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ルーニー、エバートン復帰というロマン。マンUから「心のクラブ」へ。13年ぶり帰郷への歓迎

7/11(火) 11:26配信

フットボールチャンネル

 現地時間9日、イングランド・プレミアリーグのエバートンはマンチェスター・ユナイテッドからウェイン・ルーニーを2年契約で獲得したと発表した。イングランド屈指の名手が13年ぶりに古巣復帰というニュースは英国でどのように受け止められているのか。現地では、この「帰郷」を歓迎する向きが圧倒的に多いようだ。(文:山中忍【イングランド】)

●見せかけではなかった「生涯ブルー」の心意気

 エバートンへの「帰郷」が決まり、ウェイン・ルーニーの株は上がった。もちろん、そこは過去1、2年にメディアで「衰えが著しい」とまで言われた31歳。7月9日に発表されたマンチェスター・ユナイテッドからの移籍にシニカルな見方がなかったわけではない。

 15億円前後と思われた移籍金に固執しなかったユナイテッドの姿勢は、在籍13年のルーニーに対する敬意というよりも、エバートンからのロメル・ルカク引き抜きと、週に5000万円相当を稼ぐ高給取りの処分に対する意欲の表れとも考えられた。

 とはいえ、巷ではルーニーがエバートン復帰で体現した「浪漫」を歓迎する向きが圧倒的に多い。2004年からタイトル獲得を求めてユナイテッドの赤に染まりはしたが、16歳のプロデビュー当時にアンダーシャツに書いて示した「生涯ブルー」の心意気は見せかけではなかったのだ。

 エバートン公式サイトから国内各紙まで、移籍速報の見出しには「ホーム(故郷)」の文字。テレビのニュースでも「いい話」として繰り返し伝えられた。

 サッカーの母国で「21世紀国産最高」と評されるルーニーには、中国やアメリカで破格の年俸を維持する選択肢もあった。「稼げるクラブ」への移籍が濃厚と報じられてさえいた。だが本人は、年俸半減を覚悟で「心のクラブ」との2年契約を選んだ。

●大歓迎が予想されるいっぽうで…新戦力としての現実の厳しさ

 契約翌日の『サン』紙スポーツ1面には、エバートンの寝巻きを着たルーニーの合成写真。国内随一の強豪へと去った後も「エバートンのパジャマを着て寝ていた」という告白に真実味があるのは、少年時代のヒーローとして、90年代に3年ほどエバートンでプレーしたアンデシュ・リンパルを挙げたことのあるルーニーならでは。

 ルーニーならば、CL優勝を含む主要タイトル11冠のユナイテッドからの出戻りに際し、「エバートンでタイトルを獲れたらキャリアの頂点になる」とした発言も本心と思える。

 ユナイテッド入り当初、裏切り者とみなしてブーイングを浴びせたエバートンのファンも、再び青いユニフォームを着るユース出身の「同志」を目にすれば、すぐに冷めた心が温まるだろう。

 ホームにストークを迎える8月12日の来季プレミアリーグ開幕戦で受ける歓迎は、ダンカン・ファーガソン(現コーチ)の功労試合で1日だけエバートン復帰を果たし、メディアで「予想以上」と伝えられた2年前のレベルをはるかに凌ぐこと請け合いだ。

 もっとも、国内の反応は新戦力としての現実の厳しさに関しても概ね一致している。ユナイテッドの歴代最高得点者が昨季7位に移籍となれば定位置が保証されていても良さそうなものだが、そのユナイテッドをルーニーは控え選手として後にした。

 昨季の先発出場は全試合数の4割程度。ベンチが多かった10番は、8番や6番的な中盤へのコンバートが進むわけでもなく、前線で9.5番的に存在感を発揮したわけでもない。

●ロマンを感じさせる「エバートンのルーニー」

 やはり10番を背負うエバートンでも、先発レギュラーとしてのルーニーを想像することは難しい。ロナルド・クーマン監督が、就任1年目に試した1トップ、2トップ、3トップのいずれを採用するにしても、メインストライカーとして昨季リーグ戦25得点を上げたルカクの穴埋めは荷が重い。

 シュートの威力と精度に定評のあるルーニーだが、CFとしては5年前を最後に実績も実働も不足。新ターゲットマン候補として、オリビエ・ジルー(アーセナル)らの名前が挙がってもいる。

 サポート役にしても、アウトサイドもこなすサンドロ・ラミレスがマラガから加わり、トップ下には自家製の逸材ロス・バークリー。クラブは伸び悩みに痺れを切らせつつあるが、新プレーメイカーとしてギルフィ・シグルドソン(スウォンジー)の獲得も噂される。

「ナンバー10」は、6月にアヤックスから購入した新MFデイヴィ・クラーセンがこなせるポジションでもある。主力の世代交代も進めている指揮官には、昨季に1軍定着を果たしたトム・デービスや、今夏のU-20W杯でイングランド優勝に貢献したアデモア・ルックマンらを使って育てる意識もあるに違いない。

 そのクーマンは、必要以上に後方からの繋ぎやボール支配には拘らず、攻守のバランスを求める采配からも窺える現実的感覚を持つ指揮官だ。

 ルーニーの年齢を「まだ31歳」と表現する一方で「優勝経験」を強調しているコメントからしても、若手の多い集団を率いてトップ4争い参戦を狙うため、「万能な勝者」としてのルーニーの力を相手や戦況に応じて臨機応変に生かす心づもりなのかもしれない。

 生かす頻度は当人の頑張り次第だが、この点も今回の「帰郷」でベテランが株を上げた理由の1つだ。最後に異国での「もう一稼ぎ」を選ばなかったルーニーは、古巣での「もう一花」を望む以前に「もう1チャレンジ」を求めた。

 若き「イングランドの至宝」として夢を託されてから15年、母国民は再びロマンを感じさせる「エバートンのルーニー」の活躍を今一度、クラブ間の垣根を越えて願っている。

(文:山中忍【イングランド】)

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