ここから本文です

「日本で爆発的に流行するかも」蚊の感染症のメカニズムや脅威とは?

7/15(土) 7:00配信

日経トレンディネット

 2017年5月から7月にかけて、兵庫県、大阪府、愛知県、東京都の港湾地区で特定外来生物ヒアリ(アカヒアリ)が発見され、連日ニュースをにぎわせている。

【関連画像】ヒトスジシマカの分布と年平均気温の分布を示した図。2016年に、年平均気温が11度を記録した青森県弘前市で、ヒトスジシマカが確認された

 アカヒアリは南米が原産で、米国南部や台湾、中国、オーストラリアなどに分布し、非常に攻撃的で、人間の毛や皮膚にかみついて体を固定し、針を差し込んで毒を注入する。毒の注入量はごくわずかだが、毒成分内のタンパク質が原因で、アナフィラキシーショックを起こし、死亡するケースもあるという。

 こうした、海外から持ち込まれる害虫は恐ろしいが、デング熱やジカ熱などの蚊媒介感染症も忘れてはならない。2014年には海外渡航歴のない人が代々木公園で蚊に刺され、デング熱に感染したことが大きな話題となったが、今年6月にも、海外から帰国後にデング熱を発症した患者が蚊に刺されたことが世田谷区で判明し、区が蚊の駆除作業を行ったというニュースが報道されたばかりだ。

 得体の知れない蚊媒介感染症が、日本でも流行しつつあるのだろうか。世界的に見ると、蚊媒介感染症の死亡者数は年間約70万人にも上るという。

 「日本は、デング熱などの蚊媒介感染症の爆発的な流行がいつ起こってもおかしくない状態だ」と警鐘を鳴らすのは、先日行われたフマキラー主催のセミナーで講演を行った、国立感染症研究所・名誉所員の小林睦生氏だ。

 そこで、小林氏による講演から、蚊媒介感染症のメカニズムや脅威について紹介する。

日本に多く生息するヒトスジシマカに注意

 蚊媒介感染症とは、ウイルスを持つ蚊に刺されることによって起こる感染症のことで、主に熱帯・亜熱帯地域で流行している。蚊媒介感染症の感染経路は共通しており、ウイルスに感染したサルの血液を蚊が吸い(下図の森林型サイクル)、サルの感染症を蚊が人間に媒介し(下図の中間サイクル)、ウイルスに感染した人が都市部に移動すると大きな流行を引き起こす(下図の都市型サイクル)。つまり、蚊と人の密度が高ければ高いほど、流行が拡大することになる。

 蚊の中でもウイルスを媒介するのは、ネッタイシマカなどのヤブカ類。沖縄から東北まで、日本で広く分布しているヒトスジシマカもヤブカ類だ。

 ヒトスジシマカは東南アジア原産のヤブカで、日本での主な活動期は5月中旬~10月下旬。秋になり気温が下がると幼虫は死ぬが、卵の状態で越冬するのが特徴だ。少量の水があれば幼虫は生きることができ、ベランダにある植木鉢の受け皿や空き缶・ペットボトルにたまった水、放置されたブルーシートや古タイヤにたまった水などによく発生する(厚生労働省HP参照)。人がよく刺されるのは、墓地、竹林の周辺、茂みのある公園や庭の木陰だ。

 ヒトスジシマカが媒介する感染症には、デング熱、ジカウイルス感染症、黄熱、チクングニア熱などがある。

 「2016年に行われたフランスでの研究によると、ネッタイシマカが主な媒介蚊とされていた黄熱を、日本由来のヒトスジシマカも媒介することが確認された。つまり、媒介蚊となるヒトスジシマカがいれば、あらゆる蚊媒介感染症が流行する可能性がある」(小林氏)

ヒトスジシマカが媒介する主な感染症

・デング熱

アジア、中南米、アフリカなどの熱帯・亜熱帯地域で発生。2~14日の潜伏期ののち、急激な発熱で発症し、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などの症状が現れる。通常、発症後2~7日で解熱する。まれに重症化してデング出血熱やデングショック症候群を発症することがあり、早期に適切な治療が行われなければ死に至ることもある。デング熱の輸入症例は年々増加傾向にあり、2016年には335例を記録している。

・ジカウイルス感染症

アフリカ、東南アジアや南アジア、カリブ海諸国、アメリカ大陸などの熱帯・亜熱帯地域で発生。2~12日の潜伏期の後、発熱(多くは38.5度以下)、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛等の症状が現れる。ただし、感染しても症状がないか、症状が軽いため気付きにくいこともある。しかし、女性が妊娠中にジカウイルスに感染した場合、母体から胎児にジカウイルスが感染し、小頭症などの先天性障害を起こすことがある。

・チクングニア熱

アフリカ、東南アジア、インド洋島しょ国、マダガスカルなどで発生。2~12日の潜伏期の後、突然の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹などの症状が見られる。

・黄熱

サハラ砂漠以南のアフリカ、中南米地域で発生。3~6日の潜伏期の後、発熱、頭痛、筋肉痛、嘔吐などの症状が現れ、死に至ることもあるが、有効な予防接種があり、発症を防ぐことができる。黄熱に感染する危険のある地域に入国する前に、黄熱の予防接種が推奨されている。

・ウエストナイル熱

アフリカ、ヨーロッパ南部、中央アジア、西アジアのほか、近年は北米地域、中南米、ロシアでも発生。2~14日の潜伏期ののち、発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、背部痛、発疹などの症状が現れ、脳炎を発症する場合もある。

参考:厚生労働省HP

1/2ページ

日経トレンディネットの前後の記事