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政府をバックに「爆買い」 中国の危うい対外投資

7/18(火) 18:52配信

日経BizGate

M&A界における「爆買い」現象

 2016年、海外企業による対中直接投資額が前年比7%減の1260億米ドルとなったのに対し、中国の対外直接投資額は前年比40%増の1701億米ドルに達した。中国は2002年から対外直接投資統計を公表し始めたが、対外直接投資が対内直接投資を上回ったのは2016年が初めてのことである。

 実際、2000年以降、中国は米国と並んで世界有数の直接投資の受け入れ国として注目されてきたが、ここ数年、中国の人件費の上昇、環境汚染、景気減速、サービス産業の対外開放の遅れなどを背景に、その勢いが明らかに鈍化している。

 対照的に、中国企業による対外投資が本格化し、グローバル規模における中国企業の進出に関する記事を目にする機会が急増している。特に話題を呼んでいるのは、中国企業による海外企業の買収である。製造業からサービス業まで大型買収案件が次々と公表された。その範囲は、欧米からアフリカまで拡大し、M&A業界で中国企業の「爆買い」現象が起きている。

 では、中国企業の対外進出がなぜ加速しているのか?「走出去」に象徴されるように、2000年以降、政府が企業の海外進出を後押している。当初、貿易摩擦の激化を避けるため、家電などのメーカーが海外で生産拠点を設けるのが主流だったが、その後、中国の内需拡大を受け、資源やエネルギーを確保するために鉱山や油田などの投資案件が急増した。

 最近、その範囲は、ホテルなどの不動産、娯楽施設、サッカークラブなどまで多様化している。いうまでもなく、過剰生産能力を海外へ移転するため、「一帯一路」戦略やAIIB(アジアインフラ投資銀行)の発足もこの流れに拍車をかけているのは確かであろう。

 しかし、中国の1人当たり名目GDPが僅かアメリカの7分の1(2016年)にも関わらず、昨年、中国からアメリカへの直接投資額が500億米ドルに達した。これは、アメリカから中国への直接投資額の21倍に相当する水準である。最近、技術流出や軍事転用などの懸念から、アメリカを中心に中国からの直接投資を厳しく制限する国や地域が増えている。一方、中国国内でも対外投資の急増を疑問視する動きが出始めている。

 中国の対外直接投資を担っているのは大型国有企業が主役である。強い政治力と豊富な資金を武器に、大型国有企業の対外直接投資は破竹の勢いを見せている。しかし、投資する前の事業化調査や投資後の経営状況に対するチェック機能があまり働かないため、無責任な体質がそのまま海外に移植されている。

 日本では中国企業の決断が速いと称賛する声もあるが、お金は国のものなので失敗しても誰も責任を取らないからだ。最近、国務院はようやく対外直接投資に対する監視体制の強化に本腰を入れ始めている。

 最近目立っているのは、民営企業による対外投資の急増である。中国国内よりリターンが高ければ、民営企業が自己責任で積極的に海外へ投資するのは当たり前なことだ。ただし、一部の民営企業が銀行からの借り入れに頼って海外ビジネスを急速に拡張しているため、中国はこういった企業の経営リスクを警戒するよう、銀行などに注意を促している。

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最終更新:7/18(火) 18:52
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