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日本の成長支えた「直系家族」システム。その「殻」は捨てるべからず

7/19(水) 8:00配信

BEST TIMES

英国のEU離脱など、世界情勢の大きなうねりを読み解いてきた、エマニュエル・トッド理論。じつは日本のあり方を考える際にも有効なツールだ。わが日本は、トッドの家族類型では「直系家族」にあたる。あらためて日本社会の根っこにある「直系家族」の強み、弱みとは? 新刊『エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層』を上梓した鹿島茂氏が説く。

かつては教育熱心が日本を支えていたが。。

  (直系家族特有の)教育熱心が今までの日本を支えていたのは事実です。

 ところが最近はあまりにも社会的格差が広がってしまって、底辺の層から善い教育を受けようともがいてもアクセスできない場合があります。戦前なら例えば、士官学校や師範学校など、貧困家庭からでも優秀な子ならバイパスで上に引っ張り上げることができました。

 そのせいで陸軍が強力になりすぎたという負の側面はあれど、一種の救済制度であったわけです。

 だけど今はそういう仕組みはなくて、逆に象徴的なのは「親の年収と子供の偏差値が完全に連動している」という事実。東大生の親が、年収もダントツ。かつての“お坊ちゃん・お嬢さん大学”に子どもを通わせている親が年収が高いかというと、そんなことは決してない。親の収入と子の学力が見事に連動して、完全に階層社会になってしまいました。

 そうすると下の方はもう、直系家族なんてやってられない。子供に一刻も早く働くようになってもらわないといけない。核家族じゃないとやってられない。貧富の差を是認している社会が、いくら直系家族に戻せと叫んでも無理に決まっているのです。

直系家族の「殻」は捨てるべからず

 ここまで大きく変わったのは、小泉純一郎政権が導入したイングランド、アメリカ型のグローバリズムの影響でしょう。強いヤツはいくら儲けてもいい、弱いヤツは自分の責任で、能力がなく単純労働しかできない人は永遠に時給1000円で終わり。いつでもレイオフできる労働力を確保するためにアメリカ型を導入してしまったのが日本の最大のミスでしょう。おかげで会社における直系家族型の良さが全て失われてしまった。

 かつての日本の会社は会社に忠誠心をもたせるような制度があった。年功序列型の賃金体系然りです。

 先日、ある食品メーカーの社長にインタビューする機会があって、ここは40期以上連続増収というすごい会社なんですが、ここのカリスマ社長が愚直なまでに直系家族システムを貫いた経営をしているんです。社員を幸福にすることが会社の理念だから、給料も上げるし、解雇もしない。

 家族にも組織にも、日本に向いていたから直系家族は浸透したわけだから、その「殻」は捨てちゃいけないということですよ。

構成:大平誠(ノンフィクションライター) 撮影:高山浩数

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