝える『くりでんミュージアム』が開館した。

今では『くりはら田園鉄道公園』のとなりに農産物直売所や芝生広場が設けられ、その中心に旧若柳駅舎が鉄道アトラクションの玄関となっている。出札口や手荷物窓口なども昭和風に復元された待合室では、次々にやってくる人たちもクラシックな駅舎を懐かしんでいた。

わずか10年前に現役で走っていた鉄道なのに、乗る人が減少して廃止に追い込まれた「くりはら田園鉄道」。いまではイベントの日になると、駐車場が一杯になるほどの人気ぶりだった。

【訪ねてみたい名駅舎】
『若柳駅』(旧くりはら田園鉄道)
■所在地: 宮城県栗原市若柳字川北塚ノ根
■駅開業:1921年(大正10年)12月20日
■駅廃止:2007年(平成19年)4月1日
■アクセス:JR石越駅から市民バスくりはら田園線で約7分、若柳中町下車
※くりはら田園鉄道公園は4月1日~11月30日まで公開。レールバイクや乗車会については栗原市のHPでご確認ください。

文・写真/杉崎行恭
乗り物ジャンルのフォトライターとして時刻表や旅行雑誌を中心に活動。『百駅停車』(新潮社)『絶滅危惧駅舎』(二見書房)『異形のステーション』『廃線駅舎を歩く』(交通新聞社)など駅関連の著作多数。(杉崎のさきは正しくは「たつさき」)

最終更新:7/9(日) 18:10
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