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【MLB】細かいデータを検証して取材するサイトが提示する新野球メディアの在り方とは?

7/20(木) 11:22配信

週刊ベースボールONLINE

 インディアンスの本拠地、プログレッシブ・フィールドでのこと。トラビス・ソーチック記者と名刺交換をした。パイレーツの番記者時代に書いた『ビッグデータベースボール』は翻訳され、日本でも角川書店から出版されている。

「日本でどれだけ売れたのか、数字は知らないんだ」と苦笑。まだ若いが、すでに新聞記者を辞め、データサイトの「ファングラフス」でスタッフライターとして健筆をふるう。番記者だと、始終チームに張り付いて試合内容から選手のケガまですべてをカバーしなければならないが、今の立場だとテーマを絞って突っ込んだ取材ができる。

 ピッツバーグから2時間かけドライブしてきたという彼の今回のテーマは「フレーミング」だった。

 直訳すれば「枠にはめる」。捕手がボーダーラインに来た球を、巧みなキャッチングで、ストライクに見せる技術である。2007年にMLBが「ピッチf/x」のデータを出すようになってから、ベースボール・プロスペクタスなどいくつかのデータサイトが、フレーミングランキングを発表している。

 その中でジョナサン・ルクロイ捕手は10年から14年に、常に上位にランクされ、メジャー有数の名手と呼ばれていた(当時ブリュワーズ)。それがここ数年は順位が大きく下がり、今年(レンジャーズ在籍)は最下位に転落した。通常フレーミングの技術は年齢を重ねても大して変わらないとされている。31歳のルクロイに何が起こっているのか、取材に現れたのだ。

 ミットを構える高さなど、多角的に謎を解こうする記者に対し、ルクロイは「フレーミングの評価には組む投手が影響する。(コントロールの良い、アストロズの)ダラス・カイケルの球を受ければ数字が良くなる」とコメントしている。

 そもそもこのランキングは、実際にはストライクなのにボールとコールされたものを“Zボール”とし、ボールなのにストライクとコールされたものを“Oストライク”とし、そこから計算が始まる。とはいえ、微妙なコースを瞬時に判定するのは球審の目であり、フレーミングの腕前を発揮できるかどうかも、ルクロイが言うように、投手が構えたところに正確に投げられるかが影響する。

 しかしながら、多い捕手で、シーズンに8000球以上、打者が振らなかったボールを受ける。サンプルがとても多いため、そこに捕手のキャッチング力が反映されるという論理だ。

 データサイトによるが、審判、投手、打者(右か左か)、カウント、投げた球種などによる違いも加味しながら、数字をはじき出し、リーグ平均と比較している。

 最近のアメリカ野球メディアで興味深いのは、膨大なデータをベースに、ソーチック氏のような記者が、現場の選手やコーチの声を聞きながら、検証作業を進めていること。記事の後に付く、読者の感想や意見も理路整然としレベルが高い。

 投手のせいにするルクロイに批判的な人、同意する人、データを認める人、認めない人。従来の野球メディアとは違う材料を提供し、ファンを楽しませているのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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