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「よろしくお願いします」が英訳できない理由

7/17(月) 15:00配信

東洋経済オンライン

浄土真宗本願寺派僧侶でありながら、通訳や翻訳も手掛ける大來尚順氏による連載『訳せない日本語~日本人の言葉と心~』。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボによりお届けする。

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■訳しにくい言葉

 日常生活において、よく口にする言葉の一つに「よろしくお願いします」があります。人に何かをお願いする時や挨拶をする時、また今日ではメールの文末には決まり文句のように使用している方も少なくないと思います。私自身、無意識によく口から出てしまう言葉であり、また周囲の方からよく受け取る言葉でもあります。

 よく考えてみると、私にとってこの「よろしくお願いします」というひと言は、アメリカで生活しているときに、一番英語にできずに困ったフレーズかもしれません。渡米した当初、これからお世話になる方をはじめ、さまざまな方にご挨拶をさせて頂く日々が続きました。その都度「よろしくお願いします」と伝えたいと思うのですが、どう英語で伝えれば良いかわからず、ぎこちない表現の英語を言った後に、握手しながら頭を下げるというおかしな動きをしていたことを思い出します。

 しかし、この動作はアメリカで生活して2年、3年経っても変わることはありませんでした。お恥ずかしながら「よろしくお願いします」のしっくりくる英語表現を習得することができなかったのです。最終的には諦めて、にこりと笑って握手し、心の中で「よろしくお願いします」とい呟くようにしていました。

 また、英語でメールを作成しているときも、この言葉をどのように表現すればよいか悩みました。日本語のメールでは、必ず文末に「よろしくお願いします」の一文を添えて送信していたため、英語のメールを作成するときも、どうしても文末に「よろしくお願いします」を添えたくて、英訳を試みるのですが、どうも上手くいきませんでした。

 ネイティブの友人などに相談したところ、メールを送信する相手のとの関係によりますが、「敬具」の意味で「Sincerely」「Yours truly」「Regards」や気楽な結びの言葉として「Best wishes」(幸あれ)「Take care」(じゃあね)などがあると知りました。しかし、「Thank you」であればどんなときにも無難だということを聞いて以来、私の中では「Thank you」が「よろしくお願いします」の英訳だと自分に言い聞かせて使っていました。

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