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先延ばしグセを解消する5つの科学的方法

7/18(火) 6:40配信

@DIME

 一説によれば、5人に1人は仕事や課題などを先延ばしにする傾向を備えているという。つまりは“先延ばしグセ”で、当然ながらネガティブなイメージもつきまとうが、ある種の人々にいわせれば土壇場で生まれる“火事場の馬鹿力”を発揮するために意識的に先延ばしにしているとも……。しかし実際のところ先延ばしグセは本業の業績に関係しているのだろうか。

■学業成績とレポート提出状況の関連

 欧米の高等教育では総じて多くの宿題やレポート提出が課されているといわれているが、もちろんそれぞれの課題には提出期限が設けられている。学生の中にはいつも期限ギリギリで提出したり場合によっては期限に間に合わず、何度も教授に泣きついているという者もいる(!?)。そこでこうした“先延ばしグセ”のある学生の学業成績を探った研究が報告されている。

 ギリギリまで考えて課題を仕上げる学生はむしろ優秀なのではないかという考えもあるだろう。しかし実際のところはどうなっているのか。この度、ニュージーランドのIT(ICT)専攻の学生186人の学業成績と課題提出状況を分析した研究をユニバーサル・カレッジ・オブ・ラーニングのカウター・タニ氏が学術誌「Cyber Behavior, Psychology and Learning」で発表している。

 1997年の研究では課題提出が遅い大学生は学業成績が低いことが指摘されているのだが、今回はICT(Information and Communication Technology)専攻の学生に限定してその学業成績とレポートの提出状況の関連を探ったのだ。

 結果はやはり、提出に要した時間と学業成績に強い関連があることが示唆されるものになった。課題を早期に提出する学生は、期限日ギリギリや期限日に間に合わなかった学生よりも学業成績が良い傾向がはっきりと浮き彫りになったのだ。残念ながら“火事場の馬鹿力”を期待できる効果は特になかったということになる。

 提出期限を設定することに対して疑問をあげる声もあるのだが、これまでのいくつかの研究で提出期限を設けることは、学生が課題に取り組む動機づけになっていることが確かめられている。また2010年の研究では、日数の幅を持ったフレキシブルな提出期限を設定することが学業に好影響を与えることが指摘されている。しかしそれは課業の内容次第であり、タイトな提出期限にならざるを得ないケースもあるだろう。ともあれ大学受験だけでなく“今でしょ!”というのがその後もずっと正しい行動方針であるようだ。

■先延ばしグセを解消する5つの科学的方法

 これまでしたことのない行動や思考は好奇心に火を着けるものであると同時にストレスにもなり得る。そしてストレスになるほうへと振れてしまった時、ちょっとした“現実逃避”としてしばらくの間、手近な娯楽に時間を費やし本来の作業を先延ばしにしてしまう。これが学業の妨げになっていることは言うまでもない。

 いわば学業の敵に認定されてしまった先延ばしグセだが、多くの学生を抱えるロンドン最大の高等教育機関であるユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のウェブサイトでは、サイエンスに裏打ちされた先延ばしグセ解消の方法を5つ紹介している。

1. 何が先延ばしグセの引き金になっているのかを特定する

 何が先延ばしに誘うストレスになっているのかを注意深く検討して特定する。例えば現在多くの人がスマホやPCでネットに常時接続しているが、ネットに接続しなくとも可能な作業であれば繋がないほうがよいし、身の回りの環境から気を紛らわせるモノをできるだけ排除する。

2. 自分に“ご褒美”をあげる

 習慣は報酬系システムによって形成されている。したがって課題と何らかの“ご褒美”を結びつけることで、新たな習慣を形成することができる。先延ばしグセを克服して課題を達成した際にはぜひなんでもよいので自分に“ご褒美”をあげてみよう。そして先延ばしグセに負けてしまった時には“ご褒美”はオアズケにする。これを徹底することで、新たな望ましい習慣を獲得することができる。

3. 1日単位、週単位のTo Doリストを作成する

 1日単位と1週間単位の行動リストを殴り書きでもよいのでザッと書き記してみるだけで先延ばしを防止できる。リストがないままだと作業中にもその後の仕事の段取りを考えてしまい、脳のリソースのすべてを作業へ向けられなくなるのだ。そしてうまくいった時のリストを残しておき、作業の順番と時間配分などを検討することでさらに有効な行動リストを作成できる。

4. “今”に集中する

 語学の習得など長期的な学習が必要な科目は他にも増して先延ばしグセがつきやすくなる。語学をマスターした暁の自分を想定していろんなことを考えてしまいやすくなるが、考え過ぎるほど現実とのギャップを痛感してしまい学習の妨げになる。今やる学習だけに集中して先のことはあまり考えないようにしたい。

5. とにかく初めてしまう

 余計なことは考えずとりあえず課題に着手する。最近の研究では、運動を億劫に感じていてもともかくはじめてしまえば、億劫な気持ちが消え去り、本来自分がしたかったことなのだと実感できるということだ。書き物をする場合でもはじめから全体像ばかりを考えるのではなく、とりあえず思いついたことを箇条書きするなどしてみれば徐々に考えがまとまってくる。

 将来へ向けた“ビッグピクチャー”を抱くことも大切だが、そのためには今やるべきことに集中することが肝心であるということだろうか。

■先延ばしグセと優れた創造性の関係は?

 一方的に悪者にされている先延ばしグセだが、仕事や学業についてはともかく、実は話がクリエイティブな分野に及んだ場合に限っては、むしろ先延ばしが創造力を豊かにする可能性があるという説もある。

 米・ウィスコンシン大学のジヘ・シン教授は業務内容が異なる2つの企業の社員の仕事ぶりと上司の評価を調査した。特にその社員の仕事の早さと、上司が認めるその社員の創造性と革新性との関連を探ったのだ。

 分析の結果、なんと最も仕事が遅い、つまり先延ばしグセのある社員が上司から最も創造性に優れているという評価を受けていることがわかったのだ。

 ひょっとすると先延ばしグセと優れた創造性に関係があるのかもしれないと考えたシン教授は、さらに別の実験を行なった。実験参加者にビジネスのアイディアを考え出してもらったのだが、Aグループにはそのままの状態で回答してもらった一方、Bグループは5分間ビデオゲーム(『マインスイーパ』や『ソリティア』など)をプレイしてもらった後にアイディアを出してもらったのだ。

 提出されたアイディアを検証したところ、直前にゲームをプレイしたBグループのほうがクリエイティビティが28%高いことが導き出されたのである。つまり作業を5分間先延ばしにしたグループのほうが創造性が高くなったのだ。仕事の内容にもよりけりだが、“仕事が早い”ことは必ずしも上司の高評価を受けていないということにもなる。

 この研究に先駆けて、著書『Originals: How non-conformists change the world』で先延ばしグセのある者の思考はよりクリエイティブであることを指摘したアダム・グラント教授は、アフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者であったマーチン・ルーサー・キング牧師や、イタリアのルネサンス期を代表する天才芸術家であるレオナルド・ダ・ヴィンチにも先延ばしグセがあったことを主張している。

「私には夢がある(I have a dream)」で有名なキング牧師の名スピーチだが、元になるスピーチ原稿はだいぶ前から準備してあったものの、当日の演説の数分前まで本人によって加筆修正が加えられてあのような表現豊かな名演説になった経緯があるということだ。

 まだダ・ヴィンチはあの名作『モナ・リザ』を少しずつ描き進めては中断し、考え直して修正を加えながら完成を延々と先延ばしにし、なんと描きはじめて16年目にようやく出来上がったというウラ話を紹介している。

 もちろん、時間を惜しみなくふんだんに使えるということはそれだけ恵まれた環境にあるとも言えるのだが、先延ばしグセとは無縁な“せっかち”な傾向がある向きには一考に価する話題かもしれない。しかし社会生活を送る上で何事も先延ばしにしてあまりいいことはなさそうなので、先延ばしにしていいいのはクリエイティブ分野だけの例外と考えたほうがよさそうだがいかがだろうか。

文/仲田しんじ

@DIME編集部

最終更新:7/18(火) 6:40
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