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「見る」より「やる」! これが、きものの生きる道 「世界遺産」では生き残れない

7/13(木) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 呉服大手やまと会長の矢嶋孝敏氏は、「わかりにくさ」「着にくさ」「買いにくさ」が原因となり、きものから消費者が離れていったと指摘します。結果、客単価を高く設定できる「フォーマル一辺倒」となり、きものは変化を失います。経済学者の伊藤元重氏と矢嶋氏による対談をまとめた「きもの文化と日本」(日経プレミアシリーズ)から、前回掲載「昔の花火大会、ゆかた姿はなかった 『制服化』のなぜ」に引き続き、 きもの文化が生き残るための道についての討論をご紹介します。

伊藤

 お話をうかがってると、いまもっとも求められているのは変革ですね。

矢嶋

 変革です。きもの業界の人は「伝統」という言葉を安易に使いすぎてると思う。そもそも伝統って、変革のなかで生き残ったもののことだからね。

伊藤

 最初から伝統を作る人なんて存在しない。

矢嶋

 そうそう。市松(いちまつ)模様ってあるでしょう。佐野川市松って18世紀なかばの歌舞伎役者がいて、彼が着た衣装からこの名がついた。だけど、この模様を考案した人も、伝統を作ろうなんて考えなかった。格好いいデザインを生み出したら、それが最先端の流行になり、結果的に伝統として生き残っただけの話。

伊藤

 しかも、ルイ・ヴィトンが真似してますからね。

矢嶋

 19世紀末の日本ブームのときに市松模様を発見したんじゃないかな。いまやルイ・ヴィトンといえばダミエ柄で、世界的な伝統になっちゃった。
■「見る文化」と「やる文化」

伊藤

 きものに変革が見られなくなったのは、それだけ伝統のマーケットが大きかったということなんでしょうね。

矢嶋

 大きかった。「伝統なるもの」だけで食っていけるほど大きかった。だけど、変革がまったくないがために、きものは特殊文化になっちゃった。生きた大衆文化じゃなくなった。きものに限らず、お茶やお花もそうだけど、これ以上、特殊化していったら、どれも残らないと思います。

伊藤

 どうして大衆文化でないと生き残れないんですか?

矢嶋

 ただ見るものになって、自分が参加しなくなるからね。アメリカンフットボールが日本で普及しないのは、あれは見るものであって、やるものじゃないからでしょう。自分でやらないから、裾野が広がっていかないわけ。それに比べて水泳は、オリンピックで見る一方、自分もプールに通う。ピンポンだってそう。

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最終更新:7/13(木) 7:47
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