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米SFドラマ「エクスパンス」が変えた番組づくりの“常識”

7/10(月) 7:30配信

WIRED.jp

「実写化作品は原作小説より劣っている」と思っているなら、考えを改めたほうがいいかもしれない。いま、米国のテレビドラマの世界では、原作者が映像化作品の制作に積極的に加わっているのだ。米SFドラマ「エクスパンス」から考える、原作と実写版の素晴らしき関係。

このドラマを見てはいけない...

「ウォーキング・デッド」や「ゲーム・オブ・スローンズ」、「アウトランダー」は、本に基づいて制作されたテレビシリーズのなかでも成功している作品だ。しかし最近まで、原作者のほとんどが、実写版の制作にかかわることはなかった。大抵の場合、制作会社が原作者を巻き込むことはないと、ジェイムズ・S・A・コーリイの名で、ダニエル・エイブラハムとともにSF小説『The Expanse』(巨獣めざめる)を書き上げたタイ・フランクは言う。

HBOはジョージ・R・R・マーティンのファンタジー作品によって成功を収めたが、文学作品の実写化を試みるそのほかのテレビ局は、原作に忠実な作品をつくるのに苦戦している。「ライターズルーム」(脚本家の作業場)に原作者を入れることさえも渋っている。

フランクとエイブラハムは、ともに米ケーブルテレビ局Syfyの「エクスパンス -巨獣めざめる-」を手がけ、シリーズ3話の脚本を書き上げた。ニール・ゲイマンは「アメリカン・ゴッズ」のエピソードを脚本し、今後Amazonで公開予定のシリーズ6話をすでに完成させている。パトリック・ロスファスにおいては、『キングキラー・クロニクル』実写版の新しいキャラクターやストーリーラインを制作している。いまハリウッドで人気のある、本を原作にしたテレビ作品には、原作者が少しずつ制作にかかわり始めているものがあるのである。

ドラマ制作の常識は変わった

フランクとエイブラハムが『The Expanse』テレビ版の脚本チームへの参加を依頼された当初、それがどれだけの意味をもつのかに気づかなかったとフランクは言う。

エグゼクティヴプロデューサーのマーク・ファーガスとホーク・オストビーはとても協力的で、製作会社のアルコン・エンターテインメントは積極的。しかし、ショーランナーのナレン・シャンカルは当初、フランクとエイブラハムを制作にかかわらせるという前例のない試みにためらっていた。いまとなっては、フランクとエイブラハムがほかの仕事のためにライターズルームを出なければならないとき、シャンカルの機嫌は悪くなるそうだ。「ぼくたちが彼の考え方を変えたんだろう」とフランクは言う。

慣例を覆しているのは2人だけではない。「レモニー・スニケット」という名で『世にも不幸なできごと』を執筆したダニエル・ハンドラーは、同シリーズを映像化したNetflix作品第1シーズンの制作時に、ライターズルームにいただけでなく、制作方法さえも変えてしまった。「レモニー・スニケットの世にも不幸なできごと」[関連記事]シーズン1のライターズルームでは、脚本家たちが互いにどちらが面白いアイデアを出せるかを競い合う、「とても競争的な環境だった」とハンドラーは語る。しかしシーズン2では、ロサンゼルスの会議室ではなく、原作者ハンドラーが脚本家をサンフランシスコの自宅へ招くことができるよう、Netflixを説得させたという。

ハンドラーはいまでは、「レモニー・スニケットの世にも不幸なできごと」の脚本家たちのランチにお手製のスープを、夕食前の時間になればウィスキーのカクテルを毎日振る舞うようになった。会社という枠から飛び出してダイニングルームでミーティングを行うことで、よりリラックスした、協力的な環境をつくることができ、脚本をうまく進めることができたという。

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最終更新:7/10(月) 7:30
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