ここから本文です

不妊治療ブームなのに、成功率は世界ワーストの日本。頼りすぎは危ない

7/10(月) 8:50配信

女子SPA!

 いまや、「不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦」は18.2%、5組に1組にも上ります(※1)。独身でも、「いまの生殖技術なら40~50代でも産めるよね」と考えて、20~30代は仕事や楽しみを優先する人も増えています。

⇒【グラフ】日本は、治療件数が世界一にもかかわらず、出産率は世界最下位。

 実は不妊治療にはさまざまなリスクがあるのに、それを知らされずに、不妊治療がトレンド化している――。そう指摘する著書『本当は怖い不妊治療』には、生殖医療の驚くべき実態が取り上げられています。

 著者であるジャーナリストの草薙厚子さんに話を聞きました(同書の監修は黒田優佳子医師)。

◆治療件数は世界一なのに、出産率は最下位!

――医療というよりビジネス化した生殖医療を、草薙さんは「コウノトリ・ビジネス」と書いていますね。「コウノトリ・ビジネス」にハマる女性が増えているのはなぜでしょうか。

草薙:晩婚化で出産時期に関しての焦り、計画的な出産志向もあるのではないかと思います。社会背景として、少子化に歯止めがかからないため、「子どもを産め、増やせ」みたいな風潮もある。実は日本は、治療件数が世界一にもかかわらず、出産率は世界最下位なんですね。(同書掲載の「生殖補助医療の実施件数と出生率」より)

 タレントさんたちが不妊治療について発信している影響もありますよね。元AKBの川崎希さんとアレクサンダー夫妻は、20代半ばの若さで不妊治療を受けていますとSNSで公表していました。

――いま、30代の私の周りでは、卵巣年齢を調べる血液検査(AMH ※2)を受けている女性が多いんです。

草薙:勧めるクリニックは多いらしいですが、AMH値にはいろいろな要因が関与しているようですし、個人差が多いこともあるようですので、実はそんなに信頼性の高い検査ではないという意見もあります。

――え~っ! では、よく言われる「卵巣や卵子の老化」はどうやって調べたらいいんですか?

草薙:年齢が上がるにつれて、妊娠率・出産率が下がるのは事実です。でも、それだけでは決められない。卵子と精子の健康度合いにもよるし、個人差が大きい。

 誰もがAMH検査を勧められ、その結果、一律で「卵子年齢○歳だから」のような誤解を招く表現は適切ではないのではないか、ということも意見としてあります。

◆卵子を凍結しておいても、妊娠・出産できるのはたった1%

――そうなんですか…。あと、20代のうちに卵子を凍結しておこうと考える女性も出てきていますよね。

草薙:そうですね。卵子をマイナス196℃で保存して、将来それを融解して体外受精に使うという治療法なのですが、凍結することで何か生命体に大事なものが失われたり、壊れてしまうのではないか、本当に凍結してしまっていいのか、という単純な疑問も湧きます。

 本にも書きましたが、慶応大学名誉教授の吉村泰典先生(元日本産科婦人科学会理事長)は、「凍結卵子で生まれた子どもへの悪影響はないかなど、安全性についても不明な点が多い」と言っています。不妊クリニック側は安全だと言いますが、本当に100%安全なのかどうかは、まだ証明できていない状態です。

 本書を監修してくださった医師の黒田優佳子先生も卵子凍結には否定的です。凍結卵子を使って体外受精しても、「妊娠・出産する確率は1%あるかないか」だとおっしゃっていました。

――本には、黒田先生が考案した「人工卵管法」という、新しい体外受精法が紹介されていますが、どんな技術なんですか?

草薙:黒田先生のご説明では、人工卵管法とは卵管型の細い流路を作って、そこにハイグレードな精子をきちんと選んで、何匹か入れて、自然に泳がせて受精させる方法です。

 顕微授精のように、人間があいまいな基準で一匹の精子を選んで、卵子に針で注入するのと比べて、人工卵管法はリスクが低いということです。精子が自力で競争して受精するわけですから。

――それは黒田先生のクリニックに行かないとできない?

草薙:現在はそうかもしれませんが、今後、広げていこうと考えておられるようです。黒田先生自身が、今の生殖医療に疑問をもっていらっしゃるので。

◆リスクもきちんと説明するクリニックを選ぼう

――将来、不妊治療をするなら、どうやってクリニック選びをしたらいいんでしょうか?

草薙:まずは、クリニックが発表している「妊娠率」にまどわされないこと。妊娠率は各夫婦の事情で決まるので、クリニックの妊娠率が高くても関係ありません。

 そしてリスクも含めてきちんと説明してくれるかどうか。「卵子凍結がいいですよ」、「顕微授精がいいですよ」などと言われたら、きちんとリスクも聞いてみてください。

 やみくもに「生殖医療っていいですよ、安全ですよ、みんなやってますから」と、魔法のように言うクリニックが多いのです。そういったクリニックの場合は、色々と質問をして確かめてみることが大事だと思います。

――本当に難しいですね。では、子どもが欲しかったら「いずれ不妊治療すればいいや」って思わないで、若いうちに自力で作ろうとしたほうがいいんでしょうか。

草薙:それは各自の選択ですよね。リスクのある生殖医療を使ってでも子どもが欲しいかどうかをまず考えること。知識がないと選択ができませんから、みなさんにはきちんとした知識を身につけて欲しいのです。

=========================

 正直、私も将来的に子どもが欲しくなったとき、自然に授からなければ、安易に不妊治療に頼っていたかもしれません。今回の話を伺って、本当に知識不足、情報不足だったなと恐ろしくなりました。

 命は一度誕生してしまえば後戻りができません。草薙さんと同じく、一人でも多くの女性が正しい知識を得られるようになって欲しいと思いました。

(※1)「第15回出生動向基本調査」国立社会保障・人口問題研究所、2015年

(※2)AMH=卵胞の周りの細胞から分泌される「抗ミュラー管ホルモン」の血中濃度を測ることで、卵巣に残っている卵子数を推測する

【草薙厚子さん】

ジャーナリスト、ノンフィクション作家。元法務省東京少年鑑別所法務教官。著書に『少年A矯正2500日全記録』『子どもが壊れる家』『本当は怖い不妊治療』などがある。

―本当は怖い不妊治療 vol.3―

<TEXT/庄司ライカ、女子SPA!編集部>

女子SPA!

最終更新:7/10(月) 8:50
女子SPA!