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今年のインディペンデント系映画祭「サンダンス・ロンドン」で話題を集めた6作品

7/19(水) 18:30配信

@DIME

 6月1日から4日までサンダンス・ロンドンが開催された。アメリカ最大級インディペンデント映画祭であるサンダンス映画祭からの選りすぐりを、ロンドンでお披露目するものだ。

 マンチェスターでのアリアナ・グランデのコンサートで自爆テロ事件が起こった翌週でもあり、例年になく厳しい警備体制で、入場者全てが入り口で持ち物検査された。首からプレスパスを下げていても例外ではなく、出入りのたびに検査されたが、煩わしさより安心が勝った。

 そんな今回のサンダンス・ロンドンはドキュメンタリーの受賞作が揃った。その受賞ドキュメンタリー3本と、特徴的だった映画3本をご紹介したい。

■アメリカ・ドキュメンタリー部門観客賞受賞『Chasing Coral』(ジェフ・オーロウスキー監督)

 地球温暖化と言えば、気温上昇を思いがちだが、海中に目を向けるのが本作。この30年で50%が死滅したサンゴを見せる。サンゴにとって海水の温度が1度上がるのは、人の体温が1度上がるのに等しいダメージとされ、広い範囲でどんどん死んでいく映像が衝撃だ。サンゴ礁に生息する魚をはじめ、生態系に与えるダメージの大きさも訴える。

 だが、しかつめらしいドキュメンタリーではない。海中の世界を覗く楽しさもあり、海洋学者、水中カメラマン、はたまたサンゴおたくと紹介される青年など、海への愛に満ちた人々の声がまっすぐ胸に届く。

■同部門オーウェル賞受賞『Icarus』(ブライアン・フォーゲル監督)

 ロシアのスポーツ界におけるドーピングを内部から追及したドキュメンタリー。アマチュア・サイクリング選手であるブライアン・フォーゲル監督自らが規定をかいくぐるドーピングにチャレンジ、その過程で知り合ったモスクワ反ドーピングセンター長グリゴリー・ロドチェンコフこそ、ロシアの国を挙げてのドーピングの実質的な担当者だった。

 ドーピングが国家的一大プロジェクトとなっていたことが暴かれるのはもちろん、ロシアを五輪から追放という騒ぎになった後、グリゴリーをアメリカに逃す手引きまでしてしまうフォーゲル監督の入り込み具合もスリリングだ。

■同部門グランプリ『Dina』(ダン・シックレス&アントニオ・サンティーニ監督)

 49歳ディナとお相手スコットの中年カップル珍ドキュメンタリー。結婚を意識してつきあうディナとスコット、ディナのエキセントリックさ、スコットの硬さが笑いを誘う。

 次第にスコットがアスペルガー症候群、ディナも同様ないくつかの症状を抱えていることがわかるが、そこはさらりと流し、あくまで2人の関係に焦点を絞ったことで、愛が育まれる過程を見せる珍しいドキュメンタリーになった。

 ドラマ映画では、それぞれ逆方向から死者を扱う2本が並んだ。

■ケイシー・アフレックとルーニー・マーラ再タッグ『A Ghost Story』(デヴィッド・ロウリー監督)

 ロウリー監督は、ケイシーとルーニーをメイン・キャラクターとして初起用した『セインツ-約束の果て-』(2013)で、一躍知られるようになった。そのトリオが再集結。ケイシーは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)でアカデミー主演男優賞受賞、一方のルーニーも『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)主演以来、アカデミー賞にノミネートされるなど着実に歩みを進め、今回の作品は注目を集める話題作になっている。

 ロウリー監督が「ケミストリーがある」と太鼓判を押す2人だが、今回、演じるカップルはすぐ死によって分かたれてしまう。ケイシーにいたっては、ほぼ全編シーツを被ったお化け姿で、目部分の穴も黒々として目玉さえ見えない。その姿で1人漂う姿が寂しく、生きとし生けるもののはかなさを感じさせ、ロマンチックドラマでもホラーでもない特異な映画になった。

■アルフレッド・P・スローン賞受賞『Marjorie Prime』(マイケル・アルメレイダ監督)

 死者の想いが形になったのが『A Ghost Story』なら、生者の死者への想いを形にしたのがこちら。コンピューターで作り出されたホログラムのようなAIとなった亡き人と語らう家族の物語は、シュールな近未来を予想させる。

 数十年前の姿と思われる夫(ジョン・ハム)と語らう老女マージョリー(ロイス・スミス)から始まり、ティム・ロビンス、ジーナ・デイヴィスといった芸達者による繊細な心理描写や、人とAIの演じ分けも見事だ。

 さて、サンダンス・ロンドンはつつがなく進んだが、3日夜にロンドン・ブリッジ~バラ・マーケットでまたもテロが起こった。最終日となる4日、参加した上映ではプログラマーの1人が「特に昨晩の出来事の後では、本当にありがとうございます」と、大入りの来場者へ感謝を述べた。映画祭で関係者挨拶があるのは珍しいことではないが、いつにもまして心底からの言葉に思えた。その時の上映作がタイムリーと言えなくもないこちら。

■『The Big Sick』(マイケル・ショウォルター監督)

 パキスタン出身のスタンダップコメディアン、クメイル・ナンジアニが自身の体験を脚本とし、主演も務める。脚本は妻であるエミリー・V・ゴードンとの共著で、保守的なムスリム家庭に育ったクメイルとアメリカ女性エミリーの多難な恋をコメディーとして描いたもの。エミリー役はゾーイ・カザンが演じる。

「僕はテロリストです。隠れ蓑としてスタンダップコメディーをしてます」など、このご時世ならではのムスリムに対する偏見を笑いに昇華して見せるクメイルのギャグが受けていた。

文/山口ゆかり

@DIME編集部

最終更新:7/19(水) 18:30
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