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坂本勇人を育てた名将が、フルスイングで茨城の盟主・常総学院に挑む

7/12(水) 8:00配信

webスポルティーバ

 金沢成奉(かなざわ・せいほう)監督はどこか浮かない表情でシートノックを終えると、選手を集め、怒号を響かせた。

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「勝負に”もう1回”はないんじゃ。関東(大会)で負けてから、ずっとこうやんけ。もうやめや!」

 だが、この程度で怯(ひる)む選手たちではない。主将の若松祐斗が「やらせてください」と金沢監督の前に迫る。「近づいてくんな!」と金沢監督が押し返しても、若松は動かない。すると、金沢監督は熱を込め、核心を語った。

「エラーすんなとか言うてんちゃう。ボールにしがみついて野球をやれ。野生の獣が獲物を一発で仕留める覚悟でやれ。捕らえられないと死んでしまう、迷うてたら獲物は逃げるんや。この1点を絶対抑えてやる。相手から1アウトもらうのではなく、もぎ取ろうとしてやれ!」

 選手たちは「はい!」と声を揃え、血相を変えてグラウンドに散ると、数分前とはまったく違う雰囲気のノックが始まった。

 金沢監督は、青森の光星学院(現・八戸学院光星)の監督として甲子園に8回出場を果たし、巨人の坂本勇人ら多くの好選手を育て上げた高校野球界屈指の名将だ。2012年から茨城の明秀学園日立の監督に就任し、同校初の甲子園出場を目指して日々、指導に情熱を注いでいる。

 センバツ出場がかかった秋の関東大会には2年連続して出場し、夏は一昨年がベスト4、昨年は準優勝と、悲願の甲子園まであと一歩のところまで迫っている。

 今年のチームは、「ここ最近でいちばん力のない世代。狭間だと思っていました」と、金沢監督は話す。ところが、昨年秋、今年の春と茨城大会を制して関東大会出場を果たし、春の県大会2回戦では、金沢監督就任以降、一度も勝ったことがなかった常総学院に7対0で7回コールド勝ちを収めた。

「各年代でいろんなカラーやレベルの違いはあるけど、どの年でもトップを狙う雰囲気、練習内容は仕上がってきました。今年は真面目な子が多い分、その努力が秋、春に実ったという形です」

 金沢監督はそう就任6年目の手応えを語る。一方で「断トツの優勝候補なんて言われたりしますが、全然そんなことはない。(サザンオールスターズの)『夏をあきらめて』って曲を歌おうかなと思っているくらいです」と、冗談まじりに話す。

「練習量と技術指導でこれくらいのレベルまでには来ることができます。でも、今日のノックを見てもらってもわかるように、甲子園への壁を破るための意識だったり、勝負の本質の部分がまだありません」

 関東大会では、秋は健大高崎(群馬)に1対8、春は作新学院(栃木)に2対17と、いずれも甲子園常連校に完敗を喫した。甲子園に近づいてはいるが、目の前に立ちはだかる壁を越えられない現実もある。中学時代から勝利の味を知り、甲子園常連校に集まった選手たちとは見えない意識の差があると考えている。

 この部分を練習で追求できなければ、試合でその差を埋めることなど到底できない。だからこそ、冒頭で紹介した一場面のように、ノックひとつにしてもその部分を徹底して追求している。

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