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スポーツ心理学者が解明する「アスリートの暴言」問題と、その防止法

7/13(木) 17:20配信

webスポルティーバ

 サッカーJ1の試合中に起きた「くさい」発言をめぐるトラブルは、まだ記憶に新しい。アスリートは自らの言動で心理戦を仕掛ける場面もあるが、「不適切発言」とされた今回の騒動は心理戦であったのか、それとも己の未熟さを露呈した結果であったのか。そもそも、アスリートが暴言を発してしまう背景には何があるのか。エディー・ジョーンズ氏がヘッドコーチを務めた、前ラグビー日本代表のメンタルコーチで、園田学園女子大学教授の荒木香織氏に、問題の根深さをスポーツ心理学に基づいて語ってもらった。

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 エリートの選手は幼少の頃から指導を受けていますが、その頃からコーチが最低限、指導しないといけない部分があります。「勝てばいい」「チャンスになればいい」という指導でいいのかと言えば違う。なぜか一部の選手はモラルに対する教育を受けないまま、技術を伸ばそうというコーチングだけを受けてきてしまった。そのため、こういった(「くさい」発言のような)言動が出てしまったのだと思います。

 子供の時に、なぜそういう行動が不適切なのかを理解して、自分で思考や感情をコントロールする。成長とともに、問題となる言動をなくしていくという作業を、コーチングを受けるなかですべきでしょう。競技によっては試合でペナルティを課せられる場面もありますから、学んでいっているはずです。

 問題となる発言が心理戦なのであれば、スポーツをスポーツとして認めていくのは難しい。ファンの方はそういう目で見るかもしれませんが、心理戦でも何でもありません。

 特に最近になって選手の暴言・暴行が顕著というわけではなく、マイクで声が拾えたり、視聴者がより近くで言動を観察できる環境ができてきたので目立つのでしょう。例えば昔からテニスのジョン・マッケンローは酷かったでしょうし(笑)、今になって増えたわけではないと思います。

 アスリートにとって何が道徳的に正しい行動かは、子供のときの成長段階で教えてもらえるはず。大人になって知らないということは残念ですが、そこから知るしかないですよね。誰かが教えてあげるしかない。

 どのスポーツでもそうですが、同じ時間、同じ場所に相手がいないとプレーできません。ということは、自分たちが練習してきた成果を発揮する場所が与えられないことになります。そういう意味では相手があってこその試合なので、自分の力を発揮したいのなら、スポーツでよく使う言葉、「リスペクト」を理解してもらいたい。

 例えばサッカー選手として「くさい」という発言をする自分に対するリスペクトがあったのか。子供たちがたくさん見ていて、お手本にならないといけない自分をリスペクトしたときに、そういう言動に出るのか。相手や状況がどうであれ、自分、相手、子供たち、観客に対するリスペクト、というのを考えられるようにトレーニングしていく必要があります。

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