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緊張高まるイラン・サウジ関係、鍵握るトランプ政権

7/13(木) 12:13配信

Wedge

 イラン系米国人で、イラン問題に詳しいジャーナリストのフーマン・マジドが、6月7日付けニューヨーク・タイムズ紙に論説を寄稿し、6月7日のテヘランでのテロ攻撃は、イランとサウジの勢力争いやテロとの戦いに大きな影響を与えるものであり、トランプ政権はイラン非難一辺倒ではなく、イランに対する政策を再考すべきである、と述べています。論説の要旨は以下の通りです。

 6月7日のテヘランでのテロ攻撃は、イランとサウジの勢力争い、テロとの戦いに大きな影響を与えるものである。

 今回のテロ攻撃の対象となった2か所は、イランの敵が破壊したいと思っているのが何かを示している。

 一つの対象は「イマーム・ホメイニ廟」であったが、ホメイニの政治イデオロギーは、イスラム国家はイスラム法学者によって統治されるべしとする「法学者の統治」で、これはスンニ派の思想の中核をなすサラフィー主義(シャリア(イスラム法)の厳格な施行を求める)と相いれない。ISの思想的根拠はサラフィー主義であり、「法学者の統治」の考えは受け入れられないとする。

 もう一つの対象は国会議事堂であり、これはイラン式民主主義のシンボルであって、イラン式民主主義はやはりISとして受け入れられない。

 これまでイランは国内のテロ対策には万全を期してきたと言われてきたが、今回のテロ攻撃は、イランのテロ対策に思いがけない弱点があったことを示すものである。

 今回のテロ事件をきっかけに、イランとサウジの関係が軍事対決になりかねない恐れがある。トランプはイラン批判の発言をしたが、イランはイラクとシリアでISと戦ってきており、今回はISのテロの犠牲となった。トランプ政権はイランに対する政策を再考すべきである。

出典:Hooman Majd,‘What Happens in Tehran Doesn’t Stay in Tehran’(New York Times, June 7, 2017)

 今回のイランでのテロの影響で最も懸念されるのが、イラン=サウジ関係の一層の悪化です。

 イラン情報相は、5人の実行犯はワッハーブの思想の影響を受けた、と述べ、間接的ながらサウジを批判しています。報道によれば、イランの革命防衛隊は声明で、「テロがトランプのサウジ訪問の1週間後に起きたことは意味がある。ISが犯行声明を出したことは、サウジがテロに関与していることを示唆している」と述べたとのことです。

 他方、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(国防大臣も兼任)は、イランは極端な思想の上に成り立っている体制であり、イスラム世界を支配しようとしている、と強く批判しています。

 そのうえトランプ大統領が5月の中東訪問中、繰り返しイランを非難しており、サウジが意を強くした恐れがあります。

 今回のテロ事件をきっかけとして、イラン=サウジ関係の緊張が一層高まる恐れがある。しかし、一部で懸念されているように、この緊張が直接の軍事衝突に発展する可能性はまず考えられません。イラン政府は「テロには厳しく反撃する」と述べており、イラン=サウジ関係で何かが起こるとすればまず手を出すのはイランでしょうが、地上軍がサウジに侵攻することはありえません。あるとすれば、イランによるサウジ空爆ですが、イランにとって有効なサウジ空爆ができるとは考えられません。

 やはり、可能性が高いのは、現在のイエメン、シリアなどにおける代理戦争の拡大強化でしょう。

 鍵を握るのはトランプ政権です。トランプ政権は、イランをテロ支援国家として非難していますが、米国がイランをテロ支援国家に指定したのは1984年1月で、テヘランの米大使館占拠事件が影響したものと見られます。その後指定が続いているのは、米国がテロ組織に指定したハマスとヒズボラをイランが支援しているためと考えられます。その上、米国のイラン非難にはイランと対決するイスラエル、サウジの影響力が大きいと思われます。

 しかし、論説の筆者がイラン系米国人であることを割り引いて考えても、米国は、イランを一方的に非難することが中東情勢を一層不安定化することを十分認識すべきです。また、トランプはIS殲滅を公約に掲げていますが、ISとの戦いではイランは同盟国であることを自覚すべきです。

 トランプのイラン非難は、他の多くの外交案件同様、十分その意味を考慮した上でなされているとは思えません。「米国第一主義」と言いますが、何が米国の利益になるかを十分吟味した上で、イラン政策を検討、実施すべきです。

岡崎研究所

最終更新:7/13(木) 12:13
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