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筆者も恐怖体験!「中国で日本のスパイが捕まった」説は本当か

7/11(火) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 先月報道された「CIAのスパイが中国国内で12人以上殺害されていた」というニュースは記憶に新しいが、以前にも中国は日本や他国のスパイを拘束したと何度か発表している。

 2015年には中国外交部の洪磊(ホン・レイ)報道官が記者会見で、「中国の関係当局は法に基づき、スパイ活動に従事した容疑で日本人2人を逮捕した」、「日本側には状況をすでに通知している」などと発表したこともあった。

 このようなニュースに対してネット上では「日本人を無意味に逮捕するための方便、嫌がらせだ」「日中関係を牽制するためのブラフ」などといった意見が散見されるが、一般人には馴染みのない映画の世界のようなスパイ騒動の真偽を考えるべく、この記事では筆者の滞在している中国国内でのいくつかの経験を共有し、皆さんの考察の一助としていただければと思う。

 まず、中国に在住している筆者に、スパイという存在を強く意識させたのは中朝国境地帯を旅していたときの一件であった。

 国境地帯の中でも延辺朝鮮族自治州はその立地と性質の特殊さゆえに複雑な様相を呈している。延辺は中国国籍の朝鮮族の多く居住する地域で、一定の自治管理権が地方政府に付与されているが、朝鮮語が広範に使用されることもあって、韓国系の資本がここで多く市場展開している。

 しかしながらこの地域は朝鮮半島で二つの国家が成立して以来思想対立の代理戦争の場となっていたことがある。今は落ち着きもしたが、20~30年前には両国から裏のルートで拳銃や資金が提供され、現地のマフィアなども交えて銃撃戦が起こったりしていたそうだ(これは現地で知り合った朝鮮族のヤクザの方から聞いた武勇伝的なお話なので多少の誇張はあるかもしれない)。

 そういった話を思い起こしながら、私はアメリカ人の友人と共に鴨緑江国境付近の地域をローカルバス、汽車などを乗り継ぎ旅をしていた。名前は伏せるが延辺の首都・延吉を離れた田舎町を市内の舗装もまばらでかろうじて車の存在は確認できるといった発展具合だ。もちろん対岸は北朝鮮が見渡せる国境の街であるがこのくたびれた町にもタクシーはあり、100元(1600円程度)で郊外の見所を2時間ほどかけて回ってくれるというのでお願いした。

◆「日本人のスパイが捕まって拷問された」

 途中でところどころライフルを装備した中国の兵隊に通りがかる車のいくつかが検閲を受けている場面に遭遇したが、検閲されそうな地域に差し掛かるとすかさずタクシーの運転手から「アメリカ人の顔を布で隠せ」との指示があり、すべてをやり過ごすことができた。別に隠すことは何もないのだが。

 タクシー運転手曰く「白人のような目立つ容姿だと必ず検閲されるので隠しておいたほうが楽だ」とのこと。

 私はアメリカ人の通訳で雇われている朝鮮族の付き人かなにかだと勘違いされていたので敢えて日本人だと名乗ることもしなかった。しかしながら彼は「アメリカ人や韓国人よりも面倒なのは日本人である、以前この町で日本人のスパイが逮捕されたので検閲がかなり厳しくなっている」と続けた。地元の人間たちは皆噂しているらしく、韓国人やアメリカ人は軍に検閲されても20~30分程度で済むそうだが、日本人だった場合3~4時間は開放されずみっちり調べ上げられるらしい。

 前述したとおり、たいへん複雑な情勢の地域なので中朝国境地帯でこの捕まった日本人というのがどんな目的でいったい何をしていたのか知る術はないが、諜報を担当する機関の人間であった可能性は高い。

 というのも、以前日本で政府関係者の方とこんな会話をしたからだ。

「君の中国の土産話は面白いなあ、もっと教えてくれ」と仰るので、ご自身で旅行されたほうがきっと楽しいですよと勧めたのだが「私は所属している部署の関係で中国に個人的に渡航することはまずない。」とこぼした。

 もちろん彼の所属部署を詮索するようなことはしなかった。断片的な情報で判断するのは早計かもしれないが、私はこの延辺であった一件と彼の話が途端にすべて辻褄があった気がした。

 スパイ行為を行ったとされる邦人は、実は本当に派遣されたサラリーマンだったのかもしれないし、確定的なことは言えないが、参考になれば幸いである。

<取材・文/なかはた じゅん(TwitterID:@cider1d1l>

北京在住の大学生。日中朝英の4言語を操り、現在はロシア語の勉強中。中国にいる北朝鮮留学生や旧ソ連圏の人々と日々交流しながら、北朝鮮情勢の一端を考察している。

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