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転向した競技で才能が開花 「やり抜く美学」と決別

7/14(金) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 金の卵を探せ――。2020年東京五輪・パラリンピックとその先を見据え、将来のトップ選手を育てる「タレント発掘」が盛んだ。メダルがお家芸に偏り、一つの競技に打ち込むのが尊ばれる日本のスポーツにくさびを打ち込む、壮大な実験でもある。

■転向から6年で日本一に

 一瞬の剣さばきで勝負が決まるフェンシング。「突き」と「斬り」が可能なサーブル種目で昨年末、初めて全日本選手権を制したのが福島史帆実さん(22、法政大)だ。相手の剣を払って逆襲する「パラード」を武器に最近は国際舞台でも実績を重ねるが、競技歴はまだ6年足らず。地元の福岡県のタレント発掘事業で才能を見いだされ、陸上競技から転向した期待の星だ。
 子供の頃から駆けっこが得意で、バドミントンや野球にも取り組むスポーツ少女だった。漠然と五輪を夢見ていた小学校4年の時、運動能力の高さを見込んだ担任の勧めで応募。70倍超の選考を突破した。
 ハンドボールにアーチェリー、ゴルフ、水球……。様々な競技に触れ、潜在的な力を伸ばすプログラムは楽しかったが、「やりたい」と思える競技はなかった。中学で陸上部に入り、走り幅跳びで全国大会出場を目指していたからだ。
 転機は中2の秋に参加した「オーディション」。各競技の指導者を前に様々な運動テストを行い、競技別に適性が示される特徴的なプログラムだ。福島さんがバドミントンやスポーツチャンバラで見せたフットワークや反射神経の良さが、関係者の目をくぎ付けにした。
 「五輪を目指せる」。数ある競技の中で最適とされたのが、当時未経験で「全く魅力を感じなかった」というフェンシングだった。前後の素早い動きや一瞬の判断が必要な競技の資質があると評価され、高校の練習に出向いて試すとすぐに基本的な動きができた。
 熱心な勧誘に心が揺れつつ、「一度もやったことがないのに本当にいいの」と心配する母親の気持ちも痛いほど分かった。進路選択が迫った中3の夏。中学最後の陸上大会で目標としてきた全国出場を逃すと、腹をくくった。「向いている競技に懸けてみよう」
 1時間半かけて通った強豪の福岡魁誠高での猛練習に本人の熱意、慧眼(けいがん)が合わさって才能はすぐに開花。フェンシングを始めて約1年の高2の全国大会でいきなり3位。「私も勝てるんだ」と自信を深め、高3は狙って全国優勝する急成長を見せた。
 同世代には小学校で競技を始めた選手が多く、国際大会で経験不足を自覚する場面もある。それでも自分で選んだ進路を後悔したことは一度もないという。「事業に参加しなければフェンシングと出合えなかった。もっと強くなれる」と伸びしろを実感する毎日だ。
 「20年の五輪で金メダルを取る」。11年春、事業の修了式で誓った中3の少女は有言実行に向け、真っすぐ突き進んできた。
 タレント発掘事業は04年開始の福岡県を皮切りに全国に広がる。日本スポーツ振興センター(JSC)が認定するだけでも、全国の20以上の自治体が展開している。福岡のように子供の能力を見極めて最適な競技を見つける仕組みのほか、あらかじめ競技を絞って強化する地域もある。メダル獲得が一部競技に偏りがちな日本の現状を変えようと、国主導の発掘事業も今夏に始まった。

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最終更新:7/14(金) 7:47
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