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ECBの6月政策理事会の議事要旨-Unwarranted

7/10(月) 9:12配信

NRI研究員の時事解説

はじめに

ECBの当面の政策運営に関する焦点は、来年以降の資産買入れについて、どの時点でどのような方針を示すかにある。今回の議事要旨はこの点についての直接的な議論を含む訳ではないが、今後を展望する上でのいくつかのポイントを示唆している。いつものように内容を検討したい。

金融経済情勢の判断

ユーロ圏経済が個人消費を中心に堅調な拡大をみせており、今後も設備投資による寄与の拡大も含めてサステナブルな成長パスを辿るとの見方は、執行部(プラート理事)と政策理事会メンバー(域内中銀の総裁)の間で概ね収斂していることが示されている。

しかし、物価に関しては政策理事会で活発な議論がなされたことが記されている。まず、執行部(プラート理事)は、(1)賃金の伸びの低迷がインフレ基調を抑制している、(2)中間財の価格上昇が消費財価格に波及しない、の2点を確認した。その上で、マクロ的には未利用の経済資源の存在が価格を抑制していると整理した。

これに対し、政策理事会メンバー(域内中銀の総裁)は、このところの総合インフレ率が、原油を含むコモディティの価格に大きく左 右される一方、基調的インフレ率が抑制的である点を確認した上で、いくつかのポイントを巡って議論を行った。

まず、最新のスタッフ見通しで、経済成長見通しを上方修正した一方、HICP総合インフレ率見通しを下方修正したことの整合性に多くの(a number of)コメントが示された。つまり、需給ギャップが縮小すれば最終的にインフレ圧力の上昇につながるとの指摘がなされた一方、経済資源の稼動を示す指標には不確実性が大きいとの注意もなされた。その上で、スタッフ見通しもHICPコアインフレ率の見通しは概ね維持しただけに、インフレ見通しの下方修正を強調すべきでないとの主張もなされた(この点は、政策理事会直後のドラギ総裁による会見のトーンとはやや異なる)。

また、失業率の低下に対して賃金上昇が抑制的であることにも、多くの(a number of)コメントがなされた。つまり、近年ではユーロ圏のフィリップスカーブがフラット化している点が指摘され、その要因として、これまでの労働市場改革が、雇用の柔軟性を高めたが賃金上昇を抑制したといった構造要因による影響が示唆された。

賃金形成の展望についてはさらに議論が続き、(1)労働市場改革の継続や、バックワードルッキングな要素による賃金設定の残存などを考えると、中期的にも賃金は抑制的に推移するとの意見と、(2)計量モデルによる予想に(過去の影響で)下方バイアスがあるほか、雇用の改善に伴ってパートなどの一時的雇用からフルタイムの雇用へ重心がシフトすることを考えると、賃金上昇もどこかで顕著になるとの意見がともに提示された。

今回の議事要旨は、これらの各々の点に関して、どちらの意見が優勢であったかは明確にしていない。これはECBによる意思決定の特殊性-1国1票が原則であるが、ローテーションにより形式的に崩れているだけでなく、実質的にも大国の主張が相対的に影響をもつとみられること-の反映でもあろうが、客観的にも双方の主張に相応の合理性があるだけに、アプリオリに決着しうるものではないようにみえる。

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