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50万円から参入可能。[貸し会議室ビジネス]がアツいワケ

7/16(日) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 新宿駅西口からほど近い、ビルの1室。広さ17平方メートルの室内には2台の長机、6脚の椅子、ホワイトボードが設置されていた。

「会議や研修目的での利用が多いですが、人狼やボードゲームの会場、インターネットラジオの収録といった変わった需要もあります」

 備品を補充しながら、こう説明してくれたのが副業で貸し会議室を運営する、ハンドルネーム「ピーナッツ大家」ことまさおくん36歳だ。安い時間帯だと1時間500円で利用できるこの会議室、ワンコインという手軽さが利用者に受け、毎日何かしらの予約が入っているという。

 普段は通信関連の会社で営業マンとして働くまさおくんが、サイドビジネスとして貸し会議室に取り組むきっかけは、自身の実体験に基づくものだ。

「営業で外回りをしていて、出先で打ち合わせスペースを確保するのに苦労していました。カフェは周りがうるさすぎたり、社外秘の話題を扱えなかったりと使い勝手が悪い。ルノアールの会議室を借りたりもしましたが、費用がかさみがちです。だから、価格が安い会議室には潜在需要があるはずだと考えました」

 従来の貸し会議室と比べ、同じ床面積なら半額程度で安価に利用できる、シェアリングエコノミー型の貸し会議室が、増加の一途を辿っている。

 低価格を最大の武器に、スマホによるマッチングも普及に一役買っている格好だ。国内最大級の貸し会議室・貸しスペースマッチングサービスを運営する「スペイシー」によると、同社が掲載する貸会議室数は2300室、累計の利用者は80万人を突破しており、月に10近い伸びを見せているという。

 サラリーマンが副業としてはじめるケースも多く、前出のまさおくんも小さな1室からはじめて、現在は都内で7室の貸し会議室を運営、月の手残り額は30~40万円ほどになる。

◆小資本と回収の速さが魅力

 サラリーマン業の傍ら、空き家再生事業にも取り組むまさおくん。

 他の不動産ビジネスと比較して、貸し会議室の魅力をこう語る。

「空き家再生事業の回収は早くても3年はかかります。最初にまとまったお金を投じた後は、資金の回復を待つ必要があり、簡単に規模を拡大できません。金融機関から借り入れするにしても金額の上限もあります。

 その点、貸し会議室は月によって売上の波はありますが、全体で均すと年間利回り80%のビジネスになっています。部屋によっては100%超、つまり初期投資を1年で回収し終えている部屋もあります。

 小資本で参入できて、不動産投資では難しい回収の速さが魅力です。もちろん、戸建賃貸にも安定入居などのメリットはありますが」

◆最初の物件探しはローラー作戦で

 順調に室数を増やしているまさおくんの貸し会議室ビジネス。最初の1室はどのようにして開業に至ったのか。

「新宿エリアの不動産会社に片っ端から電話して、『貸し会議室がやりたいので部屋を借りたい』とストレートに伝えました。

 業者さんの反応は、貸し会議室ビジネスを知ってるかどうかで大きく変わります。『転貸借』、つまり又貸しをするので、基本的に難色を示されることが多いです。一般的に知名度のある仲介会社では、まず相手にしてくれませんでした。

 それでもめげずに電話しまくると、やがて話を聞いてくれる会社が見つかりました。まあ、打率にして1割以下です」

 最初に苦労は伴うものの、1社見つかれば、そこから継続して物件を紹介してもらえるようになるという。

◆物件選びのポイントとは

 まさおくんの物件選びポイントは、立地に尽きると力説する。

「とにかく、駅からの近さにこだわります。スペイシーに募集を掲載する時に徒歩◯分と表示されるので重要な要素です。建物の築年数にはこだわりません。あとはアクセスのわかりやすさも大切です。近くに有名店があったり、1Fが路面店だと利用者に見つけてもらいやすい。最寄りにコンビニがあればアピールポイントになります。飲み物の買い出しや、会議室にコピー機がないので、コンビニのコピーが重宝される場合があります」

 また、同じ広さの物件でも、住居と事務所では水回りの違いから、有効面積が異なるのも気をつけるべき点として指摘。開業場所の選定にあたって、大手の動向も参考にしている。

「マーケティングの観点では、近隣で大手が運営する貸会議室が参考になります。

 彼らはマーケティングにマーケティングを重ねて場所や料金を決定しています。その近くで半額以下で利用できる会議室を開業すれば、まず赤字になることはありません」

 実際、まさおくんの貸し会議室が入居するビルは、通りを挟んだ向かいに、貸し会議室ビジネスの大手、A社が看板を出している。同等の広さである15平方メートルの会議室が、大手では1時間3000円の料金が設定されている。

「大手の会議室には、受付での有人対応というメリットがありますが、それによって会議の質や、セミナー受講者の満足度が上がるものではありません。だからお客さんに認知さえしてもらえれば、よりリーズナブルなほうを選んでくれます」

 大資本に追従する小判ザメ的な出店戦略が奏功しているようだ。

 このほか、2室め、3室めの開業を同じエリアにすることで、清掃や管理の手間を集約させる工夫も行っている。

 これから貸し会議室ビジネスを始めたい人は、十分なリサーチに加えて、一度会議室を借りてみるのもおすすめだという。

「自分で借りて、駅からのアクセスや、置かれている備品など、先駆者が行った工夫や、その結果を肌で感じてみるのが大切だと思います」

◆気になる開業費用の総額内訳は?

 小資本でも参入できる点が魅力の貸し会議室ビジネス。実際に開業するどどれくらいの費用がかかるものなのか。

「私の場合、最初の1室にかけた投資額は50万円でした。内訳は、敷金3ヶ月分に前家賃と保証料をプラスして40万円くらい、残りの10万円でホワイトボード、机、椅子といった備品、ペン、トイレットペーパー、消臭剤などの消耗品を揃えました」

 ただし、これはあくまで小さな部屋で開業した場合の話なので、もう少し広い部屋であれば、「100万円程度見ておくと安心」とのことだ。

 高額なイメージがあるプロジェクターについては、

「小さい会議室に限って言えば、プロジェクターやWi-Fiは必須ではありません。似た広さの会議室を2室運営していて、片方はプロジェクター、Wi-Fi完備、もう片方は未導入のままなのですが、売り上げに大きな差はありません」

 と、必ずしも必要ではないとの考えだ。

 実際、利用者の用途内訳は、会議、研修が6割くらいで、残り4割は、アルバイト面接、英会話マンツーマンレッスン、タロット占い、インターネットラジオ収録、ヨガレッスン、手品教室、ボードゲーム大会と多岐にわたる。プロジェクターを必要としない利用実態の様子が伺える。

 まさおくんが50万円を投じて開業した貸し会議室1号は、初月はギリギリ黒字。3ヶ月めから稼働が安定して、以降毎月4~6万円程度が手元に残るという。初期投資額は1年で回収済みの計算だ。集客にはスペイシーを利用している。

◆リピーターの確保が安定のカギ

 利用価格の安さと、スマホで予約できる手軽さを体験することでリピーターとなる顧客も少なくない。

「うちでは利用者の6割くらいがリピーターです。月はじめになると、まとめて予約を入れてくれるのでありがたい存在です。なかには来年まで予約を入れてくれている人もいます。売上予測が立つので助かってます」

◆参入障壁の低さから、民泊撤退ホストも注目

 これまでに開業した7室の会議室は、いずれも順調であることから、今後も部屋数を増やしていく考えのまさおくん。

「大手の貸し会議室に、わざわざ高い料金を払わなくていい事実を知らない人が、世の中にはまだまだたくさんいます。今後もニーズは増えると考えます」

 一方で、慎重な見方も示す。

「参入障壁が低いビジネスなので、いずれ飽和する時が来ます。しかし、それはまだ先のこと。それまではまだチャンスがあると思っています」

 民泊で悩みの種となる、法的リスクや、管理の煩わしさといった問題が、貸し会議室ビジネスでは一切ないことから、民泊撤退ホストが転身して参入するケースも増えている。

 貸し会議室ビジネスの活況はしばらく続きそうだ。

まさおくん◯千葉県在住のサラリーマン大家。36歳。副業として空き家再生事業を手がけるほか、貸し会議室にも取り組む。貸し会議室開業の相談にも対応する。その他、資産形成のノウハウは、公式ブログ「ピーナッツ大家の『DIOで空家再生しよう!』」、facebookで発信中

<取材・文/栗林 篤>

【栗林篤】

元IT企業のサラリーマン。年収300万円以下生活の傍ら、株式投資と不動産投資をはじめて、セミリタイアしてフリーライターに。優待株100超を保有、区分1貸家5アパート1を運用。公式ブログ「節約×株主優待×不動産投資でセミリタイアしたブログ 」更新中。著書『サラリーマンのままで副業1000万円』発売中

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最終更新:7/16(日) 14:56
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