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【書評】旅立つ人も見送る人も「ありがとう」といえる在宅医療

7/10(月) 16:00配信

NEWS ポストセブン

【書評】『なんとめでたいご臨終』/小笠原文雄・著/小学館/1512円

【評者】奥野修司(ノンフィクション作家)

 人生の最期を自宅で過ごした人たちの、奇跡ともいえるエピソードがぎゅっと詰まった本である。人にはいずれ死が訪れる。そのとき不安がなく、笑って逝けるなら、死はちっとも怖くない。書き手は、そのことを在宅医療の現場で実践し続けている小笠原文雄さんである。

 かつて小笠原さんの往診に同行させてもらったとき、死に逝く人と笑いころげながら話をするのを見て唖然とした記憶がある。

 死は忌むべきもの、だから見送った家族は怒涛の涙を流した。ところが小笠原さんの看取りはそうじゃなかった。とりわけ僕の常識をふっ飛ばしたのは、臨終直後のご遺体の前で、家族と一緒に笑顔で記念写真を撮ったときだ。

 ええっ、亡くなったばかりなのに笑顔でピース!? あのときは心臓が飛び出すほど驚いたが、小笠原さんは、さも当然のように言う。

「旅立つ人が希望死・満足死・納得死ができたなら、離別の悲しみはあっても、遺族が笑顔で見送ることができるのです。『なんとめでたいご臨終』と言わずにはいられません」

 そんな死を叶えてくれる小笠原さんだからこそ、死を「めでたいご臨終」と言い切れるのだ。

 小笠原さんが岐阜で在宅医療を始めたのは二十五年前。最初は普通の医師だったが、ある末期がんの患者が、いつも使っていた鞄と靴を枕元に置き、「明日、旅に出るから」と妻に言い残すと、予言通りに翌日亡くなった。その穏やかな死に顔から、「最期まで家にいたい」という願いが叶った時の、目に見えない命の不思議を感じた小笠原さんは、それ以来、在宅医療に取り組んだ。

 住み慣れた家で最期まで暮らしたいと思いながら、現実には七割の方が病院で亡くなっている。「家族に迷惑をかける」「お金がない」「介護は無理」「ひとり暮らしだから」とさまざまな理由で。末期がんで一人暮らしの在宅医療は無理と言われる理由は、誰もいない夜中の孤独死を心配するからだ。でも病院だって孤独死はいっぱいある。こんな誤解が、在宅死を望みながら、在宅医療を遠ざけているのだろう。

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