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SB国際会議2017デトロイト ハイライト(6)

7/12(水) 22:52配信

オルタナ

アメリカで最もサステナブルな市を目指す、デトロイト

SB国際会議2017の最終日、デトロイト市のサステナビリティ責任者のジョエル・ヒアーズ氏は「アメリカで最もサステナブルな市になれるよう取り組んで行くことにわくわくしている」と話した。(編集・翻訳=小松 遥香:オルタナ編集部/Sustainable Brands Japan)

2013年に財政破綻したデトロイトは、サステナビリティの取り組みを次々と進めている。この街では先月、50年ぶりに路面電車「QLine」が走り始め、自転車シェアリングサービス「MOGO」も誕生したばかりだ。市内には、世界最長のLED街灯を使った通りがある。

今後さらに色々な取り組みが始まるだろう。デトロイト市は6カ月以内に、より詳細なサステナビリティ実施計画を立てていく計画だ。発明家精神を持つデトロイト市民や企業は、この街にすでにあるものを活用して新しいことをしようと前向きだ。ヒアーズ氏は最後に、「出席者の方々にデトロイト市のパートナーになって欲しいとお伝えするつもりはない。それよりも、サステナビリティの名のもとに一致団結していきたい」と力を込めた。

地元再建のために立ち上がる企業――デトロイトの「グッド・ライフ」

「どこでも良いではなく、ここだと思う場所でスタートを切ることが大切だ」とデトロイト・エクスペリエンス・ファクトリー(DXF)のジャネット・ピアース氏は話し始めた。同氏は創造力が豊かで、色々なアイデアを持っている人物だ。

DFXは、観光客や地元の人々を対象に、デトロイトの良さを満喫できる地元密着型のツアーを企画する会社だ。2006年にNGOとして設立され、現在では、デトロイト再建プロジェクトの重要な役割を担っている。

今回のセッションには、デトロイトの「グッド・ライフ」のために取り組み、成果を上げている企業や団体が登壇した。

ここでカギとなったのは、「ニーズがどこにあるかを見極める」ということだった。例えば、入居者のいない素晴らしい設計の建物を犯罪者の溜まり場にならないように有効活用すること。それから、貧困女性の自立を支援すること。自然災害で家に住めなくなった人やホームレスの人たちに、凍えるような冬に暖を取れる場所を提供することなどだ。

U- ホール

設備レンタル会社U-ホール(アリゾナ州フェニックス)のビル・レインズ氏は、同社が費用負担し、デトロイト中心部にある古くなったナビスコビルを2012年~13年に再開発した事業について話した。

1920年にシカゴ派スタイルで建築されたビルは数年間、誰にも使われておらず、器物損壊が起きるなど犯罪者の溜まり場になっていた。しかし、現在では、そんな物騒な場所も生まれ変わり、ビルの半分はショールームやオフィス、倉庫などとして活用されている。

新たなビルを建てるのではなく、古いビルを再活用することは、温室効果ガスの排出防止にもなるし、瓦礫の廃棄もなく、コンクリートや鉄を新たに利用することもしなくて良い。「U-ホールは長年、使われていない商業ビルや工場などを再開発し、生まれ変わらせてきた。そうすることで雇用も創出でき、既存のインフラを利用した形で開発を行うこともできる。さらに自然資源や土地を再活用できる」とレインズ氏は語った。

同社はこの事業に必要となる買収費や復旧費用を負担し、自治体やNGOと協働してこの事業を実現させた。U-ホールがこの事業に着手したきっかけは、同社のトレーラーを1945年から製造し、同社の事業を支えてきた自動車産業都市デトロイトとそこに暮らす人々のために一緒に何かしたいという考えからだった。

レベル・ネル

デトロイト発のアクセサリーショップのレベル・ネルは、ホームレスの女性を雇用し、ビジネスや法律の知識なども教える女性の自立支援を目指す企業だ。この会社の共同設立者であるエイミー・ピーターソン氏は弁護士で、地元球団デトロイト・タイガースの顧問弁護士も無料で引き受けている人物だ。

同氏は2007年にデトロイトに移り住み、一目で街が気に入り、財政破綻したデトロイトの再建のために何かしたいという強い気持ちがある。ピーターソン氏は、デトロイト最大のシェルター(避難所)の近くで暮らしたことで、シェルターで暮らす社会的弱者の女性たちとの交流を深めていく。その中で、シェルターで暮らす女性の自立支援をしたいと考えるようになったという。

レベル・ネルがデザインし販売する商品は、何かをリサイクルしてつくるアクセサリーだ。例えば、自動車産業が衰退した後、パーツを運ぶ際に使われていた線路のまわりの建物はグラフィティ・アートで埋め尽くされた。同ブランドは、時間が経って壁から剥がれ落ちたものを利用して、アクセサリーをつくっている。その他にも、捨てられていたものの中でも、磨けば美しくなる材料を選び、アクセサリーを製作している。

こうした事業に携わる人たちに「なぜデトロイトなのか」と聞くと、「地元だから。ここで生まれ育ったから」と答える人が多い。中には、地元の大企業は財政的支援や物質的支援はできるが、小さい事業に創造力ある知恵を教えてくれるわけではないからだと話す人もいる。他には、デトロイトの街が持つ絆がそうさせると語る人もいる。色々な理由があるだろうが、DXFのピアース氏の「デトロイトの問題は世界的に見ると大きな問題だが、ここにいて自分の問題だと捉えると、自分でも何かできるのではないかと思える問題だからだ」という言葉が的を射ているだろう。

「サステナブル・ブランド ジャパン」より転載

最終更新:7/12(水) 22:52
オルタナ

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