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南極に「地球上で最も急速に後退している氷河」

7/11(火) 11:37配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

 広大な氷原を上空から見下ろすと、表面には大きな亀裂が無数に走っている。先端部にできた割れ目は幅が500メートル近い。白い大地がゆっくりと崩壊していく様子を目にしているかのようだ。

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 ここは南極のアムンゼン海に面したパインアイランド棚氷。2015年から2016年にかけて、この棚氷から面積580平方キロの氷山が分離し、海に流れ出た。この海域の水温は過去数十年に0.5℃余り上昇し、氷が解けて崩落する速さは4倍になった。南極の西側を覆ったドーム状の巨大な氷「西南極氷床」は、この一帯の氷河を通じて少しずつ海へと運ばれている。

氷床を支えるダムが決壊しかけている

 西南極氷床は、厚さは最高で3000メートルを超え、最も深い地点は海面下1500メートル以上にもなる。氷が海面下にも分布しているため、海水温上昇の影響を受けやすい。棚氷が崩壊し、支えを失った氷河の流れが加速して、西南極の氷がすべて海に流出すれば、世界の海水面は平均3.3メートル上昇し、世界各地で沿岸部が水没することになる。

 氷床が覆った盆地の周縁部には、山や尾根のような地形が発達している。そうした地形を支えにして海に張り出した棚氷は、氷床の流動をせき止めるダムのような役割を一手に担う。だが、そのダムがいま決壊しかけている。

 アムンゼン海では、全域で棚氷が脆弱になり、背後の氷河が後退しているのだ。パインアイランド棚氷は大半が厚さ400メートルほどだが、1994~2012年の間に平均45メートルも薄くなった。それ以上に気になるのは隣のスウェイツ氷河で、この氷河が崩壊すれば、西南極氷床の大半が不安定な状態に陥るとみられている。

「これらは地球上で最も急速に後退している氷河です」と、NASA(米航空宇宙局)のジェット推進研究所の雪氷学者エリック・リノーは話す。リノーによると、西南極氷床の崩壊はもはや避けられないという。問題は崩壊がいつ起きるか(500年後か100年以内か)、それに備える時間が人類に残されているかどうかだ。

 「正確な予測は必要ですが、それに時間をかけ過ぎてはいけません」

※ナショナル ジオグラフィック7月号特集「南極 崩壊する氷の大陸」では、南極の氷河や棚氷の融解について最新科学の動向を図解とともにレポートします。

Douglas Fox/National Geographic

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