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【開発秘話】発売から2か月で63万ケースを売り上げたキリンのノンアルコールビール『零ICHI』

7/20(木) 7:10配信

@DIME

 キリンビールが2017年4月に発売した、アルコール度数0.00%のノンアルコール・ビールテイスト飲料『キリン 零ICHI(ゼロイチ)』の売れ行きが好調だ。年間販売予定数約140万ケース(大瓶換算)で販売を開始したところ、発売から2か月で、約半分に当たる63万ケース(同)を達成。好調さを受けて、年間販売予定数を約210万ケース(同)に上方修正したほどである。

『キリン 零ICHI』は『キリン 一番搾り』に採用されている「一番搾り製法」を採用しているのが特徴。麦の旨味を丁寧に引き出すとともに、人工甘味料や苦味料を使用せず、よりビールに近い上質な味わいを実現した。

■4人に1人が、ノンアルコール・ビールテイスト飲料の味に不満

 今ではすっかり定着した、アルコール度数0.00%のノンアルコール・ビールテイスト飲料だが、そのきっかけをつくったのが、同社が2009年に発売した『キリン フリー』。発売当初、爆発的に売れたが、その後競合他社が市場に参入し、同社のシェアを奪っていった。同社も2015年に機能性表示食品の『パーフェクトフリー』を投入するなど、何度もテコ入れを図ってきたが、状況は変わらず、市場も横ばい状況が続いた。

『キリン 零ICHI』の誕生は、このような市場の状況と大きく関係していた。マーケティング本部マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当の北村友依さんは、次のように話す。

「ノンアルコール・ビールテイスト飲料市場は求める人が一定層いることもあり、低迷はしていませんでした。ずっと横ばいの状況が続いていたのですが、その割には何もしてきませんでした。そのため、当社が持つ技術などを使い、革新的なことができないかと考えたのです」

 このような問題意識から、同社は2016年に、ノンアルコール・ビールテイスト飲料のユーザーを対象に実態調査を実施した。すると4人に1人が、味に不満を持っていることがわかった。

「現在飲んでいながらも、もっと美味しくなるのではないか、という期待を持たれているカテゴリーが、ノンアルコール・ビールテイスト飲料だといえます。この期待に応えられる商品は、これまであまり考えていなかったので、真剣に向き合ってみることにしました」と北村さん。『キリン フリー』をリニューアルするプランも検討されたが、調査結果から、発売当初の『キリン フリー』の味に対する印象がよくなかったことが浮き彫りになる。これがきっかけで『キリン フリー』から離れてしまった人も相当数にのぼることから、ビールらしい味わいのする新ブランドを立ち上げることにした。

■麦汁のクセを消してゴクゴク飲めるものにする

 さらに同社は、ビールらしさを突き詰めることにした。ビールらしい味わいには、ホップにこだわったものと麦の味わいこだわったものの2つがあるが、これらについてユーザーに問いかけたところ、麦の味わいにこだわったものが高く支持された。この結果から、『キリン 零ICHI』では、麦の味わいやコクが感じられるものをつくることにした。

 そのために活用することにしたのが、「一番搾り製法」であった。目指す味わいとキリンらしさを実現できる最良の製法であると同時に、『キリン 一番搾り』の実績やイメージをうまく活用できることが、採用の決め手になった。

 確立されている製法を活用するので、開発は簡単に進んだように思われるが、ノンアルコール・ビールテイスト飲料に仕上げるための困難がつきまとった。困難とは、「一番搾り製法」でできる一番搾り麦汁を、ゴクゴク飲めるものにすること。一番搾り麦汁は濃い上に甘くとろ味があり、飲むと独特のクセが口の中に残る。ビールにする場合は、発酵工程で酵母が糖分を食べアルコールと炭酸ガスを生成するため問題ないが、発酵工程がないノンアルコール・ビールテイスト飲料は、麦汁の味がそのまま出てしまい、ゴクゴク飲めない。

 麦汁が持つクセの消し方には、香料の活用がある。ノンアルコール・ビールテイスト飲料の味わいは、香料などによるところが大きいが、選び方や組み合わせは実に様々。とくに今回は、『キリン 一番搾り』の味わいに寄せるための香料を研究所で開発し、それをどの程度使うかなどを調整しながらバランスを取っていった。

■分析結果を基にしてビールの味に近づける

 また開発では、数値を元にビールの味に近づける手法を採用したという。試作品を分析し、香味などの分析結果をビールの結果と比較しながらビールに近づけていった。まず、北村さんたち開発チームが研究所に求める味を伝え、工場の醸造家が試作品を製造する。できた試作品を開発チームが試飲し、評価結果を聞いた研究所が試作品を分析、その結果出てきた数値を元にビールに近づけていくという作業を繰り返した。

「この手法により、最初に口に含んだときに香る味わいと喉ごしを、ビールに近いものにすることができました」と北村さん。数値でビールと比較しながら開発を進めていったことにより、ビールに近い味わいを実現することができた。

■SNSを使った積極的なサンプリング

 こうして完成した『キリン 零ICHI』は、発売前からSNS上でのサンプリングに注力した。「キリンのチャレンジ」と称したトライアルキャンペーンを3月中旬頃から実施し、応募者の中から抽選で1万名に『キリン 零ICHI』を2本進呈。当選した人は飲んだ感想を、“#ゼロイチおいしい”もしくは“#ゼロイチいまいち”のどちらかのハッシュタグを付けて投稿してもらうことにした。肝心の結果だが、北村さんは「“#ゼロイチおいしい”の方が多かったです」と振り返る。

 発売後もSNS上で、「ゼロイチはじめる」キャンペーンと「#わたしのゼロイチ」キャンペーンでサンプリングを実施した。

「ゼロイチはじめる」キャンペーンも、ほぼ1万名の当選者に2本進呈。「キリンのチャレンジ」とは違い、こういうときに『キリン 零ICHI』を飲んでみたいというシーンを投稿してもらった。「普段あまり考えていない、ノンアルコール・ビールテイスト飲料が飲めるシーンを考えてもらい、それをきっかけにして飲み始めてもらうことを考えました」と北村さん。また「#わたしのゼロイチ」キャンペーンは、丸皿に盛りつけた料理と箸やスプーン、フォークを縦に並べてロゴマークの0(ゼロ)と一(イチ)をつくって写真に撮り、それを感想などとともに“#わたしのゼロイチ”というハッシュタグをつけてSNSに投稿した人の中から抽選で1万名に、『キリン 零ICHI』を2本進呈した。

 サンプリングはひとまず終了したが、現在は応募受け付け締切が10月2日までと長期の「絶対もらえる!わたしのゼロイチキャンペーン」を実施中だ。最需要期の夏に向けた拡販の意味から取り組まれているもので、貯めたポイントに応じて箸置き小皿か料理皿がもらえる。

★★★取材からわかった『キリン 零ICHI』のヒット要因3★★★

1.ビールらしい味わい

 以前のノンアルコール・ビールテイスト飲料の味に不満があり、それがきっかけで離脱してしまった人が多い。そこで、「一番搾り製法」を使い、麦の味わいやコクが感じられるものを開発。ビールらしいものが完成し、味に対する満足度が上がった。

2.「一番搾り製法」への注目

 開発に用いた「一番搾り製法」を強調することで、『キリン 一番搾り』のような味わいを想起。ノンアルコール・ビールテイスト飲料の離脱者も含め広く注目されるきっかけをつくった。

3.発売前から浸透

 SNSを使い発売前からサンプリングを実施。話題づくりに努めたことで、発売時には広く知られている状態ができていた。

 ノンアルコール・ビールテイスト飲料は、ビールが飲みたくても飲めないときに飲む代替飲料から、料理のお供として気分やシチュエーションに応じてチョイスする飲料に変わってきている。味を追求した『キリン 零ICHI』がさらに売れ続ければ、成熟した市場を活性化し、この流れを加速することになるだろう。

■文/大沢裕司

@DIME編集部

最終更新:7/20(木) 7:10
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