ここから本文です

<解説>事故で道路を粘液まみれにしたヌタウナギ、どんな生きもの?

7/19(水) 18:43配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

奇妙な生態や粘液の正体を専門家が解説、米国のトラック事故で

 映画『ゴーストバスターズ』の1シーンではない。7月14日、米オレゴン州のハイウェイでトラックが横転し、道路と少なくとも1台の車を粘液まみれにしたせいで、かつてない奇妙な交通渋滞を引き起こした。

【動画】ヌタウナギが散乱、車や道が粘液まみれに

 なぜそんなことになったのか。それは、トラックが運んでいたのがヌタウナギだったからだ。ウナギに似た姿をしたヌタウナギは、腐肉を食べる深海魚で、捕食者を撃退するために一瞬で大量の粘液を出せる。さまざまなアジアの国々、特に韓国で珍重されており、米国の太平洋岸北西部には漁場がいくつか存在する。

 この粘液は実に厄介なもので、オレゴン州交通局は、小型ブルドーザーを使って粘液を道路から除去した(ヌタウナギのほとんどは事故で死んでいた)。

 ヌタウナギが暮らす自然環境、すなわち海底では、この秘密兵器は別の用途に使われる。

「この粘液は、捕食者の攻撃から身を守るには恐ろしく有効な手段です」。米カリフォルニア州チャップマン大学で生体材料を研究するダグラス・ファッジ氏はそう話す。

「粘液は一瞬にして放出され、粘着力がとても強く、えらを詰まらせるため、通常、捕食者がヌタウナギを狙うことはありません」

 しかし、近くにサメがいるわけでもないのにヌタウナギが大量の粘液を放出したのはなぜだろう。ファッジ氏によると、このヌタウナギ(Eptatretus stoutii)は、ストレスを感じた際にも粘液を放出するという。今回の事故のように放り出されたときも同様だ。

 トラックは水槽を使って合法的にヌタウナギを輸送していたが、その水槽も事故が起きる前から粘液だらけだったに違いない。ヌタウナギが粘液を出す状況を作らずに輸送するのはどう考えても難しい。

粘液を放つモンスター

 ブラックビアード・バイオロジックという環境コンサルティング会社のCEOで、深海生態学者のアンドリュー・ターラー氏は、ヌタウナギはクジラの死骸などの食べものがある場所によくいると言う。

「ヌタウナギは死骸を食べるときも粘液を出します。他の生物がやってこないように、粘液で死骸を覆うのです」と ターラー氏は話す。「まさに粘液を放つ魔物ですよ。でも、それが彼らの魅力でもあります」

 実のところ、「粘液」という言葉は適切ではないと氏は付け加えた。

「この粘液は、微細な繊維が半固体状のゲルとなったもので、どちらかと言えば、スライムよりスパイダーマンの糸に近いものです」

ヌタウナギの味は

 ヌタウナギやその粘液には、まだわかっていないことがたくさんある。調べれば調べるほど、奇妙な点が見つかる。自分の体を結ぶことができたり、死骸の中で暮らすことができたり、酸素がなくても心臓が動いたりする。

 ちなみに、美味と言われるヌタウナギだが、ファッジ氏は実際に試してみたことはないそうだ。「聞いたところによると、においと同じような味がするそうです。だとしたら、私にはあまりおいしそうには思えないのですが」

文=Jason Bittel/訳=鈴木和博

記事提供社からのご案内(外部サイト)