ここから本文です

最後まで自分らしく生きるために…終末期医療の現場から高齢者医療を考える

7/13(木) 6:30配信

ダ・ヴィンチニュース

 この世に生まれてきた以上私たちはいつか必ず死ぬ。親しい家族や友人を見送り、やがて自分が見送られる側になる。だから本書『ラストディナー 高齢者医療の現場から』(老寿サナトリウム/幻冬舎)に紹介されたエピソードは決して他人事ではない。

 本書には8人の患者とその家族が登場する。患者はいずれも認知症や末期ガンといった治療の難しい病気を抱えた高齢者だ。彼らが人生最後の日々をどう過ごし、そしてどのように旅立ちのときを迎えたのか。これはそれぞれの看取りの記録であると同時に、患者とその家族、医療従事者の願いや想いが詰まった生の記録でもある。

 人間という生き物は意外にしぶとくて、生命力が強い。患者本人の意志や適切なケアによっては、周囲から見放されていたような患者に思わぬ奇跡が起こることがある。胃ろうから再び自分の口で食事を取れるようになった人。寝たきりの状態だったのがトイレに行けるまでに回復した認知症患者。

 ものを食べる、自分の力で身体を動かす、あるいは家族や友人と親密な時間を過ごす。どれもささやかなことではあるけれど、その効果はまるで魔法だ。生きる意味を失い、半ば死んだようになっていた高齢者の顔に輝きが戻る。

 もちろん彼ら彼女らは高齢で、医療機関での治療・介護が必要な重い病気を抱えた患者たちだ。病気を完治させることも自宅に帰ることも難しい。ただそれでも人生最後の数年、数ヶ月をできるかぎり笑って過ごすことはできる。ある意味人間として理想の終わり方ともいえるのではないか。

 自分の最期をどう締めくくるかというのは難しい問題だ。「1日でも長く生きたい」と願う人がいる一方で、「延命治療にはこだわらず最期まで自分らしくありたい」という人もいる。そのなかで超高齢社会の進行に伴い、注目を浴びているのが後者の考え方だ。

 QOL(生活の質)をできるだけ保ちつつ、患者に最期まで穏やかに過ごしてもらう。実際そのような方針に基づいて終末期医療を行う医療機関も出てきた。その1つが本書の舞台・老寿サナトリウムである。

1/2ページ