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人間の脅迫観念を強烈に表す「モデルと鶏」 - Q.サカマキ Instagramフォトグラファーズ

7/12(水) 10:46配信

ニューズウィーク日本版

<ポートレートの中に古典的な要素とブラックユーモアを持ち込み、人間のオブセッションを探求する南米アルゼンチンの芸術家ロミナ・レッシア>

南米の偉大な芸術家には、コロンビアの小説家ガブリエル・ガルシア・マルケスをはじめ、魔術的リアリズムの匂いを解き放っている者が多い。アルゼンチンのブエノスアイレス郊外の小さな村で生まれ育った、ロミナ・レッシアもそんなタイプの芸術家だ。ポートレート写真の中に古典的な要素と皮肉やブラックユーモアを持ち込み、人間のオブセッション(取りつかれた脅迫観念)を探索している。

まだ36歳ながら、レッシアは世界各地の美術館やアートギャラリーで個展を開いている。小さいときからアートを学んでいたが、大学では経済学を専攻し、その後しばらくは多国籍企業で働いていた。余談だが、現代の優れた写真家やアーティストにはこの手のパターンが多い。

作品ごとにスタイルは異なるが、アナクロニズム(時代遅れ性)とジャクスタポジション(対立する2つの要素を並列すること。通常は別々に表すが、レッシアの場合、1つの写真の中でそれを行っている)は彼女が多用する大切な構成要素、あるいはテクニックだ。

例えば、「How would have been?」シリーズ。モデルはヴィクトリア朝のドレスで着飾っているが、そのシリーズの1枚にははっきりと歯の矯正器具(ブラスワイヤー)が見られる(下写真)。そこには古典と現代の対比、そして時空を超えて共通する脅迫観念がある。先述した人間のオブセッション、美へのオブセッションが強烈に表現されているのである。

スポーツ・ユニフォームをモデルに着せた「The Champions」シリーズも、ジャクスタポジションを使用したオブセッションへの探求だ。モデルにスポーツ・ユニフォームを着させているが、もちろんスポーツが焦点ではない。レッシアの言葉を借りれば、「栄光とか成功」で人を判断しがちな現代社会に対する問題提起である。

Romina Ressiaさん(@rominaressia)がシェアした投稿 - 2017 6月 5 11:34午前 PDT


【参考記事】どこか不可思議な、動物と少女のポートレート



Romina Ressiaさん(@rominaressia)がシェアした投稿 - 2016 5月 29 12:08午後 PDT


そうした判断基準、あるいは「栄光とか成功」そのものでさえ、本来はあやふやなものである。それを表現するためにレッシアは、美しく引き締まった肉体のモデルを撮影しながら、同時に煌びやかなダイヤのように見えるネックレスをつけた鶏も、その1枚1枚の作品の中に共存させているのである。所詮、我々人間の価値観なんてこんなもの、と言っているかのように。

ちなみに、この「The Champions」シリーズでも「How would have been?」シリーズでもそうだが、これらコンセプチュアルな作品を創る時はディテールをとても意識している、とレッシアは言う。ディテールにより、作品のレベルを高めることもできるし、逆に破壊することもできるからだ。

「God save the Queen」シリーズも面白い作品だ。人間社会に存在する不可思議で非論理的なオブセッションを探求しているのだろう。だろう、と書いたのは、このシリーズのコンセプトについては、見る側が勝手に判断してくれたらいい、とレッシアが答えたからだ。

いずれにせよ、エリザベス女王をある種パロディー化したと思われるこの作品シリーズは、人間社会の本質を突いているのかもしれない。権力とマネー、畏怖と憧れ、あるいは"親方日の丸"的感情、シンデレラ症候群、権威への反帰属性や反感、そうしたものが見え隠れする。そして、それらは融合し、ときに反発し、時代と共に移り変わっていく。

だが、レッシアが彼女の世界観で答えてくれた言葉を借りれば、それら全ては虚栄であり、消滅する運命にあるのかもしれない。結局のところ個人の価値や生きがいなんて、社会の中では簡単に測れないのである。

【参考記事】北欧の廃墟でフィクションのポートレートを撮る意味

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Romina Ressia @rominaressia

Romina Ressiaさん(@rominaressia)がシェアした投稿 - 2017 4月 12 7:19午前 PDT



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