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【イタリア長文分析WEBメディアの徹底考察コラム】大躍進アタランタの秘密。ガスペリーニの特異な3バック戦術

7/12(水) 22:53配信

footballista

ガスペリーニのプレー原則+アタランタの若手=大躍進

ナポリ、インテル、ローマといった強豪を次々と撃破し、セリエAでクラブ史上最高位となる4位フィニッシュを果たした16-17シーズンのアタランタ。イタリア国内随一の育成型クラブとして知られる彼らを快進撃へと導いたのが、ジェノアで一時代を築いたジャン・ピエロ・ガスペリーニだった。3バックの信奉者で人材発掘の達人でもある58歳が、若手集団に植えつけたユニークな戦術とは――。掲載するコンテンツはどれも長文ばかり、良質かつ深堀りされた分析で注目を集めるイタリアの新興WEBメディア『ウルティモ・ウオモ』の分析レポート(11月17日公開)を特別掲載。
※本稿内のデータはすべて16-17セリエA第12節終了時点

アタランタの典型的なパスマップ(16-17第9節インテル戦)


文 ファビオ・バルチェローナ
翻訳 片野道郎


 9月21日水曜日、アタランタはホームのベルガモにパレルモを迎えてセリエA第5節を戦った。開幕からの4試合が1勝3敗だった彼らにとっては、復調のきっかけとして申し分ない機会となることが期待されていた。しかし試合は予想よりもずっと拮抗した内容となり、終了直前にイリヤ・ネストロフスキがパレルモに勝利をもたらす決勝ゴールを決める(0-1)。ブルーと黒のシャツを着たホームチームは、スタンドからブーイングの口笛を浴びながらピッチを後にした。試合後、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督は深夜1時までスタジアムの中に残り、アタランタの経営陣が出て来たのはそのさらに45分後だった。

 “デア”(女神=アタランタの愛称)を率いる指揮官の運命はもはや尽きたかのように見えた。彼を救ったのはおそらく、試合がちょうどミッドウィーク開催だったというめぐり合わせだった。経営陣には次の試合までに後任を探すための時間がなかったのだ。ガスペリーニはカレンダーにも恵まれていた。第6節の相手は最下位のクロトーネ。しかも昇格組の彼らはスタジアム改修が開幕に間に合わず、ゲームは中立地のペスカーラで行われた。アタランタはこの一戦で前半に3得点を挙げて試合を決め(1-3)、それ以来止まることなく走り続けている。

 ガスペリーニのチームは、パレルモ戦後の7試合をナポリ(1-0)、インテル(2-1)からの勝利を含めて6勝1分というハイペースで駆け抜け、第12節終了時点で順位もラツィオと並ぶ4位タイまで急上昇した。次の相手は2位ローマ。ビッグマッチである(編注:2-1で勝利。翌節もボローニャを0-2で下して6連勝を達成した)。


ガスペリーニのアタランタについての基礎知識


 ガスペリーニはこれまでジェノバ以外の土地で成功を収めたことがない。最初の、かつ最もよく知られた経験は11-12シーズン、インテルでのそれだ。公式戦5試合で1分4敗という成績を残し、ノバーラ戦の敗北後に解任の憂き目に遭った。その翌季のパレルモでは、21試合目に他でもないアタランタに敗れ最下位に転落したことが、解任の引き金になった。

 ガスペリーニにとってベルガモが大きな挑戦だった理由もまたそこにある。ジェノバというコンフォートゾーンの外で、そしてエンリコ・プレツィオージ会長との愛憎相半ばする関係と毎年大幅にメンバーが入れ替わるチームを離れて、自らの真の価値を示す機会であることは明らかだった。

 委ねられたアタランタの顔ぶれは、昨シーズンと大きく変わってはいなかった。最も高価な新戦力はFWアルベルト・パロスキ。退団したマルコ・ボリエッロの穴を埋めるためスワンジーから600万ユーロで獲得された。この他、DFガブリエル・パレッタがレンタルを終えてミランに戻り、MFルカ・チガリーニはサンプドリアへ、昨シーズンの中盤を支えたマルテン・デ・ローンが1500万ユーロでミドルズブラに売却された。その一方では、セリエBへのレンタルからDFマッティア・カルダーラとMFフランク・ケシエ(ともにチェゼーナ)、FWアンドレア・ペターニャ(アスコリ)が復帰した。

 ガスペリーニは昨シーズンとの連続性を完全に断ち切り、自らのサッカー哲学にしたがってチームを再構築した。今シーズンのアタランタは、指揮官の深い確信を反映したセリエAで最もはっきりと識別できる特徴を持ったサッカーを見せている。3バックのシステム、とりわけ[3-4-3]を好んでいることをたびたび公言するガスペリーニだが、彼のサッカーを特徴づけているのはシステム以前にまずいくつかの明確なプレー原則である。


基準点は人


 アタランタの守備の局面を特徴づけているのは、マンツーマン・ディフェンスに近いプレー原則だ。守備のシステムは毎試合、相手の布陣と選手の特徴に合わせて最適化される。原則としてガスペリーニは、可能な限り早くボールを奪回するアグレッシブな守備をチームに要求しており、それゆえすでに敵陣の非常に高い位置からマンツーマンの原則が適用されている。前線からのプレッシャーが外された場合に備えて、後方のゾーンでは常に数的優位が保たれており、それが前線での極めてアグレッシブな姿勢を支え全体的なバランスを取る役割を果たしている。

 後方のゾーンで数的優位を保つということは、どこか別のゾーンでは数的不利を受け入れることを意味している。試合ごと、対戦相手ごとに、どのゾーンで相手に数的優位を許すか(実際にはゾーンというよりも「誰をマークしないか」)を研究し決めるのは監督の重要な仕事だ。

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最終更新:7/12(水) 22:54
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