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名古屋に魅力がないのではなく、アピールする気がないだけ

7/16(日) 8:00配信

BEST TIMES

訪れたい都市ランキングで、あっけにとられるほどのぶっちぎりの最下位に沈んだ名古屋。名古屋にはなぜ魅力がないのか。『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)の著書、清水義範氏が理由を語る。

◆名古屋は完結した第三の地域



 たとえ人気がなかろうとも、名古屋に住んでいる人にとって、名古屋は魅力のない街かというと、そんなことはない。むしろその逆で、名古屋人というのは名古屋をこの上なくいいところだと思っていて、名古屋以外には関心もないのだ。

 名古屋ほど住みやすい街はない、というのが名古屋人の実感である。文句のつけようがない大都市だが、端から端までだいたい頭に入っていて、大きさの程がいい。経済的には着実に繁栄していて、人々の様子にもゆとりがある。街には、安心して身をまかせておけるようななじみがあって、心安らかにいられる。どこを見ても整然としているという意味のきれいさがあって、落ちつける。

◆名古屋人は名古屋から出ない

 そして名古屋人の周囲には、よくわかりあった友人、仲間がいて、心強い。どこにいようがなんとなく知ったところであり、身構える必要がなく居心地がよい。

 というようなわけで、名古屋人は名古屋に住んでいることに大満足であり、よそに出ようとか、よそに住みたいとはまったく思っていないのである。言ってみれば、とても強い地元志向があるのだ。

 たとえば高校生が大学へ進学する時だって、東京だとか京都だとかの大学へ進むことがないわけではないが、圧倒的に多いのは名古屋にある大学へ進むことである。名古屋大学(これを名古屋人はメー大と略す)を頂点とする大学群があって、そこへ進むのがノーマルな名古屋人なのである。

 そして社会人になる時も、ほとんどが名古屋にある企業に勤める。名古屋から出て働こう、という発想はあまりない。
 名古屋の人と結婚して、名古屋に住み、名古屋に骨を埋めるのだ。それが多くの名古屋人である。

 だから私のような人間は見逃しにできない異端者なのだ。私は、大学までは名古屋圏であったが、そこを卒業してから東京に出て働いた。そして、もう46年も東京に住んでいるのである。名古屋人から見ればとてもおかしな奴、ということになるであろう。

 私にしてみれば、小説家になりたいという夢があったので、それにはチャンスの多い東京へ出ねば、ということだったのだが。

 ひとつ面白いことがある。私が名古屋で講演などをする時、妻を伴って行くことがあるのだ。すると主催者などの名古屋の人が、必ずきくのである。

「奥さんは、どちらの人ですか」

 と。それに対して妻が、

「東京生まれの東京育ちです」

 と答えると、相手はなんとも困ったような顔をするのだ。それでは話のしようもないなあという顔になり、私をチラリと見て、そこまで魂を売ってしまったのか、というような表情をする。

 しかしそこで妻が、

「でも、祖父も祖母も三河の出身でしたし、私の母は名古屋出身です」

 と言うと、急に、それならばまあ許すか、という顔になるのだ。

「小学生の頃は、その頃母方の祖父母が住んでいたのが大高町だったので、帰省する母について、私も夏休みは大高町ですごしたんです」

 と妻がいうと、それならば人として認めるという空気になるのだ。

 名古屋の人にとって、それほどまでに名古屋は特別なところなのだ。

 そして名古屋は閉ざされている。関東でもなく、関西でもなく、第三の地域として完結しているのだ。関東とも関西とも関わりを持っていない。

 名古屋が関東か関西かについて、私は面白い体験をしている。ある時、東京の人と話していたら、その人がこう言うのだ。

「名古屋は関西ですよね」

 そして、またある時、大阪の人にはこう言われたのだ。

「名古屋は関東ですわな」

 つまり両方から、名古屋はこっちではないと言われているわけだ。まるで、名古屋を仲間に入れることはできませんよ、と言われているようなものだ。

 だが、違っているのだ。名古屋はそのどちらでもなく、完結した第三の地域であり、名古屋圏とでも呼ぶしかないのである。

名古屋ビジネスや尾張藩のざっくりとした歴史、名古屋めしのルーツなどは『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)に詳しい。

文/清水義範

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