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アマゾン、Slack買収検討の真意は?──「チャット」でオフィス市場への足がかりへ

7/13(木) 19:49配信

WIRED.jp

アマゾンが企業向けコミュニケーションツール「Slack」の買収を検討していることが報じられた。提示額は日本円にして約1兆円と巨額だが、それに見合う価値が果たしてあるのか。買収検討によって浮かび上がってきた、アマゾンとSlack双方にとってのメリットとは。

アマゾンが「Alexa」の先に描く『スタートレック』のような近未来

アマゾンは、間違いなく世界最大のオンライン小売業者だ。世界中で3億人近くがアマゾンで買い物をしているだけでなく、同社は人気の映画やテレビ番組のストリーミングサーヴィスも提供している。音声制御のパーソナルアシスタント「Amazon Echo」を使っている人は、何百万人もいるだろう。ゲーマーなら、アマゾンのライヴストリーミングサーヴィス「Twitch」も知っているはずだ。そして無数のプログラマーやIT企業が、アマゾンのクラウドサーヴィスを利用している。

そんなアマゾンを、あまり使っていない人々がいる。オフィスワーカーだ。しかし、アマゾンはこれを変えようとしている。

ブルームバーグは6月15日の記事で、アマゾンが業務用チャットアプリ「Slack」で知られるスラック・テクノロジーズを90億ドル(約1兆円)で買収することを検討していると報じた。スタートアップの買収額としては破格だ。しかし、実現すれば、アマゾンはこれまでほとんど“黙殺”していたビジネスソフトウェア市場のドル箱に、足場を得ることになる。

そしておそらくもっと重要なのは、多くの人がコンピューティング界の次の目玉になると予想しているプラットフォームを、アマゾンが掌握できることだ。

アプリの次に来るもの

アマゾンのクラウドビジネス「Amazon Web Services」(AWS)は、「Netflix」のような消費者向けサーヴィスから、GEのような大企業、CIAのような政府機関のアプリケーションまで、あらゆるものに使われるサーヴィスへと成長した。スマートフォンが普及してクラウドサーヴィスのニーズが高まったことも、AWSにとって追い風となった。

しかし、コンピューティングの次なる目玉は、たぶんウェブでもスマートフォンアプリでもないだろう。優勢になるのは、Echoのような音声制御システムや、「Facebook Messenger」やSlackといったチャットプログラムによる「会話というインターフェイス」だ。つまり、アプリをタップするのではなく、ボットと“会話”するのである。

そうしたインターフェイスでは、消費者は「Spotify」をダウンロードするのではなく、再生したい曲をただEchoに口頭で伝えるようになる。近所のピザ店への注文は、ウェブサイトにアクセスするのではなく、Facebook Messengerで注文すればいい。ビジネスソフトのメーカーは、最終的にオフィスの単純作業はボット化されると考えており、Slackがそのプラットフォームになると予想している。

「Slackは、ユーザー数、アクティヴユーザー数、売上のどれをとっても史上最速で成長しているエンタープライズ企業です」と語るのは、Slackユーザー向けにコラボレーションツールを開発するスタートアップ、Pingpadの創業者ロス・メイフィールドだ。

アマゾンがSlackを買収すると、いったい何が起きるのか。すでにアマゾンにはAWSがあるので、開発者が新しいビジネスアプリケーションをつくるためのバックエンドのプラットフォームを握っている。そこにSlackが加われば、それらのアプリのプラットフォームまで、アマゾンが手中に収めるかもしれない。つまり、開発者はAWSでアプリのホスティングと管理を行うだけでなく、Slackをアプリを配布するストアとして使うわけだ。メイフィールドは、それらをすべてひとつの会社が管理するのは、彼の会社のようなサードパーティーのソフトウェア企業にとって魅力的だと語る。

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最終更新:7/16(日) 18:37
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