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真鍋大度、evalaによる最高のイマーシヴ・エクスペリエンス:「Sonar+D」現地レポート

7/10(月) 12:10配信

WIRED.jp

スペイン・バルセロナで、およそ12万もの人々が集結する音楽フェスティバル「Sonar」。その兄弟イヴェントであり、音楽を起点にイノヴェイションの創発を促すプラットフォーム「Sonar+D」では、時代を先駆ける実験的なインスタレーションが続々と披露される。日本からは、真鍋大度が率いるライゾマティクスリサーチと、サウンドアーティストevalaが参加した。

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音から生まれる、イマーシヴ・エクスペリエンス

Sonar Festivalは、DayとNightの2会場で構成され、Sonar+Dは昼間のDay会場のなかにある。およそ12万人が熱狂するクレイジーな巨大ステージがNightだとすれば(幕張メッセ級のステージが3~4つあると想像してほしい)、Dayのライヴ会場と一体化したSonar+Dはその大舞台を迎える一歩手前の実験場でもあるのだ。

「イマーシヴ・エクスペリエンス(没入体験)」をキュレーションテーマのひとつとした今年のSonar+Dでは、数々の先鋭的でイマーシヴなインスタレーションが展開された。

「トーク、そしてNosaj Thingとのライヴにも参加した真鍋大度率いるライゾマティクスリサーチ、NONOTAK、そしてサウンドアーティストevalaたちがもたらしたイマーシヴな体験は、どれも大きな話題を集めました。いずれも、現代にしかない最先端のテクノロジーを巧みに扱いながら、最高のショウに仕立てているのです」

Sonar+Dキュレーターのアントニア・フォルゲーラがそう語るように、「没入する体験」とは、昨今よく語られる映像中心のVRデヴァイスにとどまらない。例えば、MarketLabに出展したサウンドアーティストevalaが展開するサウンドプロジェクト「See by your ears」では、真っ暗闇の無響室のなか、たったひとりで「ヴァーチャル・リアリティ」を体感するという、新たな音楽体験を提案する。(同シリーズの作品「hearing things #Metronome」は、昨年12月WIRED Lab.で体験イヴェントが開催された)

小さな暗い部屋のなかで耳を澄ませると、マルチチャンネルのスピーカーから放たれた無数の音が、まるで生き物のよう飛び交い始める。今回発表された「大きな耳をもったキツネ」という8分間の音楽ピースでは、360°マイクで自然環境をフィールドレコーディングした音が素材に用いられているため、木々のざわめき、滝を流れる水、雪を踏みしめる音などが聞こえてくる。しかし、それらの聞き慣れた音がだんだんと融解し、増殖し、まったく異質な音の現象へと変化するとき、体験者は自身の脳内で、未曾有のファンタジーが生まれていることを知るのだ。

「信じられない、体が溶けてなくなっていた気がする」
「ファンタスティック! ついさっきまで、森の中にいたわ!」
「音が、かたまりになって迫ってきたの」

ドラッグ体験者の言葉ではない。これらはすべて、evalaの作品を体験し終えた人々の感想の一例だ。プロジェクトのタイトル通り「耳で視る」とevalaが語るように、この音楽体験では、人の内側から何らかのイメージを立ち上がらせる。そこで体得した経験は、何ごとにも代え難い本人だけの「リアル」として記憶されることだろう。

こうした表現手法は、ユニークなアート体験であるとともに、SNS時代の映像“シェア”全盛期に対する一種のカウンターであるとも言える。本来、音楽は音楽単体で成立していたはずなのに、いまはMV付きのYouTube試聴が当たり前になった。その一方で、このevalaの作品にヴィジュアル表現は一切なく、録音したところで3Dの音楽体験はモノラル/ステレオスピーカーでは一切再現できない。そこには、「見えないものから、世界を知る」というevalaの哲学が示されている。

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最終更新:7/10(月) 12:10
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