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浦和・関根貴大、海外挑戦という夢。ドルト戦でより鮮明に。いま追い求める3つの標的

7/18(火) 11:56配信

フットボールチャンネル

 浦和レッズが誇るリーグ屈指のドリブラー、MF関根貴大が抱き続ける海外挑戦の夢をより鮮明に膨らませた。ブンデスリーガの強豪ボルシア・ドルトムントと埼玉スタジアムで対峙した、15日のJリーグワールドチャレンジ2017で先発出場。左右の両ワイドから鋭い攻撃を仕掛けた22歳の若武者は、始動&来日直後のドルトムントが万全の状態ではないことを踏まえたうえで、それでも百戦錬磨の猛者たちに冷や汗をかかせた自身の武器をさらに磨いていく決意を新たにした。(取材・文:藤江直人)

●「予定ではもう海外に行くつもりでいたので」

 海外の舞台へ挑戦する夢を、浦和レッズのMF関根貴大は隠そうとしない。たとえば、リーグ戦における今シーズン初ゴールを決めた、4月22日の北海道コンサドーレ札幌戦後にこんな言葉を残している。

「予定ではもう海外に行くつもりでいたので。なので、ちょっと遅れ気味ですね」

 おりしも、コンサドーレ戦の3日前に22歳になったばかりだった。浦和レッズユースから昇格して4年目。大学に進学していれば4年生になる2017シーズンを、節目として強く意識していたのだろう。

 来シーズンになれば、大学へ進んだ同世代の選手がJリーグ入りしてくる。彼らとの差を鮮明にするうえでも、プロの世界で積み重ねてきたものを次なるステージへぶつけたいと考えても不思議ではない。

「ひとつの区切りとして、大学4年になる年じゃないですか。そういうこともあって、海外でやってみたいというのはありますね。自分がこれまでやってきたことが、どれだけ通じるかもわかると思うので」

 今夏の移籍マーケットではしかし、夢はかないそうにない。それでも、世界のレベルを肌で感じ取れる機会を得られた。現時点における収穫や課題を、さらなる成長への糧にできる喜びも味わえた。

 ブンデスリーガの強豪ボルシア・ドルトムントを埼玉スタジアムに迎えた、15日のJリーグワールドチャレンジ2017。後半19分まで64分間プレーした試合後の取材エリアで、関根にこんな質問が飛んだ。

「こういう相手と、日常的に対戦したいと思いますか」

 日常的とは、要は海外へ移籍したいと思っているのかということ。答えは決まっていた。大勢のメディアを前にした関根は胸を張り、よどみのない口調でごく近い未来の夢を語っている。

「自分が海外にいけば、それ(日常的に対戦)はできること。海外移籍は自分のなかで目標にしていることなので、今日対戦してみて、あらためてそういう舞台に立ちたいと思いました」

 今シーズンの関根は、「二刀流」となるプレースタイルをより鮮明に使い分けている。右ワイドで起用されたときは、右タッチライン際を縦へ抜ける意識をより強くもつようにしている。

「相手の裏を取る動きというか、ドリブルで縦に仕掛けられるプレーを主に心がけています。基本的には右のほうが、より高い位置を取れるので」

●ドイツ代表クラスの選手とのマッチアップ

 ドルトムント戦は右ワイドで先発した。迎えた前半22分。DF森脇良太が左ワイドの宇賀神友弥へ、ピッチの幅を目いっぱい使ったサイドチェンジのパスを通して相手を左にスライドさせる。

 MF武藤雄樹と細かくパスを交換した宇賀神から、ボールを受けたDF槙野智章がすかさず右へ再びサイドチェンジを試みる。ターゲットは右タッチラインぎりぎりにポジションを取っていた関根だった。

 左サイドバックのマルセル・シュメルツァーが、慌てて間合いを詰めてくる。ドイツ代表として16試合に出場している、29歳のキャプテンとのマッチアップ。関根は心を躍らせていた。

「自分がガンガン仕掛けていけば何か課題も見つかるという思いで、今日はプレーしました。(シュメルツァーは)すごく落ち着いていたし、プレーのスピードもある選手なので」

 ペナルティーエリアのすぐ右側で展開された駆け引き。小さなフェイントを一度入れた関根は次の瞬間、迷うことなく縦へ抜けだす。ゴールラインぎりぎりの場所から、グラウンダーのクロスを入れた。

 必死に追走してきたシュメルツァーの右足にわずかに触れ、勢いをやや殺されたクロスに、ニアサイドに詰めていた武藤が右足をヒットさせる。シュートは無情にも、右ポストに弾かれてしまった。

 ゴールこそならなかったが、決定機を作られた残像がシュメルツァーの脳裏に刻まれる。こうなると、駆け引きで関根が優位に立つ。わずか十数秒後。DF遠藤航が再び関根に縦パスを通した。

 パスを受けた場所はほぼ同じ。再び対峙するシュメルツァーは縦を切り、クリスティアン・プリシッチ、ヌリ・シャヒンの両MFもフォローしてくる。数的優位を作られてもしかし、関根は慌てなかった。

 武藤にパスを預け、シュメルツァーの隙を突いて一気に縦へ抜けだす。武藤からのリターンを受けた関根のスピードの前に、シュメルツァーもシャヒンも置き去りにされてしまった。

 FW興梠慎三を狙った関根のクロスは、DFマルク・バルトラにクリアされた。しかし、このプレーで右コーナーキックを獲得。MF柏木陽介のゴールに巻いてくるボールに、興梠が右足を合わせて先制した。

 マークが誰もいない状況で興梠に合わせられなかったクロスの精度の低さに、関根は思わず天を仰いだ。それでも、キャリアも体格も上回る相手との1対1や駆け引きを制した快感は残る。

「縦に抜けるスピードでマークを外す動きとか、味方を使った動きが上手くいくシーンもありましたし、自分がアシストできるシーンを出せたことは自信につながるのかなと。(ドルトムントに)通用していた部分だし、そこはJリーグでも自信をもって、自分の強みにしてやっていければと思います」

●「Jリーグではなかなか経験できない」

 後半開始と同時に宇賀神に代わってMF駒井善成が投入されたことに伴い、関根は左ワイドに回った。視界が異なると、自らに課すプレースタイルも変わってくる。関根は若干ながらポジションを下げる。

「左のほうがポゼッションに参加するというか。引いて受けてゲームを作るとか、相手の間で受けるといったプレーのほうが多くなるのかな。あとは右足から狙えるシュートや、中へのカットインは右よりもやりやすくなるのでそこは意識しつつ、もちろん縦にも仕掛けることも考えていますけど」

 ドルトムントも後半から選手を入れ替え、フォーメーションも前半の「4‐3‐3」から「3‐4‐2‐1」に変更した。レッズとまったく同じ形となったことで、関根の胸中には期するものがあった。

「よりはっきりとマッチアップするので。出場する時間があらかじめ決められていたなかで、さらに仕掛けていこうと。上手く裏へ抜け出せたところまでは、よかったのかなと」

 槙野が長いバックパスを守護神・西川周作へ渡し、試合全体がわずかながら弛緩した雰囲気に支配された13分だった。左で求められる2つ目の仕事、カットインからのシュートを関根が体現する。

 対面の右ワイドに回ってきた、ポーランド代表のウカシュ・ピシュチェクの隙を突き、左タッチライン際から右斜め前方へダッシュ。オフサイドぎりぎりのタイミングで、西川からのロングフィードが通る。

 胸トラップでボールを大きく前へ運び、さらに加速していく。ボールを整えながら、一気にペナルティーエリア内へ侵入していった過程で、関根は2度にわたって後方を振り向いている。

「(西川)周作君も僕のことを見ていてくれたし、狙っていこうとずっと思っていました。それでも、フリーの状態だったのに、後ろから追われているプレッシャーを肌で感じることができた。ゴールキーパーのレベルの高さを含めて、Jリーグではなかなか経験できないこと。これらを今後に生かしていきたい」

 若造にゴールさせてなるものか、という32歳のピシュチェクの殺気を背中越しに感じたからこそ、2度も後方を振り向かされた。それでも追いつかれる直前に、体勢を崩しながら右足を振り抜いた。

 ドルトムントのゴールマウスを守る36歳の守護神、ドイツ代表のロマン・ヴァイデンフェラーは慌てることなくスルスルと前に出て、190センチ、87キロの巨体を大きく見せて関根のシュートコースを狭める。

 関根が狙ったのはゴール左隅。放たれたシュートはヴァイデンフェラーがとっさに伸ばした右足のすねにほんのわずかながら触れて、コースを微妙に変えた末にゴールネットを外側から揺らした。

●厳しいコンディションのなかでドルトがみせた“らしさ”

 レッズのコーナーキックになるはずが、木村博之主審の判定はゴールキック。相手ゴール前で思わず両手を広げ、苦笑いを浮かべながらポジションに戻る関根の脳裏にはさまざまな思いが交錯していた。

「シュートを打つまで落ち着いていたんですけど、あそこで決め切れなかったのは自分の課題です。ただ、ドルトムントはボールを奪われた後の切り替えが、とにかく全員が速かった。チームとしてのコンセプトがしっかりしているんだな、というのは戦っていて何度も感じました。

 自分も開幕前のキャンプのときの辛さはわかっている。シーズンに備えた準備期間ということで、ドルトムントの選手たちもコンディション的にとんでもなくきついものがあったはずだし、こんなものじゃないと思う。それでも昨日来日して今日試合というのは、本当にすごいことだと思う」

 時差ぼけ。オフ明けのコンディション不良。そして、日本の夏独特の蒸し暑さ。実際、キックオフ時の条件が気温30.2度、湿度65%に達したなかで、それでもドルトムントは随所に“らしさ”をのぞかせた。

 日本代表戦で追った左脱臼の影響で、ベンチウォーマーを余儀なくされたMF香川真司は「前半は上手くゲーゲンプレスもはまっていた」と振り返る。実際、前半のレッズは終始、押し込まれ続けた。

 相手ボール時に「3‐4‐2‐1」から変わる「5‐4‐1」で、引いて守る時間が長くなった。いざ、マイボールになってもワントップの興梠になかなかボールが入らず、攻撃時の「4‐1‐5」に移る場面が訪れない。

 それでもワンチャンスから先制点を奪い、後半30分すぎまでリードを保った。最後は個の力に屈したが、リーグ戦で陥った不振から抜け出すための処方箋を得たと、試合後の関根は強調せずにはいられなかった。

「特に前半は耐え忍んだというか、いままでにないくらいコンパクトな守備ができて、一人ひとりもハードワークすることができた。我慢強くプレーできたからこそ前半を無失点に抑えられたと思うので、そういった守備をリーグ戦でも出していければ。攻撃はドルトムント相手でも通用する部分を出せたので」

●ドルトとの一戦を経て。いま追い求める3つの目標

 Jリーグチャンピオンシップ決勝で、鹿島アントラーズにまさかの逆転負けを喫した昨年12月。予定外のオフに入った関根は、いまも敬愛するFW原口元気(ヘルタ・ベルリン)を訪ねてドイツへわたった。

 1週間ほどの滞在で、ブンデスリーガを3試合観戦した。そのなかで、ブンデスリーガ初昇格にもかかわらず、快進撃を演じていたRBライプツィヒがヘルタ・ベルリンを退けた一戦に大きな衝撃を受けた。

 スコアこそ2‐0だったが、関根をして「ヘルタがボロボロにされた」と言わしめた90分間。ピッチでは自分と同世代か、あるいは年下の選手たちが怒涛のプレスから電光石火の速攻を繰り出し続けていた。

「それでも、自分が(ドイツに)行けない、とは思わなかったですね。逆にやってみたいと、より強く思うようになった。どれだけやれるかというのは、実際にやってみないとわからないじゃないですか」

 ドイツの地で新たな刺激とエネルギーをもらい、迎えた新シーズン。2月25日の開幕戦で2‐3と逆転負けを食らった横浜F・マリノスのなかで、2アシストを決められたMF齋藤学を気にするようになった。

 ハリルジャパン入りを争っていくなかで、ドリブラーとしてタイプが似ている点が理由ではない。オフに海外移籍を模索しながら断念し、マリノスと再契約した齋藤の軌跡を気にせずにはいられなかった。

「齋藤選手でも海外に行くことができなかったじゃないですか。なので、齋藤選手以上のプレーをしなきゃいけないんだな、と思いながらいつも見ています」

 海外挑戦への夢を抑え切れないからこそ、まずは齋藤を超える。国内ナンバーワンのドリブラーとなった先に、新たな舞台が開けると信じている。だからといって、目の前の戦いを軽視することもありえない。

 連敗を3で止めた今月1日のサンフレッチェ広島戦。同点のまま突入した後半アディショナルタイムで、左ワイドから6人抜きのドリブルを仕掛け、奇跡の決勝ゴールを決めた瞬間に全身を駆け巡った思いを関根はいまも忘れていない。

「プレーひとつで見ている人々の心を動かせるんだ、というのを肌で感じられたので。ああいうプレーを毎試合出せるように、これからも頑張っていきたい」

 海外への挑戦。国内ナンバーワンのドリブラー。そして、何よりもレッズの不振からの脱却。3つの目標を貪欲に追い求める167センチ、61キロの小さなサムライにとって、強豪ドルトムントに冷や汗をかかせた2017年7月15日の夜は、夢を加速させるマイルストーンになるはずだ。

(取材・文:藤江直人)

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