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素人が他人の嘘を見抜く精度はたった54%!ヤマ勘で人を疑うべからず

7/16(日) 15:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 こんにちは。微表情研究者の清水建二です。

 本日は微表情学の番外編、ウソのサインのウソ・ホントをお送りいたします。

 唐突ですが、みなさんはウソを見抜くことができますか?ウソを見抜くのは得意ですか?「今、ウソをついたな。」と思うとき、何を感じて判断しますか?

 ウソつきは…目が泳ぐ、瞬きが増える、顔や鼻に触る、声のピッチが高くなる、回答がためらいがちになる等々、そんなサインを挙げられたかも知れません。

 ウソのサインは、100年以上にわたって世界中の心理学者らによって探究されています。純粋な学問的探究心からだけでなく、犯罪捜査などの実用的な要請に応じて数多くの研究がなされ、数多くの知見が重ねられています。

 今回は、こうした知見の中から判明したウソのサインのウソ・ホントを表情やボディーランゲージといった非言語サインに焦点を当てて紹介しようと思います。

◆真のウソのサインとは?

 冒頭に挙げたサインのうち、真にウソのサインだと実証されているサインは、声のピッチが高くなる、回答がためらいがちになる、だけです。他にもウソのサインとしてこれまで実証されているものとして、手振り・身振りが少なくなる、瞬きが少なくなる、口を一文字にする、特定の微表情が起こる、というものがあります。

 意外に世間で耳にするウソのサインは、真のウソのサインではないことが多々あるのです。これはなぜでしょうか?真のウソのサインでもないのにウソのサインと誤解してしまうのかを一言で言ってしまえば、それは概ね、緊張のサインをウソのサインと取り違えてしまうから、です。

 確かにウソをつくときというのは大抵、「自分のウソがバレてしまうんじゃないだろうか?」と緊張します。一方で、本当のことを話していても「自分の話が信じてもらえないのじゃないだろうか?」と緊張します。

 こうした中で、ウソの有無を判定しようとする側に「この人のウソを必ず見抜こう」というモチベーションがあると、会話も詰問調になり、相手の緊張度は高まり、緊張のサインは増加します。そして判定者はその緊張のサインをウソのサインに変換してしまい、間違った判定をしてしまうのです。

 ところで、私たちのウソを見抜く精度はどれくらいあると思いますか?実は、54%ということがわかっています。ウソか本当かはヤマ勘でも50%の確率で言い当てることが出来るため、私たちの能力はほぼチャンスレベルということになります(ちなみに表情分析の第一人者であるポール・エクマン博士のウソ検知の精度は90%だと言われています)。

 ほぼチャンスレベルの精度にも関わらず、緊張のサインをウソのサインだと取り違えてしまっては、状況は悪化するばかりでしょう。

◆正しく判定するにはバイアスをかけず、戦略的な質問を

 それでは、誤判定をしないようにするにはどうしたらよいのでしょうか?

 回答としては、緊張のサインとウソのサインとを正しく分け、極力バイアスがかからないように人を観て、戦略的に質問をする、ということです。

 ウソのサインと間違えられやすいよくある緊張のサインは、目が泳ぐ、瞬きが増える、顔や鼻に触るです。これらのサインは正直者にもウソつきにも緊張に伴って現れるため、これらのサインをウソのサインだということは出来ません。

 本当のウソのサインは、声のピッチが高くなる、回答がためらいがちになる、手振り・身振りが少なくなる、瞬きが少なくなる、口を一文字にする、特定の微表情が起こる、です。これらのサインはウソをつくことにより生じる特定の感情(主に恐怖・軽蔑・嫌悪・罪悪感・幸福)の現れの場合とウソを繕うことによって頭がいっぱいいっぱいになることの現れの場合とがあります。

 しかし、ウソのサインと言っても、それがウソをついているときに明瞭に起こるわけではありません。ウソと真実を話しているときを比べ注意深く観察すると、ウソのサインがウソをついているときに微妙に生じているのがわかる、そんな程度だと考えて下さい。ピノキオの鼻のようなウソのサインはないのです。

 ウソを見抜くには、高レベルの集中と観察力が必要なのです。

 こうした流れの中、受動的に集中してウソのサインの有無を観察するだけでなく、積極的に戦略的な質問をすることでウソのサインをより際立たせようとする研究や実務的な試みが2000年以降注目されています。

 例えば、時系列がある出来事を逆に辿って答えてもらう逆質問法などがあります。正直者は「あるがまま」を語りますが、ウソつきは通常逆順でのアリバイは用意していないため、こうした想定外の質問を前にウソのサインをより多く出してしまうのです。

 このような戦略的な質問を駆使することでウソ検知率の精度を80%まで高められることがわかっています。

 最後に注意です。このような科学的事実がわかっていますが、ゆめゆめ訓練なしにウソ検知をしようとしないで下さい。実践なしの知識は、逆にウソ検知精度を下げてしまいます。

参考文献

DePaulo, B. M., Lindsay, J. J., Malone, B. E., Muhlenbruck, L., Charlton, K., & Cooper, H. (2003). Cues to deception. Psychological Bulletin, 129, 74-118.

Frank, M.G., Hurley, C.M., Kang, S., Pazian, M., & Ekman, P. (2011). Detecting deception in high stakes situation: I. The face. Manuscript under review.

Matsumoto, D., Hwang, H.S., Skinner, L., & Frank, M. G. (2011). Evaluating Truthfulness and Detecting Deception: New Tools to Aid Investigators. FBI Law Enforcement Bulletin, 80, 1-8.

Vrij, A. (2008). Detecting lies and deceit: Pitfalls and opportunities. Chichester, UK: John Wiley & Sons, Ltd.

<文・清水建二>

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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最終更新:7/16(日) 15:50
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