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軽井沢でしか食べられないフレンチ 「無彩庵 池田」の地の食材への愛

7/14(金) 12:01配信

CREA WEB

vol.25 軽井沢(1)
まさに軽井沢スタイルのヌーベルキュイジーヌ

 軽井沢のフレンチが変わってきた。有名な「エルミタージュ・タムラ」が第一世代とするならば、2011年を機に次々と若いシェフが店を出すようになる。

 軽井沢をはじめとした近隣の生産者との連携もあり、今までの「東京で食べるようなフレンチを軽井沢で食べる」というスタイルから、「軽井沢でしか食べることのできないフランス料理」と、スタイルが変わってきた。

 今号から数回に分けて、そんな軽井沢スタイルのヌーベルキュイジーヌを出す店を紹介したいと思う。

 今回は、南原にある「無彩庵 池田」である。

 当初は 「エルミタージュ・タムラ」のカジュアル版の2号店だったが、出身の池田昌章シェフが譲り受け、オーナーシェフとなった。

「山菜や川魚が好きで、軽井沢で働こうと思いました」という池田シェフの作る料理は、地の食材への愛が溢れている。それでは、初夏のコースをご紹介しよう。

 アミューズは、エレガントな玉ねぎの甘みの中で、微かにわさびが香り、舌を刺して食欲を刺激する、「依田さんの玉ねぎと安曇野わさびのムース」。

 続いて、ワラビのほろ苦み、アサリのうまみ、サフラン風味のマヨネーズのコク、からすみの塩気が見事に調和した、「ワラビとアサリの出汁のジュレ寄せ カラスミ」。

 魚の前菜は、「飯田・天竜鮎のパテ 鮎出汁と葛 きゅうりとエストラゴンビネガー」。ほろ苦いパテを鮎の出汁で溶いた葛で包んでいる。それをキュウリのソースにつければ溌剌たる香りが抜け、清流の中で泳いでいるかのような気分になれる一皿である。

 肉の前菜は、「伊奈・宮田村仔猪のパテとブラックチェリー。フォアグラと信州地鶏べにしぐれのプレッセ ルバーブ 白バルサミコ バニラ」。練り肉の旨みに富んだうり坊のパテと、香りの良いフォアグラと鶏肉の冷前菜である。白バルサミコを煮詰めてバニラを加えたソースが素敵である。

単純なようで計算が行き届いた皿

 次がスープ、「東御・工藤さんのキタアカリのポタージュ サマートリュフのグラスパウダー」が出されたが、シェフの才が秀でた一つのクライマックスでもあった。

 キタアカリのスープは、それだけで品がよく、丸い甘みが心和ます味わいだが、そこにコンソメで煮てから凍らして崩し、パウダー状にしたトリュフを添える。トリュフが溶け、ジャガイモの甘みに色香が刺していく感覚がたまらない。

 続いての魚料理「野尻湖天然大鰻 依田さんの玉ねぎ、狼桃トマトのガスパチョ」も素晴らしかった。

 2キロの天然ウナギを香ばしく焼き上げ、2日間寝かせてなじませ、微かに発行の刺激が出たガスパチョソースを加えた皿である。ソースがウナギと美しく馴染んでいる。添えた玉ねぎのマリネが、またウナギの脂を一旦切る役目を果たしていて心憎い。

 肉料理は、「伊那宮田村のツキノワグマのアッシ・パルマンティエ 根曲がり竹、木の芽」である。

 フランスの国民食とも言える牛肉とジャガイモのグラタンを、熊肉を使って作るという面白さである。下には赤ワイン風味のリゾットが敷かれ、熊肉の猛々しさと呼応させている。単純なようで計算が行き届いた皿であった。

 デセールは、生姜の刺激が絶妙に効いた「新生姜のブランマンジェ 黒糖エピスソース アップルマンゴーのソルベ」そしてお茶菓子には、甘みの中から会え合われる塩味が余韻を作る、「長野県大鹿村の塩とショコラのサブレ」が出された。

 ランチはプリフィクスで3,300円から、夜は5,500円から。木々に囲まれたレストランで、地物と食材に敬意を払った料理を食べる喜びが、ここにある。

無彩庵 池田
所在地 長野県北佐久郡軽井沢町長倉1891-50
電話番号 0267-44-3930
http://www.musaian.com/

マッキー牧元(まっきー・まきもと)
1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。

マッキー牧元

最終更新:7/14(金) 12:01
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