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セリエAプロ契約の快挙が国連決議違反? 「北朝鮮の18歳」ハン・クァンソンの複雑な事情

7/13(木) 20:40配信

footballista

4月13日、カリアリは育成強化選手としてトップチームに帯同していた北朝鮮U-17代表ハン・クァンソン(18)と、2022年までのプロ契約を結んだと発表した。契約の発効は7月1日、つまり17-18シーズンから。北朝鮮国籍のプレーヤーがヨーロッパの5大リーグでプレーするのは、これが史上初めてである。


文 片野道郎


わずか2カ月のシンデレラストーリー


 ハンはすでに4月2日のセリエA第30節パレルモ戦でセリエAにデビューしており、続く第31節トリノ戦でも81分に途中出場するとアディショナルタイムにヘディングで初ゴールを挙げるという活躍を見せて大きな話題を集めていた。カリアリはさっそくカルチョの世界に突然現れたこの新星を、ぬかりなく自らの懐に抱え込んだというわけだ。

 ちなみにカリアリは、2014年にトンマーゾ・ジュリーニ会長(サルデーニャ島に本拠を置く世界的なフッ素採掘・加工会社のオーナー)がクラブを買収して以降、キエーボ、パルマ、シエナ、レッチェなどで監督を務めたマリオ・ベレッタを育成部門責任者に招へいして育成に力を入れており、その取り組みが注目されているクラブだ。
 
 驚かされるのは、ハンがカリアリの一員となったのはデビューのほんの1カ月前に過ぎなかったということ。代理人のジョバンニ・ステンペリーニの売り込みを受け、1月末からテスト生としてハンを受け入れていたカリアリは、すぐにそのタレントを認めて獲得を決めると、北朝鮮サッカー協会との間で移籍手続きを交わして、ジョバネ・ディ・セリエ(19歳以下の育成強化選手。アマチュア扱い)として選手登録した。これが3月10日のことだった。

 ハンは、ちょうど同じ時期に開催されたU-19年代の重要な国際トーナメント「ビアレッジョ・カップ」でデビューすると、初戦から派手なバイシクルシュートでネットを揺らす活躍を見せる。そして3月19日の第29節ラツィオ戦からはトップチームに招集され、ベンチ入り2試合目のパレルモ戦でセリエAデビュー、続くトリノ戦でセリエA初ゴールを挙げ、その勢いでプロ契約まで勝ち取った。1月末にテスト生としてプリマベーラに参加してからわずか2カ月強で、一気に階段を駆け上がったのだから、これはもう「シンデレラストーリー」と呼んでもいいくらいのスピードである。しかしもちろん、これは偶然と幸運だけで出せる結果ではない。つまりこのハン・クァンソンはそれだけ傑出した才能の持ち主であり、また戦術やメンタルといった側面においてもセリエAでプレーするだけの準備ができていたということだ。

 事実ハンは、この年代では北朝鮮でも指折りのタレントと評価されている。2014年のU-16アジア選手権ではキャプテンとして背番号9を背負い、6試合で4ゴールを決めて優勝に貢献。翌年のU-17W杯でもこの大会で準優勝したマリにラウンド16で敗れるまで4試合に出場して1ゴールを挙げた。この大会後には英『ガーディアン』紙の「世界で最も才能あるU-18フットボーラー50人」のリストに選ばれている。爆発的なスピードと左右両足を自在に使いこなすテクニックを備え、180cmに満たない身長にもかかわらず傑出したジャンプ力を生かして空中戦でも強さを発揮する現代的なセンターフォワード――というのが、様々なところで紹介されているプロフィールだ。

 初ゴールを献上したトリノのアシスタントコーチのレナート・バルディは、事前のスカウティングと試合での印象を合わせて、次のように語ってくれた。

 「非常にスピードがあり、技術も高い。驚かされるのは、ポジショニングやプレー選択が的確なこと。タイミング良くマークを外してパスを引き出す動き、ボールを持ち過ぎることなくシンプルにはたいて動き直す状況判断など、18歳とは思えないほどインテリジェントなプレーを見せる。ゴールの場面でも、CBとSBのゾーンの切れ目にポジションを取って、2人のどちらが行くか迷った隙を突いてフリーでヘディングを決めた」

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最終更新:7/25(火) 11:12
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