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米国の低い長期金利が「割高な株価」を許してきた

7/13(木) 21:01配信

会社四季報オンライン

 これまでの連載で執筆してきたように、米国株は長期的な上昇トレンドにあり、また長期的なバリュエーション指標で見て必ずしも危険水域といえるほどに割高ではないため、トレンドの反転を過度に恐れる必要はないと考えてよいと思う。

 しかし相場にはリスクはつきものだ。ほかに見落としている点はないだろうか。例えば政治リスクは、その影響が短期的、限定的にとどまることが多いが、現在のトランプ米大統領がらみのリスクは通常レベルを大きく上回るだろう。そして、それ以上に根本的なリスク要因として考えられるのが長期金利の動向だ。

 長期金利は地味だが、とても重要な指標である。とりわけ今後の米国株市場の動向を考える上では決して無視できない。なぜなら、前回の連載で触れたバフェット指数の長期的な上昇、シラーPERのここ20年程度の上方へのシフト、そしてリーマンショック後の8年に及ぶ株価のラリーは、いずれも歴史的な低金利環境によって支えられている可能性が高いと考えられるからだ。

 少なくとも、これらの現象はかつてないほどの低金利を前提とすることで初めて正当化される部分が大きいと思う。つまり、今の低金利環境が終焉するときに、米国株の長期的上昇トレンドも終わりを迎える可能性があるということだ。

 米国の長期金利は、長期的なトレンドとしては、40年近くにわたってほぼ一貫して下がり続けている。1990年代の安定した景気拡大期も、ITバブルの時期も、2000年代にサブプライムローンバブルが起きた時も、2010年代に景気回復が続いた時も、ここにきて米国の中央銀行であるFRBが金融緩和の縮小から金利引き上げへと金融政策を修正してきたときも、長期金利は下がり続けているのである。

 なぜこれほど長期にわたって金利が下がり続けるのかという点については、非常に大きなテーマになってしまうのでここでは深入りは避けたい。しかし、過去のトレンドを見れば、もはや金利が上がることをそれほど警戒する必要はないようにも思えてくる。

 FRBは金融政策の正常化のために政策金利を少しずつ引き上げているが、それでも7月12日時点で、10年米国国債利回りは2.33%と歴史的な低水準にとどまり続けていて、大きく上昇する気配がない。

 一方で、ここまで水準が低くなると長期金利の低下余地は限られてくるし、少しずつではあるが金利の低下トレンドは弱まりつつあるようにも見える。ここからは、もし金利水準が何かの要因で上がり始めれば、数十年続いてきた金利低下トレンドが破られかねないという状況に近づいているともいえる。その目途として、私は長期金利の3%超えを一つのメルクマールとして捉えている。

 もっとも、今の市場環境では、金利が少し上がると株価がぐずつき始め、そうすると金融当局者が「金融緩和の修正は慎重に進める」というメッセージを発して、再び金利低下と株高に戻るということを繰り返している。だから、何が長期金利上昇のきっかけになるか今のところ予想は難しいのだが、市場では予想外のことが起きるのが常である。目を離さずに注視していくに越したことはないだろう。

 田渕 直也(たぶち・なおや)/1985年、一橋大学経済学部卒業。日本長期信用銀行(現新生銀行)で主にデリバティブのトレーディング、ポートフォリオマネジメントに従事。UFJパートナーズ投信(現三菱UFJ投信)債券運用部チーフファンドマネージャーとして、社債やストラクチャード・プロダクトへの投資運用体制を構築。『カラー図解でわかる金融工学「超」入門』、『投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について』など著書多数。現在、ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

田渕 直也