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「パソコン通信」の時代に学ぶネット社会の治安維持

7/19(水) 7:30配信

@DIME

現代の様にインターネットが普及していなかった1980年代。

家庭の娯楽の中心は、ラジオ、そしてテレビでした。

その後、パソコン及び通信ソフトの普及、そしてモデムも安価な物が発売される様になってきて、パソコンとホスト間で、通信回線を利用してデータ通信を行うサービス「パソコン通信」が、徐々に人々の間に普及する様になってきました。

パソコン通信黎明期は、電話代や回線使用料が従量制(利用時間に応じて課金される料金体系)だった為、実にお金がかかる趣味でした。

一見、割に合わない道楽だったかもしれません。

それなのに、何故みんな挙(こぞ)って、こんなにお金がかかって手間もかかるパソコン通信を行おうと思ったのでしょうか…。

それは、当時のパソコン通信が、”個人が情報発信をする事が出来、かつ、リアルタイムに情報収集をする事が出来る数少ないメディア”であった事がその理由です。

それまでのパソコンユーザーは、PCの使用方法や、不具合の対処方法を調べようと思ったら、イマドキの様にググる(googleで検索してみる)事が出来なかった為(そもそもgoogle自体がまだ存在していない)、パソコンショップのお店の人に質問をするか、PC雑誌や専門書を購入して読み込むしか方法がありませんでした。

しかし、そんなにしょっちゅうお店に出かけて質問をする訳にもいきませんし、お店の人だって何でも知っている訳ではありません。本を深読みしてみても、自分が知りたい内容に限っては何も書いていなかったりする事が多く、知りたい事をその場で質問する事も出来ませんでした。

また、専門知識がある人にとっては、お互いに情報交換を行い知識を深め、より高みに上る知的欲求を満たしたい手段が、なかなか存在していませんでした。

其処(そこ)に「パソコン通信」がピッタリハマった、という訳です。

さて、パソコン通信のサービスとして最も重要なサービスが「電子掲示板(Bulletin Board System:BBS)」です。

PC-VANならSIG(Special Interest Group)、ニフティサーブなら「フォーラム」といった名称の電子掲示板では、お互いに積極的な情報交換や世間話、与太話が繰り広げられていました。

ちなみにパソコン通信の掲示板では、イマドキのインターネット全盛の時代とは多少異なる仕来り(しきたり)が有りました。

まず、掲示板の書き込み毎に、文末に「シグネチャ(Signature)」を記載する習慣がありました。今日び、メール送信時にしか使わない「署名」の記載を、掲示板の書き込みの際に使っていた訳です。

デジタル業界の人は何故か猫好きな人が多かったのか、シグネチャに猫を模したアスキーアート(テキストで表現した絵)を使用した人を良く見かけた様な気がします。気がしただけですが。

また、掲示板を閲覧するだけで書き込みを行わない「ROM(Read Only Member:ロム)」人は、大変嫌われました。

当時筆者も「んな無茶な」、と内心思っていたけど怖くて言い出せなかったのですが、ROMを嫌う人にとっては、其(そ)れなりの言い分が有り、

※そもそもパソコン通信の掲示板は、書き込みがあってこそ初めて成立するものなので、見ているばっかりの人が増えたら掲示板自体が成り立たない
※(当時は)通信回線(ダイヤルアップ接続の場合、一人アクセスした場合、プロバイダ側の回線も一回線消費する)やサーバの処理能力などのリソース(資源)が乏しかった為、ROMばかりする人が増えたら、積極的に書き込みをしたい人の妨げになる
※皆がお互いに自分の持ちうる知識を披露して活発な情報交換をしているのに、ROMは自らの情報を発信する事もなく、享受するだけなのが許せない

といった理由を挙げていました。

パソコン通信の世界は、こういった当時の技術系の人たちの先鋭的なモノの考え方が、如実に反映されていた、実に素晴らしき世界だったのです。

掲示板では、「管理人」が、「迷惑な人」の書き込みの削除や、IDの利用停止などの強権を発動し、掲示板の治安維持に常に目を光らせていました。

また、技術的専門性の高いテーマのBBSでは、初心者がいきなり質問するのは憚(はばか)られました。

かつて筆者が、何気なく掲示板で「PDS(現在のフリーソフトウェアに相当する”当初”の呼称)」について質問をしたところ、諸先輩方に「日本の著作権法では著作者人格権が放棄出来ないから「PDS」なるものは存在しない。もっと勉強しなさい。これだから初心者は…。」と、とても真摯かつ的確なご指導を頂きました。( ;∀;)

そのほか、OLT(オンライントーク。今で言うチャット)やオフ会(ネットワークで出会った人達が現実世界で親交を深める)のサービスについては、筆者はパソコン通信の世界ではお友達が居らず、一切利用していませんでしたので此処では話を飛ばします。(オイ)

…とまあ、そういう訳で…。

そんな桃源郷の様なパソコン通信の世界も、無常にも時が過ぎ…。

テレホーダイ(23時から翌日8時までに限り、予め指定した2つまでの電話番号の通話料金が定額になるサービス)のサービスが始まり、アナログモデムのスピードも、300bpsから、1,200bps~2,400bps~9,600bps~14,400bps~28,800bps,最終的には56,000bpsまで高速化が行われ、更に個人向けのインターネットのサービスが開始、ユーザーが使える回線の種類も、フレッツISDNを皮切りにADSLになり常時接続が一般的化、光ファイバー通信サービスも価格帯が下がって、インターネットのサービスは一気に全国的に広まりました。

その裏では大手プロバイダがひっそりとパソコン通信のサービスを終了。

ここに一時代を築いたパソコン通信は、その役割を終えました。おしまい。

追伸:最近何かとメディアで話題沸騰の「Mastodon(マストドン)」は、一説ではパソコン通信の再来と言われているらしいですね。一周回って原点回帰って事なんでしょうかねぇ…。とりあえずタイムラインのスクロールが早くて読めないので老骨にはキツイ世界です…。

日本中のパソコンユーザーと電話回線を使って電子掲示板で語り合うことが出来たサービス「パソコン通信」。一時代を築いた先進的な情報通信手段として、今でも燦然と輝いているのです…。

※記事中の情報は、執筆時点のものとなります。
※本記事は、あくまでも筆者の微かで不正確な記憶と主観に基づき、独断と偏見で飛躍した説明足らずで知識不足の実にテキトーな表現による単なるエッセイであり、特定メーカーや機種、人物、思想等を貶める意図は全くございません。
※本記事に登場する、登場人物のキャラクターや言動は全てフィクションです。

文/FURU

@DIME編集部

最終更新:7/19(水) 7:30
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