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トランプ政権の行方(深層NEWSの核心)

7/10(月) 7:02配信

中央公論

 米国のトランプ大統領が就任して百日が過ぎた。アメリカ・ファーストを掲げる一方、化学兵器を使ったとみられるシリアを空爆。北朝鮮にも「力」による問題解決をいとわない姿勢を見せる。「深層NEWS」でもたびたびこの問題を取り上げた。そのゲスト発言を踏まえて、キャスター二氏が語り合った。

◆経済政策
「トランプ政権の経済政策で見えてきたのは、産業政策と金融政策の乖離。産業政策は極端な保護主義。TPP(環太平洋経済連携協定)から離脱し、NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを打ち出した。要するに選挙でトランプを支えた白人貧困層の人たちに公約を果たすという意味で保護主義をとろうとしている。金融政策に関しては、ウォール街の代弁者みたいな人を財務長官、商務長官にした。強欲なウォール街の人間がマネーゲームを肥大化させていく流れが見えるのでは、というのがこの政権の持つ不安要素」=寺島実郎・日本総合研究所会長(四月十八日)

「TPPで日本が譲歩したことは当然のように取れるという考え方があるが、全然そうじゃない。あれは多国間の中でぎりぎり決めたこと。(二国間交渉で)アメリカが単純に要求しても、そんなのダメというところから議論は始まる」=山崎達雄・前財務省財務官(四月十八日)

近藤 麻生副総理、ペンス副大統領による日米経済対話が本格的に始まりましたが、アメリカ側の体制がまだ整っていないこともあり、具体的な協議にはいたっていません。しかし、過去の日米二国間の通商交渉を見ますと、日本が一方的に譲歩を迫られる展開が多かったのも事実です。日本側も、米抜きのTPP合意の枠組みを交渉カードとして使う準備が必要です。

吉田 中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)の参加国数がいつの間にかADB(アジア開発銀行)を抜いています。日本の経済分野での外交力が問われるところです。アメリカとも、単に二国間の経済問題だけでなく、今後の東アジアをどのようにしていくか、構想力を持ち、協力しあう関係を作っていくことが大切ではないでしょうか。

◆米中関係の今後
「中国はいまだに国営企業があって、補助金とかいろんな意味で貿易をゆがめている部分がある。そこをきちんと市場開放させたいという気持ちはアメリカの産業界にも議会にも強いと思う」=山崎氏(四月十八日)

「中国は最近になって、北朝鮮の核開発は自分にとっても相当の脅威になる、という認識では近づいてきた。こういうところは国連決議だからやる、という形での北朝鮮対策は進むと思う。ある程度対応することによって、台湾や経済、南シナ海といったところとのパッケージで合意したい」=朱建栄・東洋学園大学教授(四月六日)

「北朝鮮を緩衝地帯としておいておくことは中国の国家戦略上大事なこと。中国が北朝鮮の政権を除くことに合意し、その後の北朝鮮を中国の影響力下にある国家として維持することも可能性としてはある。トランプ大統領と習近平主席は間違いなくその話をしているはず」=石破茂・元防衛相(四月十三日)

「中国にとって悪夢なのは、北朝鮮が暴発してアメリカが軍事攻撃する。それに中国が参戦せざるを得なくなって、米中が衝突すること。香港で、北朝鮮が交戦状態に陥っても中国は参戦しなくても良いという報道が出た。少しずつそうした考えを出していき、それが北朝鮮への牽制にもなっている」=小原凡司・東京財団研究員(四月十七日)

吉田 中国と北朝鮮が結んでいる中朝友好協力相互援助条約では、一方が攻撃されたら他方は自動的に助けなければならない、という自動参戦条項があります。参戦しなくても良いという報道からは、米中が水面下でいろんな想定をして意見交換をしていることが推測できます。

近藤 トランプ大統領は当初、中国をしきりに非難していましたが、対北朝鮮で中国の協力が必要になると、パートナーだから為替操作国として認定しないと言い出しました。トランプ大統領の場合、軍事と経済の取引が十分あるということを考慮して、日本も中国、アメリカへの対応をよく考えておくべきです。

◆北朝鮮問題
「オバマ政権が二〇一三年に(シリアで)化学兵器が使われたことに対して武力行使できなかった。(今回のシリア爆撃は)それと逆のことをやることによって、自分たちが強い決意を持っていることを示したかったのでは」=大野元裕・民進党参院議員(四月七日)

「中国、北朝鮮に非常に強い形でアメリカの決意を示す。そのことで米中首脳会談でアメリカが常に攻勢に出られる」=森本敏・元防衛相(四月七日)

「あってはいけないことだが、仮に攻撃するという場合においても、手立ては尽くした、外交的な努力はした、それでも北朝鮮は聞かないじゃないか、というのと、いきなり攻撃します、というのでは全然違う。中国が納得せずに空爆した場合は、中国が北朝鮮の側について戦争が行われる可能性がある」=前原誠司・元外相(四月十三日)

「北朝鮮情勢は、二〇年ずっと話し合いで外交努力をしてきたが動かない。このまま続けようとしても時間がない。ICBM(大陸間弾道弾)は、金正恩委員長が言ったように完成段階に来ている。核兵器の小型化もできつつある。これが完成して実戦配備してしまうと手に負えない。強硬手段をとってでも今がチャンスだと(アメリカが)思うのは当然のこと」=李相哲・龍谷大学教授(四月十七日)

近藤 北朝鮮はどんなことがあっても核・ミサイルの開発に突き進んできました。これまでの「時間」はすべて北朝鮮側に有利に働き、核開発もミサイル開発も止められませんでした。対話のための対話はもうあり得ません。アメリカはまず中国の協力を求めていますが、うまくいかない場合は今までより強硬な手段に打って出る可能性が、現実味を帯びてきました。

吉田 万が一有事になったら日本はどうするか。これまでミサイルばかり注目されてきましたが、サイバーテロもあり得るし、北朝鮮の工作員が日本国内でさまざまなテロ活動をするかもしれない。また韓国に住んでいたり観光で訪れていたりする日本人をどのように救出するかという問題もあります。日本もあらゆる備えをしておかなくてはいけません。
(了)

最終更新:7/10(月) 7:02
中央公論

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