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「識字率」と「周辺」。エマニュエル・トッドの理解を深める2つのキーワード

7/16(日) 9:00配信

BEST TIMES

英国のEU離脱など、数々の予言を的中させてきたエマニュエル・トッド理論。そのエッセンスとはいったいどこにあるのだろうか。新刊『エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層』を上梓した鹿島茂氏がやさしくときほぐす。

全ては識字率で変わる

 1990年に『新ヨーロッパ大全』が出たころに、その分類の仕方に触れて得心することが多かった。ただそのころはまだ「そういう方法もあるかな」程度だったのが、2002年に『帝国以後』という本で彼は従来とは違う普遍軸を導入したんです。「全ては識字率で変わる」という軸ですね。

 男性の場合、特に18歳から30歳までの識字率が50%を越えると社会は非常に不安定になり、逆に女子の識字率が50%を越えると非常に安定して若者が騒がなくなるんです。それを『帝国以後』ではイランやイラクの分析に主に応用していて、アメリカが湾岸戦争以後イラクやアフガンに戦争を仕かけることがいかに理に適っていないかが書いてある。「世俗化が進んで女子の識字率が上がっているのだから、放っておけばよいのに。突入して大破壊する必要はない」とね。

 それぞれに国や地域は違うという決定軸・区別軸が、識字率を用いた普遍軸を応用することで素晴らしく分析機能が高まった。

“周辺”から歴史の不明な部分を探ることができる

  そしてさらに最近、トッドはまた大きく転換したんです。それはトッドが分析した家族類型の分布図を読み込んだ言語学の泰斗であるローラン・サガールが「中央ではなく、周辺、辺境により本質的で起源的なものが残っている。これは言語地理学では当たり前のこと」と批判したことがきっかけです。

 こうしてトッドは、地理学への歩み寄りを強め最新作『家族システムの起源』を書きました。そこでは、「ユーラシア大陸の周縁部に残っている家族形態の方がより古い。つまり直系家族や核家族(絶対核家族、平等主義核家族)は共同体家族より古い形態である」と延べ、持論へと当てはめています。 

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