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豊田真由子議員を生んだ「東大法学部」の特殊すぎるプライド。女性は意外とキラキラ系

7/14(金) 8:50配信

女子SPA!

 元秘書への暴言・暴行が報じられた豊田真由子議員。激しい罵り方に加え、東京大学法学部を卒業し、厚労省に入省の後にはハーバード大大学院修了という経歴も注目を浴びました。

 多くの人が彼女を“スーパーエリート路線まっしぐら”と思いがちですが、同じく東大法学部を卒業した、社会学者でやおい・ボーイズラブ研究家の金田淳子さんによると、東大法学部の独特の価値観では政治家になるのはドロップアウトとのこと。豊田議員と面識はなかったものの、同じ年に入学し同時期を過ごした金田さんが見た、東大法学部特有の価値観とは――?(寄稿)

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 私は1993年に東大文科1類(法学部に進学する学科)に入学しました。地方の裕福でない共稼ぎ家庭出身の私は、正直に言うと周囲になじめませんでしたが、この4年間は貴重な異文化体験で、面白エピソードの宝庫でもありました。

◆初対面で「コクイチ?シホウ?」

 まず文1の面白ポイントとして、初対面の場で「××さんは、コクイチ? シホウ?」と尋ね合うことがあります。コクイチとは当時の国家公務員Ⅰ種試験(中央官庁のエリートコースに乗るための試験で、現在は総合職試験と改称)であり、シホウとは司法試験(弁護士または検事になるための試験)のことです。

 つまり「国Ⅰを受けるのか、司法試験を受けるのか」と尋ね合うのです。二択です。希望進路に民間企業が入っていないのです。

 恐ろしいことに、彼ら/彼女らは、冗談を言っているわけではありません。というのも、文1の学生は、父親が(または親族全員という場合も)キャリア官僚か士業という、恵まれた階層出身の学生が珍しくありません。そのため自分も親のようになると確信しているのです。ある女子学生が気楽に言った、「うちは親が大蔵省だから、私は外務省を目指そうかな~」という面白セリフが、私は忘れられません。どういう理屈だよ!(当時の私の心の叫び。)

 学生間では、中央官庁にも優劣があり、当時は大蔵省(現財務省)、通産省(現経産省)、外務省が3TOPとされていました。もちろん、民間企業はさらに下に見られていました。(とはいえ国Ⅰや司法試験は狭き門なので、大多数の学生は、進路志望を変更して、民間企業に就職することになります。)

◆学生なのに「国民にはわからないよ」って…

 これも当時の面白エピソードの一つですが、キャリア官僚を目指す人の声が大きいせいか、東大法学部の学生は、統治する側の人間になりきった発言をすることがあります。ある男子学生の言った「自分たちは支配する側の人間だ」というセリフを、私はよく覚えています。

 彼ら/彼女らは「(自分たちによって)支配・統治される側の人間」という意味で、主権者のことを「国民」と呼んだりします。「国民の理解が得られにくい」「国民にはわからないよ」などの、何目線なのかわからない謎のセリフが、学生間で飛び交います。

◆政治家になるのはドロップアウト!?

 このような「統治者目線」のセリフは、政治家が言いそうですし、東大法学部の学生は、いずれ政治家になりたい人が多いのでしょうか。

 意外かもしれませんが、私はそんな夢を語る学生に会ったことがありません。どちらかというと、政治家になることは、キャリア官僚という、彼ら/彼女らが目指すエリートコースからの、一種のドロップアウトだと考えられていた節があります。

 官僚の最高位に上り詰める人はごくわずかです。そこで、キャリア官僚の多くは、中央官庁を去って関連企業などに再就職することになりますが、たまに政治家を目指す人もいます。後者は新たなステージに駆けあがったようにも見えますが、東大法学部の学生からは、どちらも「出世争いに負けて中央官庁を去った人」という位置づけだったように思います。少なくとも憧れを持って語られる対象ではありませんでした。

◆「ジェンダーって誰?」と聞かれてノケゾった

 ここまで、東大法学部の人たちを、特殊すぎる価値観を持った変人のように書いてしまいましたが、よい部分を挙げるならば、努力を惜しまない人が多いことです。特に国Ⅰや司法試験を目指す人は、大学の講義をしっかり受けて、夜は専門の塾に通います。東大に合格した翌月から、受験勉強以上の猛勉強を始めるのです。

 東大法学部の学生は、勉強が苦ではなく、比喩的に言えば「出されたものは全部食べる」のが得意な人々です。ということは、知識教養の豊かな学生が多いのでしょうか。確かに、知識欲のためというよりは負けず嫌いで、何でも語れるように難しい本を読みまくる学生がたまにいました。

 しかし、これも意外かもしれませんが、学校や塾で出された課題以外の本を読まない人も少なからずいました。基本的に要領がよいので、無駄なことをしないのです。娯楽小説すら読まず、「教科書以外の文章を読んだことがない」と豪語する男子学生もいました。20年前とはいえ、別の男子学生に、「よく本のタイトルになってる、ジェンダーって『誰』?」と尋ねられたときは、その無教養さに驚きすぎて、つい本当のことを教えてしまいました。少しは本を読め!(心の叫び)

◆女性たちは超努力家のキラキラ系

 最後に、東大法学部の女性たちについてお話ししましょう。東大法学部の男女比は男性に偏っていて、1~2割が女性です。それらの女性については、ガリ勉タイプのダサいブスという偏見があるかもしれません。まるきり間違っているというわけでもなく、私自身がそのようなブスでした。

 とはいえ私のような女性はごく少数で、大多数は、美容やファッションにも努力を惜しまない、おしゃれな女性でした。男性は東大生であるだけで称賛されますが、女性は「勉強はできるが、ブスでモテないから、女として失格だ」という、やっかみまじりの侮蔑に(現在ですら)さらされやすいものです。

 東大法学部の女性は向上心とプライドが高いので、「ブスでモテない」などと絶対に言わせないために努力します。ブスでモテないことは女の恥だという、男目線の規範を内面化しているわけですが、20歳そこそこの若者にそれを指摘するのは酷だと思います。「私は高校まではガリ勉だったから、がんばって綺麗になって、絶対に彼氏を作る!」と意気込んでいる女性は私の周囲に何人もいて、その全員が、入学して半年以内に東大生の彼氏を作っていました。

 東大法学部の女性たちは、もちろん勉学や就活でも手を抜きません。「一般的な男性以上の出世」と、結婚・出産などの「女性としての幸せ」の両方を本気で追求するスーパーウーマンです。この夢を実現する女性も珍しくないようです。ただしその裏に、どれだけの恵まれた出身環境と、常軌を逸した努力があるのかは、想像に難くありません。

「努力家で向上心に溢れた人たちだけど、自分はなじめそうにない。」結局、私はこのように感じ、法学部の人たちとは疎遠になりました。それから20年が経過しましたが、このように思い出すたび、異文化空間だという印象は深まるばかりです。

<TEXT/金田淳子 ※タイトル・小見出し・冒頭文は「女子SPA!」編集部による>

【金田淳子】やおい・ボーイズラブ研究家。1973年富山県生まれ。1993年に東大文科Ⅰ類(法学部に進学する学科)入学。1996年に東大文学部に学士入学、1999年に東大文学部大学院に入学。共著に『文化の社会学』(佐藤健二・吉見俊哉編著、有斐閣)『オトコのカラダはキモチいい』 (二村ヒトシ・岡田育・金田淳子共著、KADOKAWA/メディアファクトリー)など。

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最終更新:7/14(金) 8:50
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