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ビジネス書を読んでも、研修に出ても実践で役に立たない理由とは?

7/20(木) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

◆書籍を何冊読んでも、実行できないコーチング

 身に付けたいスキルをパーツ分解し、コアスキルを反復演習する「分解スキル反復演習型能力開発プログラム」を企業や団体で実施していて、参加者から受ける質問のひとつに、「コーチングの実践ができない」というものがある。

 聞いてみると、これまで、会社や個人でコーチング研修を受講したり、コーチングに関する書籍を読んだりしてきたが、行動で再現できないというのだ。このように、コーチングをする側からの質問をしばしば頂く。

 一方で、コーチングを受ける側からの懸念の表明もある。「会社を挙げてコーチング研修が実施されていて、自分の上司も相当な時間を費やして参加しているが、コーチングをしているように思えない」というものだ。

 演習参加者に、コーチング研修を受講したり、コーチングを書籍で学んだりしたことがあるかどうかを聞くと、大手企業では、ほとんどの人々があると答える。そこで、コーチングロープレを実施していただくのだが、逆に、ほとんどの人々が、コーチング話法を繰り出せておらず、コーチング実践ができていない。

 コーチングが実践出来ていないという判断は、私の見解でもあるが、コーチング・ロープレをしたビデオを自分のスマートフォンで自撮りして、その動画を自分で視聴した結果の、参加者自身の感想でもあるのだ。「あれだけコーチングを学んできたはずなのに、それが出来ていない……」と動画をみて、愕然とする参加者がいるのだ。

◆いくら研修を受講しても、行動する際に生かせない

 私は、マネジメントにおけるコーチングとは、マネジャーがメンバーに対して、命令したり押し付けたりしないで、マネジャーとメンバーがお互いの考え方をすり合わせて、方向性の合意をしながら、仕事を進めることをサポートするものだと考えている。

 ビジネス活動においては、トップダウンで進めなければならないこともある。しかし、考え方のすり合わせをして、方向性の合意をすることでパフォーマンスが上がることも多い。実際にアクションするのは、メンバーなのだから。

 こうしたコーチングの考え方や展開の仕方を学んでいるにもかかわらず、実際のビジネスの場面では、コーチングとは真逆の命令や押し付けがはびこっているのだ。研修の場や書籍を読んでいる時には、わかったと思ったり、よしやろうと思ったり、これは必要だと実感するようだが、いざやる場面になると、行動に反映されないことが、長年繰り返されている。

 このように、頭ではわかった(つもりだ)が、行動で再現できない、理屈は勉強したが役立てることができないという事態に陥った理由を、直面したビジネスパーソンは、次のように考えているようだ。

・頭でわかったつもりだが、行動に反映するための方法がわからない

・理論を理解することと、それをアクションするということが、別の能力を用いる

・長年、トップダウンで行動してきたので、コーチングを学んだからといって、すぐに変わらない

・理論は概念的で、包括的なので、具体的なビジネスの場面と乖離がある

◆理論はむしろ不要!

 コーチングを学んだがコーチングを実践できないという悩みを、なんとか解決して差し上げられないか、20年来、さまざまな方法を試してきた。より時間をかけて、丁寧に理論を学ぶ方法、理論と実践を交互に繰り返す方法、実例を用いながら解説する方法……。

 そのような中で、今日、最も効果が出ている方法が、理屈や理論はさておいて、プログラムの中では、スキル訓練を集中して実施する方法だ。理屈をさておくということは、まったく学習しないということではなくて、プログラムが始まる前に、理論や背景などを学習しておいていただくというものだ。

 プログラムの中でスキル訓練を集中して行うということは、1プログラム2時間の中で、6つのスキルを15分ずつ集中的に、話法の検討やロープレやグループ討議などで、訓練するということだ。

 そして、6つのスキルとは、コーチングを実践できるようになるために、最も必要なコアなスキルだ。スキルをパーツ分解して、コアスキルを見出し、そのコアスキルさえ体得すれば、他のスキルも連鎖的に発揮できるようになり、コーチングを実践しやすくなるというスキルだ。

 これが、身に付けたいスキルをパーツ分解し、コアスキルを反復演習する「分解スキル反復演習型プログラム」の意義だ。2時間のプログラムの中では、理論の説明や解説はない。ひたすら、演習をしていく。

 時々、「理論学習も必要ではないか」という声が寄せられる。私は理論学習の必要性を否定しない。しかし、理論や理屈はわかっていなくても、極論すれば、コーチングの書籍を一冊も読んでいなくても、コーチング研修を全く受講していなくても、コーチング話法を実践の場で繰り出せる人と、コーチング書籍を10冊読破し、コーチング研修を受講していても、コーチング話法が繰り出せない人とで、コーチング実践力があるかといえば、まぎれもなく前者である。分解スキル反復演習型能力開発プログラムは、実践力を高めるためにこそ、活用されるプログラムなのだ。

※分解スキル反復演習型能力開発プログラムは、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月。ビジネス書ランキング:2016年12月丸善名古屋本店1位、紀伊國屋書店大手町ビル店1位、丸善丸の内本店3位、2017年1月八重洲ブックセンター4位)で、セルフトレーニングできます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第40回】

<文/山口博>

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。株式会社リブ・コンサルティング 組織開発コンサルティング事業部長。さまざまな企業の人材育成・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、リブ/コンサルティング組織開発コンサルティング事業部長。。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。

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