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スパークリングの日本酒は好きですか?美味しさの秘訣はアルコール度数12%にあり

7/18(火) 22:03配信

GQ JAPAN

東京からクルマで約1時間。アクアラインを渡った先に、その酒蔵はあった。自家培養・自然醸造という、稀有な日本酒の醸造法を60年にわたって受け継ぐ『木戸泉酒造』である。いま、自然派日本酒バー「twelv.」と手を組み、理想の日本酒をつくる。今回はその後編。

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■恋の予感

暦の上では春なのに、足元から冷気がじんわりしみ込んでくる。吐く息は白く、ダウンなしでは数分と持たないような厳寒の日、木戸泉酒造で「twelv.」オリジナルのスパークリング酒の仕込みが始まった。蔵は甑*(こしき)から揚がる蒸気で満たされ、若い蔵人たちが慌ただしく動いていた。

今回初めての試みで「twelv.」が仕込む酒は、造り手、そしてディレクションするドミトリーさんの思いが結集したまたとない逸品。スペックを聞くだけで心が躍った。

まず米からしておもしろい。その名も『恋の予感』。種蒔きから収穫までを全て女性だけで作業する農薬不使用の食用米である。生産地も皇室献上用の米を作る千葉県内の多古町と、バックグラウンドもまた質の高さを語る。

オリジナルの酒はこの『恋の予感』を1割だけ磨いて使用する。米を多く磨いて醸す酒が多い中、精米歩合90%というのはある意味、挑戦的である。米は磨くほど雑味が少なく、きれいな味になる傾向があるが、磨かなくても造りの技術に長けていれば「うまい」と唸らせる酒を醸せる。木戸泉酒造の確かな技術があるからこその精米歩合と言えよう。

自然派の「twelv.」故、もちろん醸造アルコールを添加しない純米酒である。酵母も添加せず、蔵付き酵母が沸くのを待つ。アルコール度数は12%。平均的な日本酒のアルコール度数である15%に比べるとやや低めだが、だからこそビギナー、そしてワインに慣れ親しんだ人でも手に取りやすい。

酒母はもちろん木戸泉ならではの高温山廃もと(こうおんやまはいもと)だ。これによって、濃醇かつ酸のあるキレのいい酒質になる。こうして細かく造りのことを聞いただけでも、間違えなく美味い酒になることがわかる。

■理想の味

私たちが訪れた日は、まさに仕込みの真っ最中。酒母タンクと呼ばれる小さなタンクに60℃前後の熱湯が注がれ、そこに放冷せず、熱いままの蒸し米と麹が次々に投入されてゆく。こう書くとかなりダイナミックな仕込みに思えるが、ここからは温度を小刻みに管理しながら、蔵付き酵母が舞い降りてくるのを待つ。時間の経過とともに麹の酵素による米の糖化が徐々に進んできた5日目、蔵付き酵母がタンクに舞い降り、アルコール発酵が始まる。

顕微鏡がない時代、酵母によるアルコール発酵は神の仕業とされていた。だが酵母の正体がわかった今でも、自然と共存しながら行う酒造りは、どこかで神の存在を感じずにはいられない。

そしてスタートから約2週間、オリジナルのスパークリング清酒は上槽(搾り)の日を迎えた。搾ったばかりの酒をティスティングしたドミトリーさんは満面の笑みをたたえながら「理想の味」と語る。といっても、スパークリング清酒の造りはここで終わりではない。瓶内で2次発酵させるため、まず常温で1カ月、その後、マイナス5℃の場所で、味が安定するまで更に約2カ月間冷蔵管理される。

丹精込めて造られた酒には、それに見合うスタイリッシュなルックスも重要なテーマだ。黒を基調としたボトルはテーブルに置いた時にスッとなじむ独特のフォルム。カッパー箔でラベルに小さく、そしてさりげなく入れた銘柄もクールでいい。今回は限定777本と数が少ないだけに、口にできるかどうかが心配だが、何としてでも手に取りたい稀代の1本である。

「twelv.」オリジナルのスパークリング清酒のデビューは間もなく。これほどまでに待ち遠しいと思う酒はそうない。

文・葉石かおり 写真・YAMAGUCHI KENICHI [JAMANDFIX]

最終更新:7/18(火) 22:36
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