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大手私鉄の経営に「JRの30年」が与えた影響

7/19(水) 8:00配信

東洋経済オンライン

 大手私鉄が主として担っている鉄道事業とは何であろうか。それは旅客運送事業のうち、大都市圏内の通勤・通学輸送である。具体的に言えば、都心部と郊外との間、10km前後から長くても約20kmまでの人々の行き来の便を図るというものだ。大まかに言ってしまえば、大手私鉄の担う役割とは30年前も今もほぼこれだけであると言って過言ではない。

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 もちろん異論もあるだろう。東京─横浜、成田間や大阪─京都、神戸間など、数十km程度離れた都市間の移動、あるいは都心部と観光地との間を結ぶ50kmから100km程度の旅客輸送を重心に置いている大手私鉄も存在するのではという意見だ。前者については京浜急行電鉄、京成電鉄、京阪電気鉄道、阪神電気鉄道など、都市名を1字ずつ組み合わせて社名としている鉄道事業者もある。

■大手私鉄の平均乗車距離は10km台

 しかし、大手私鉄(東京地下鉄は除く)15社の旅客営業キロの延長は2017年2月1日現在、501.1kmの近畿日本鉄道から35.9kmの相模鉄道までさまざまであるが、1987年度から5年おきに抽出した旅客平均乗車キロは、最も短い東京急行電鉄の7.3km(1992年度)から最長の近畿日本鉄道の19.4km(1997・2002年度)と、一様にほぼ10km台に収束しているのだ。

 よって、大手私鉄の旅客は大都市の都心部と郊外の間、長くても20km前後の距離を通勤・通学のために乗車しているのが大多数で、ほかの用件で利用する人はもちろん存在するものの、少数派であると言えるのではないだろうか。

 ところで、国鉄と大手私鉄との間には1970年代の半ばまで大きな壁が立ちはだかり、一部を除いてほぼ完全にすみ分けが行われていたことをご存じであろうか。

 国鉄の鉄道事業の重心は、首都圏、中京、京阪神の各都市圏内であっても、数百km離れた都市間の移動に置かれていた。東海道や東北といった主要な幹線には特急・急行などの旅客列車、それに貨物列車など長距離を結ぶ列車が多数運転されていた。一方、大都市圏内の通勤・通学輸送については、国鉄も重責を担ってはいたものの、どこか傍流という感は否めなかったのである。

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