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上場企業でも資本金1円! 減資が増えるワケ

7/10(月) 6:00配信

東洋経済オンライン

 「これは……」。記者にリリースを見せられた瞬間、総務省の自治税務局都道府県税課の担当官は絶句した。

【表】減資で資本金が激減した企業一覧

 そこには「外形標準課税(の負担)が株主価値を棄損させている。減資により負担軽減などのメリットを享受」できる、と書かれていたのだ(一部略)。

■税務メリットのために減資? 

 このリリースを出したのは、ジャスダック上場でホテルを運営するレッド・プラネット・ジャパン。シンガポールに本社を置くレッド・プラネット・ホテルズの日本法人だ。

 レッド・プラネットは3月29日に開催した定時株主総会で減資を付議。繰越損失を塡補し、さらに上場企業としては前代未聞の資本金1円を可決させた。

 同じ例はほかにもある。創薬ベンチャーのオンコセラピー・サイエンスは欠損塡補も行わず、資本金のみを0.5億円まで縮小。減資の理由を「税制上のメリットを享受」とし、欠損塡補をしない理由は「勘定科目間の振り替えにすぎない処置に意味はない」(経営管理部)と説明する。

 従来、配当原資ともなる利益剰余金の赤字を塡補するため、減資を行う企業は多々あった。だが、レッド・プラネットやオンコセラピーのように“節税目的”と、はっきり打ち出す減資は極めて異例だ。

 利益とは関係なく、資本金や従業員数、事業所の大きさなどによって決まるのが地方税の外形標準課税だ。赤字企業でも、地方自治体の道路整備やごみ収集といった行政サービスは応益負担すべきとの考えから、2004年に導入された。

 税務上、資本金1億円以下を中小企業、1億円超を大企業と分類。中小企業は外形標準課税は適用されないほか、国税である法人税、同じ地方税である法人事業税などの税率が低くなるなどメリットが大きい。


 今年4月から利益に課税する法人税率が引き下げられる一方で、外形標準課税が拡大されたことが、減資を呼び込んだようだ。

 2017年に入って減資を決めた上場企業は約80社と2008年以来の高水準。このうち資本金を1億円以下にしたのは7社ある。

■節税の意図はないと説明するが…

 レッド・プラネットは減資の公表後、東京証券取引所からの聴取や、税務調査を受けた。同社の王生貴久・財務担当取締役「法令は順守している。株主価値を守る正当な手段だ」という。

 パスポートやパレモ、スリーエフなどは「節税の意図はない」と説明。エコナックホールディングスは「資本金の多寡だけで資金が外部に流出するのは、株主にとって不利益」と反論した。

 赤字企業からの徴税を可能にした外形標準課税だったが、節税目的の減資を行う企業が現れ、地方税を管轄する総務省は頭を悩ませる。そろそろ制度設計を見直す時期に来ているのではないか。

筑紫 祐二 :東洋経済 記者