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「南北の仲介」に動き出したバチカン --- 長谷川 良

7/14(金) 16:05配信

アゴラ

ローマ・カトリック教会の総本山バチカン法王庁は韓国と北朝鮮間の仲介に動きだした。10日のバチカン放送によると、フラシスコ法王は南北間の仲介役に南米エルサルバドル出身のグレゴリオ・ローサ・チャベス(Gregorio Rosa Chavez)枢機卿を任命した。同枢機卿(75)は近日中にも韓国を訪問し、現地の声を集め、南北間の調停の可能性、その方法を韓国側の関係者と話し合う予定だ。

バチカンが南北間の仲介に乗り出す契機は、韓国の文在寅大統領が5月、ローマ法王フランシスコ宛てに書簡を送り、その中で「南北間の和解への仲介」を要請したことから始まった。バチカン放送(独語電子版)は当時、「韓国、バチカンの仲介を希望」という見出しで文大統領の写真を掲載して大きく報道したほどだ。

世界に12億人以上の信者を抱えるバチカン市国の外交の評価は悪くない。2014年末の米国とキューバ間の外交関係回復の背後にはバチカンの調停があったといわれている。韓国側は「米・キューバ間のようなバチカンの調停外交は南北間でも可能と信じている。南北間の真摯な対話を促進できるはずだ。北朝鮮は目下、欧米諸国に対して信頼を失っているからだ」と述べている。

調停役に任命された枢機卿について、バチカン放送は「チャベス枢機卿は1980年に殺害されたオスカル・ロメロ大司教(サンサルバドル教区)と共に歩んだ聖職者だ。ロメロ大司教はエルサルバドル内戦の人権問題を世界にアピールしたが、暗殺された。大司教の死はエルサルバドルの民主化運動を高める結果となった。チャベス枢機卿は殉教したロメロ大司教の列聖のためにこれまで努力を払った聖職者だ。その結果、1990年にロメロ大司教の列福審査が始まり、2015年、フランシスコ法王によって列福された。そのチャベス枢機卿が今度は朝鮮半島の統一平和実現のための調停役に任命されたわけだ。

チャベス枢機卿の使命は大変だ。北側が先ず同枢機卿を仲介役として受け入れるかは全く不明だからだ。国際キリスト教宣教団体「オープン・ドアーズ」によれば、北朝鮮には5万人から7万人のキリスト者が同国内の30以上の強制労働収容所に拘留され、虐待されている。北全土には約40万人のキリスト者が地下活動を強いられている。同団体が公表する宗教迫害国リストでは北朝鮮は毎年、最悪国トップにランクされている。北側が現時点でバチカンの仲介役を受け入れる可能性は少ない。チャベス枢機卿の忍耐と知恵が求められるわけだ。

ところで、北朝鮮は西暦2020年頃には崩壊する説がある。それによると、「北朝鮮建国後、朝鮮戦争(韓国動乱)から2020年で70年目を迎えるが、北は70年を迎えるころから衰退していく」というのだ。ちょうど、ソ連が70年目を迎える前に崩壊し、旧東欧共産圏は解放されていったようにだ。共産主義、無神論国家は「70数」を迎えることが出来ない宿命にあるというのだ。

金正恩労働党委員長が率いる北朝鮮は今日、核・弾道ミサイル開発に躍起となっている。それに対し、国際社会は対北制裁を課しているが、朝鮮半島の緊張はここにきて高まってきている。金正恩氏は核戦争すら辞さない強硬姿勢を示している。「2020年北崩壊」まであと2年余りとなった。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年7月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』(http://blog.livedoor.jp/wien2006/)をご覧ください。

長谷川 良

最終更新:7/14(金) 16:05
アゴラ

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