ここから本文です

“出玉5万円分以下”のパチンコ規制は依存症対策には繋がらない

7/17(月) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 7月11日、警察庁がHP上で、パチンコ・パチスロ規制に関する規則改正案に対するパブリックコメントの募集を開始した。警察庁が何らかの規則を変更する際には、警察庁HP上で一般の意見を募り、その後に晴れて規則は改正される。

 今回、警察庁が発表した「パチンコ規制」は、業界内外に大きな波紋を呼んでいる。

 そもそも警察庁は、政府がカジノ実施法に向け、ギャンブル等依存症対策法案の検討を始めるなか、パチンコの射幸性の抑制を有効な依存症対策として捉えてきた。今回の規則の改正により、パチンコ・パチスロの出玉は、現行の3分の2まで削られるほか、遊技機の事前試験の方法にも手を加え、出玉の波が緩やかになるよう調整をした。

 この「パチンコ規制」は全国紙に大々的に報じられ、業界関連のメディアでは連日大きく特集等が組まれている。またネット上でも、パチンコのファン層、アンチ層問わず、様々な意見が出され喧々諤々の様相を呈しているが、その多くは「パチンコの終焉」、「パチンコ、終わりの始まり」のような論調だ。

 果たして、今回の「パチンコ規制」は、業界にどのような影響を及ぼすのか。

◆「パチンコ規制」は、それほどのインパクトなのか?

 まずもって、今回の「パチンコ規制」報道により、あたかも今すぐに遊技機のスペックが大きくダウンするような報道がなされているが、それに対しては否定しておきたい。新しい規則の施行は、平成30年2月1日であるし、それ以降の遊技機の事前試験(保通協試験)が新しい規則に則って行われるということ。よって、最短でも新しい基準の遊技機は、平成30年4月以降にホールにお目見えとなる。

 また現在設置されている遊技機についても、即日撤去という形ではなく、検定期間・認定期間(原則として遊技機の使用が認められている期間)は、そのままホールへの設置が許されている。この期間は最大で3年間であり、いわば2年から3年の時間をかけ、ホール内の遊技機が入れ替わっていく。

 そして今回、大きく注目されている「出玉規制」について考えてみる。

 例えば、パチンコ機の大当たり時の最大出玉を2400玉から1500玉に引き下げたこと。

 あくまで最大値の話をすれば、3分の2に引き下げられたことになるが、現在パチンコホールに設置されているパチンコ遊技機のうち、一番稼働が良いと言われている「CRスーパー海物語IN沖縄4」や「CRぱちんこ必殺仕事人V」の2機種の大当たり出玉は1400玉である。

 確かに大当たり出玉2400玉を一番のウリにしている「CR北斗の拳7」のような遊技機は今後設置出来なくなるとしても、ことパチンコにおいては、遊技機試験方法の変更により、一部に影響があるとしても、実はそれほど大きなインパクトは無いのではないかと推測できる。

◆「パチンコ規制」は依存症対策に繋がるのか?

 一方、パチスロへの影響は深刻だと言える。パチスロの花形といえるAT・ART機に関しては、以前からその射幸性が問題視されており、メーカー同士の内部ルールで機械仕様を大きく変更したうえに、更なる規制である。今後は、現在ホールに設置されている5.5号機(純増2.0枚)や、10月以降に設置される5.9号機(MAX3000枚規制)よりも、出玉性能は大きく下回るとされている。

 また年配層やサラリーマン層から人気の高いジャグラーシリーズ等のAタイプも、今回の規制により大きな影響を受ける。現在は1回の大当たりで約310枚程度のメダルの獲得が出来るが、新たな規制に則れば、大当たり1回240枚~250枚程度にまで獲得メダル数が減る。

 AT・ART機にせよ、Aタイプ機にせよ、パチスロメーカー然り、パチスロファン然り、今回の規制により大きな影響を受けるのは必至である。

 今回の規則改正のその他の内容については、本稿での言及はしないが、別の角度から1点論じてみたいと思う。それは「果たして、今回の規制はギャンブル依存症に資するのか?」という点。

 警察庁が今回新たに規則に追加した項目に、遊技機試験における「4時間の出玉量」というものがある。当初警察庁は、4時間で5万円相当(あくまで仮で金額換算した場合)の出玉を下回ることを公言しており、この根拠として、パチンコ依存に悩む8割の人たちが、月に5万円以上を使用しており、その平均遊技時間は4時間程度というのを挙げていた。

 これは、パチンコ・パチスロ依存に悩む人たちの電話相談機関である、特定NPO法人リカバリーサポート・ネットワークの報告書を参考にしたとされているが、当のリカバリーサポート・ネットワーク代表である西村直之氏は、このデータは「遊技性能の規制根拠になるものではない」、「5万円や4時間等の具体的な数値設定は依存リスクの軽減にはつながると報告していない」としている。

 また一般社団法人ギャンブル依存症を考える会の代表である田中紀子氏もブログで、「パチンコ出玉規制はギャンブル依存症対策にはならないです」と言っており、過去にパチンコ依存症であった知人たち8名に緊急のアンケートと行い、その結果を報告している。結果は、8人ともが「依存症対策にならない!」というもの。

 秋の臨時国会、もしくは年明けの通常国会において「カジノ実施法」が可決される予定である(昨年末のカジノ法案は、実施法制定に向けた「推進法」)。

 その制定にさきがけ、「ギャンブル等依存症対策法案」が審議され可決される。国会の場において、カジノや依存症関連の問題が審議されれば、必ず「パチンコ」が槍玉に上がる。

 今回の「パチンコ規制」は、国会の場で「パチンコ」が標的にされた際に(必ずされる)、監督官庁である警察庁が、十分に抗弁し得る「アリバイ」となるだろう。しかし一方で、本当にパチンコ依存問題に悩む本人や家族の助けになるルール作りとしての実効性には疑義もある。

 行政、パチンコ業界、ユーザー、依存問題に悩む人々。そのすべての人々が、カジノに翻弄されている。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:7/17(月) 13:22
HARBOR BUSINESS Online