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80年代ドライブコースの大定番「134号」のなにが若者たちを駆り立てたのか? 湘南海岸沿いで大渋滞、1時間で10mしか進めないことも…

7/14(金) 16:00配信

週刊SPA!

 バブル前夜に青春を過ごしたあなたは「134号」と聞いて、どんな風景を頭に思い描くことだろう?

 正確には「一般国道134号」のことである。神奈川県内で完結する道路で、横須賀・三浦・逗子・鎌倉・茅ヶ崎など、三浦半島および湘南海岸に沿って走るルートとして有名だ。「海岸に沿って走る」ということは、イコール「景色がとてもキレイ」なわけで、現在でも日本で5本の指には入るであろう、絶好のデートスポット、ドライブコースとされている。

 あのころは、内陸部の道路整備がまだ不十分で、渋滞が名物となっていたルートでもあった。特に7~8月は休日じゃなくても1時間の走行距離が10mみたいなこともザラだったりした。

 カーナビで裏道や渋滞情報をそれなりに調べることができる今の時代なら、ある程度は対応も可能だろう。最悪「今日は混んでそうだから別の場所に行こうか」という選択だってできる。しかし、カーナビなんて『スターウォーズ』レベルのファンタジックなメカでしかなかった80年代の若者たちは、冊子の道路マップとおぼろげな記憶とアテにならない方向感覚だけを頼りに、あえてオンシーズンの134号へと真っ向から挑んでいった。

 いったい全体、134号のなにが、当時の若者たちのハートを熱く駆り立てていたのか?

 一つには、たった約60kmしかないのに「海と古都を同時に満喫できる」という、日帰りドライブにベストな距離感がある。寺院とオシャレなショップが乱立する鎌倉を抜けたら、そこはすぐ湘南――。おそらく日本中探しても、ここまで都合のいいデートコースはそうあるまい。いうなれば神戸と京都を一日で攻めるようなもので、当然の事ながら関西人にとって、そのプランは無謀で非現実的でしかない。

 もう一つ心当たるのは、あのサザンオールスターズの影響だ。『希望の轍』で134号を示唆する「エボシライン」を世に知らしめたのは90年代の話だが、80年代初頭からすでに「日本語を英語風に歌う手法」で湘南の風を日本中に吹かせ、サザンは自らの地元を全国区の「憧れのスポット」へとのし上げたのである。

 多くの中流階級とその息子にとって、そんな「憧れのスポット」をドライブする憧れのクルマはファミリアとシティ。ちょっとだけお坊っちゃんならゴルフ。四角いクルマが圧倒的な人気で、なぜか赤がやたら好まれていた。その上にサーフボードを乗っけたら完璧。信じられないことに、サーフィンをやったこともないのに、アクセサリーとしてボードを車上に“飾っていた”輩も少なからず実在した。たとえ「丘」だろうが、サーファーとして134号を流すことに重要な意味、ステイタスがあったのだ。

 そして、車内にマストだった三種の神器が「カーステ」「缶ジュースホルダー」「なるべくでっかいスピーカー」だ。

 ダブルカセットのコンポでしこしこと編集した「マイテープ」が奏でる音源を、となりに座る愛しの彼女に披露する二人だけの密室空間……。それこそがクルマを保有することのモチベーションであり、アイデンティティーですらあった。

 赤くて四角いクルマに、シチュエーションに応じてめまぐるしく微調整されるBGMのボリュームを精密に再生してくれるカーステ&スピーカー、それにクーラーできんきんに冷えた缶ジュースや缶コーヒーがあれば、渋滞なんか怖くない。「マイテープ」の出来と本数次第では、むしろ味方にさえできる。とっておきの一曲は“勝負のとき”にちゃんと残しておいたりもして……。

 やがて静かな海岸に愛車を停め、バックに『愛しのエリー』がさり気ない音量で流れたら、シートを倒して××(「チョメチョメ」と読む)……と、理想のタイムスケジュールを完遂できた者は、意外に少なかったとも聞く。「行きは天国、帰りは無言地獄」ってヤツですな(笑)。

文/山田ゴメス

日刊SPA!

最終更新:7/14(金) 16:00
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