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育児と介護の「ダブルケア」 仕事とどう両立

7/19(水) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 育児と介護を同時に担うダブルケア問題が顕在化してきた。内閣府の調査で、この問題に直面するのは25万人に上る。背景には晩婚化に伴う出産年齢の上昇がある。働く女性にとって課題の仕事と育児の両立、さらに迫る介護をどうしたらいいのか。
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■二世帯住宅で母を介護 埼玉・所沢市のAさん

 所沢市に住む女性、Aさん(38)は勤務する金融機関の仕事と育児・介護の両立に悩んでいる。半年前、母(66)が脳梗塞で倒れ、体にマヒが残った。父(69)が介護をするが、家事には不慣れ。料理や掃除で失敗するたびに声を荒らげる。両親は自宅を二世帯住宅に改装してAさん一家と暮らす。育児に父母の協力を得ながら働くキャリアプランだったが、突然の母の介護生活。手は足りない。
 当時、Aさんは育児休業を終えて2カ月前に復職したばかり。時短勤務とはいえ、仕事のリズムを取り戻しつつあった。「最長3年の育休制度を延長して、育児・介護に使えばいい」。理解のある上司が会社に掛け合ってくれたが、復帰後すぐに職場に穴を開けることに罪悪感がある。
 まだ小さい子供の世話に加えて、母親のケア、両親分の食事を用意するAさんの毎日は「一日中、人の面倒を見続ける無限ループ。覚悟していたとはいえ、逃げ出したくなる。私は本当に復職できるのか」と打ち明ける。
 子育てと親の介護のダブルケアに悩む人は少なくない。内閣府が16年に調査したところ、未就学児の育児をしながら、家族の介護を同時にする人は25万人に及ぶ。
■晩婚化と出産年齢の上昇、高齢化が同時進行
 ダブルケアの命名者の一人で、横浜国立大学大学院准教授の相馬直子さんは「ダブルケアラーは自分ですべてを抱え込みがち。自治体や企業が率先して把握し、支援する必要がある」と警鐘を鳴らす。昨年、相馬さんがソニー生命保険などと実態調査(有効回答2100)したところ、ダブルケアラーや経験者の4割の女性が「介護や育児を理由に仕事を辞めたことがある」と回答した。一方、離職経験があると回答した男性は2割強。担い手が女性に偏る現状が浮き彫りになった。
 親の介護は子育てが終わってからと考えがちだった。それが同時にくる。ダブルケアが増える要因の一つが、晩婚化と出産年齢の上昇だ。15年の厚生労働省の人口動態調査によると、初産時の母親の平均年齢は30.7歳で、20年で3.2歳上昇した。都心部はさらに高い傾向にある。
 一方で高齢化は急ピッチで進み、介護を必要とする人は増え続けている。要支援、要介護認定者は14年度に初めて600万人を超え、15年度末には620万人に達した。
 「症状は悪くなり、負担は増えるばかり。正直、『親に早く亡くなってほしい』と思ったことがある」。涙ながらの女性の言葉に「誰だってそう思うことはある」「あなただけではない」と参加者から慰めの声がかかる。横浜市港南区にある地域コミュニティースペースで毎月1度開く「お喋(しゃべ)りカフェ」は、育児と介護に悩むダブルケアラーの駆け込み寺だ。
 「誰にも悩みを相談できず、一人で抱え込む人ばかり。経験者や当事者が集まって話を聞くだけで、悩みを軽減できる」。主催する「芹が谷コミュニティ てとてと」の植木美子代表はそう話す。自身も子供が2歳の時に、夫の母親と父親の介護を経験した。
 「ダブルケアカフェ」とも呼ばれる同カフェは開始して4年。地域のダブルケアラーが20人近く参加して、悩みを共有してきた。「自治体では育児と介護で窓口が異なり、たらい回しになることもある。使える情報を共有する場は貴重だ」(植木さん)。横浜市はダブルケアラーであれば保育所の入所の優先順位が上がる仕組みを16年に始めた。だが、こうした情報は日々、育児と介護に追われる人には届きにくい。

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最終更新:7/19(水) 7:47
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