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<解説>巨大棚氷の分離は20年前から進行していた! 地図に見る南極の劇的な変化

7/20(木) 7:20配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

ついにラーセンC棚氷からも、南極半島では過去20年で3度目

 2017年7月、南極の「ラーセンC」と呼ばれる棚氷が割れて、巨大な氷山が分離した。このニュースは世界的な注目を集めているが、ラーセン棚氷の劣化は、実は20年以上前から進行していた。ナショナル ジオグラフィックが作成した世界地図を年代順に見ていくと、棚氷が年月を経て劇的に変化した様子がうかがえる。

【地図】1990年版の南極には棚氷の大部分が残る。2005年版も。

 1990年版、2005年版、2015年版という3つの地図を見比べると、地図が新しくなるごとに棚氷の広い部分が失われていることがわかる。そして今回、米デラウェア州の面積に近い約5700平方キロの巨大な氷山が、ラーセンC棚氷から分離した。大陸から分離した氷山としては世界最大級のものだ。

 ナショナル ジオグラフィックの新しい世界地図は2019年に出版される予定だが、そこには欠けたラーセンC棚氷の最新の姿が掲載されることになる。

 棚氷とは、大陸から海へとせり出した分厚い氷の塊である。南極大陸の海岸線の約75%が、この棚氷に覆われている。ノルウェー人の探検家カール・アントン・ラーセンにちなんで名づけられたラーセン棚氷は、ウェッデル海に突き出た南極半島北東部の海岸沿いにある。

 今回の分離が気候変動によるものであるという決定的な証拠はないが、海水温の上昇は、棚氷の分離や崩壊を引き起こす原因となっている。

 米航空宇宙局(NASA)が1960年代に初めてラーセン棚氷を撮影したときから、今回分離した部分に致命的な亀裂が入っていることは確認されていた。棚氷が氷の塊をそぎ落とすのはしばしば自然に起こる現象だが、今回のような巨大氷山の分離は、1995年以降3度目だ。そのペースの速さに、一部の研究者は危機感を抱いている。

ラーセン棚氷のこれまでの変化

 1995年1月、最も北にあるラーセンA棚氷が、嵐によって約2000平方キロの氷を失い、その南で巨大な氷山が棚氷から分離した。ナショナル ジオグラフィックの世界地図は、1999年版でラーセン棚氷に関する記述を加え、その消失が加速していることに初めて言及した。

 2002年、そこから南に下ったラーセンBの大部分が、わずか1カ月の間に分離して崩壊。約3200平方キロの面積が失われた。

 科学者は、どちらの氷山分離も温暖な夏が続いたことが原因であると考えている。特に2002年の夏は異常な暖かさだった。そのために融解が急速に進んだことを、研究者たちが確認している。

 2005年版の世界地図には、ラーセンBの崩壊した部分が新しく描かれた。少なくとも1万年前に形成されたと考えられているラーセンBの残りも融解が進み、2020年までに完全に消失するとみられている。

 ラーセンCから新たに分離した重さ1兆トンの氷山は、細かく砕け、その一部はウェッデル海に数十年間は留まるものの、その他の部分は海流に乗って北へ移動すると思われる。流氷は、サウス・ジョージア島とサウス・サンドウィッチ諸島の西を通過して南アメリカ大陸へ向かうだろうと、スクリップス海洋学研究所の南極専門家ヘレン・アマンダ・フリッカー氏は米ワシントンポスト紙に語っている。

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