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名古屋人の体の一部はモーニングでできている

7/11(火) 18:00配信

BEST TIMES

カフェでコーヒーを頼むと、ゆで卵にトースト、サラダがついてくるのが名古屋のモーニングの常識。清水義範著『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)で、喫茶店が名古屋人の交際でどれほど大切なのかが、紹介されている。

 ◆喫茶店は応接間代わりである

 名古屋は喫茶店の多いところだと思う。しかし、そう書くとちゃんと調べる人が出てきて、愛知県の喫茶店数は全国1位じゃありませんよ、とか、人口当たりの喫茶店数も1位じゃありません、などと言うのだ。私は名古屋について書くことが多いから、何度もそういう体験をしている。

 だが、名古屋の喫茶店について語る時は、次のような特徴を忘れてはいけない。名古屋にも繁華街には喫茶店がたくさんあるが、そのほかに、なんでもない住宅街にポツポツと喫茶店があるのが面白いのだ。サラリーマンが一息いれるための喫茶店ではなく、そこいらの住民が憩う喫茶店である。

 名古屋で友人の家を訪ねたとする。すると友人は、まあ上がれ、とは言わずに、行きつけの喫茶店へ行こまい、と言うのだ。そして、その店までたった50メートルだったとしても、車に乗せて連れていってくれる。だから喫茶店には必ず3~4台分の駐車スペースがある。住宅街にある喫茶店はその辺りに住む人の応接間代わりなのだ。私も、友人と会えば喫茶店へ行ったものだ。

 マンガ週刊誌や普通の週刊誌がズラリと並んだ本棚がある。新聞も何紙かある。

◆コーヒーを注文すると、ピーナッツか柿の種が

 おもな話が終わると、そういう週刊誌を双方が読むことが多い。若い男女がデートで喫茶店へ来て、二人が違うマンガ雑誌を読みふけってろくに会話をしない、というのが珍しくないのだ。ヘンなデートである。

 コーヒーを注文すると、必ずコーヒーの横に小皿がおかれ、ピーナッツか、柿の種がついてくる。

 地下街の喫茶店にはないかもしれないが、住宅街の喫茶店には必ずあるサービスである。あの小皿のピーナッツに東京から来た人は仰天する。

 しかし、サービスといえば、名古屋の喫茶店はモーニングサービスが充実していることで有名だ。コーヒーを注文するとトーストがサービスでつく、というぐらいなら東京の喫茶店にだってあるのだが、名古屋だと、ゆで卵がつき、サンドイッチがつき、サラダがついたりするのだ。

 一時そういうモーニングサービスが店と店の競争のようになってしまい、こっちはアイスクリームもつく、こっちはバイキングでより取り見取り、なんてことになっていた。そしてついには、モーニングサービス24時間実施中、という、言葉の意味から逸脱したところまで出たのである。

小倉トーストの「小倉」のルーツや、天むすのルーツなども清水義範著『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)で紹介されている。

文/清水義範

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