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かつての自民党の「派閥政治」は日本の家族類型にピタリとはまっていた

7/21(金) 8:00配信

BEST TIMES

英国のEU離脱など、世界情勢の大きなうねりを読み解いてきた、エマニュエル・トッド理論。じつは日本という国のあり方を考える際にも有効なツールだ。トッドの家族類型では「直系家族」に分類される日本だが、昨今では核家族主義、個人主義の流れもある。どうバランスをとるべきか。新刊『エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層』を上梓した鹿島茂氏に聞く。

自民党こそが直系家族的

 現在の官邸というより、かつての自民党の「派閥政治」こそが直系家族なんですね。そもそもかつての自民党は「党」とは呼称すべきでないと思っています。ドイツ文学者の種村季弘さんが昔「自民党は日本そのものなんだ」と言っていたように、右から左まで全部の要素を持っていた。カネも派閥が自己調達するから、各派閥が小さな直系家族であり、自民党はその集合体だった。

 直系家族の最大の特徴は、父親が権力を握っているのではなく、父親に権威があることになっていて、実際に権力を揮うのは長男の嫁。自民党でいえば、幹事長が権力を握る。そして、各派閥の長も最初から相続で決まっているんじゃなくて、実力がある人間がなっていた。

 

なぜそれが今の状態になってしまったか

 そういった直系家族的性格が色濃かった頃はうまく回っていたと思います。それがなぜ今のような状況になってしまったかと言えば、小選挙区制が導入されたからです。

『アメリカのデモクラシー』を著したアレクシ・ド・トクヴィルが1830年代のアメリカを観察していて、「下院議員は驚くほどバカばかりだが、上院議員は逆に素晴らしい人間ばかりだ」と評しています。

 この差がどこから生じるのかといえば、上院は当時間接選挙だったんですね。選挙人を選び、その選挙人がまた選ぶ。かつての自民党の派閥政治はまさにそのやり方だった。選ばれた議員が派閥の中で派閥の代表を選ぶから、最終的にはまともな人間が残って派閥をリードして、ダメなヤツは挙手要員としての陣笠議員になる。小選挙区制度を導入してそれを壊したのが小沢一郎氏ですね。トップに誰が立つかだけで、選挙区に誰が立とうがその時々の人気に左右されてシロクロがつくだけ。

 だから首相、官邸に権力を集中して党からは力が削がれた格好になっている。小選挙区は完全に官邸主導と連動しています。小選挙区制ではトクヴィルが言うところの、「バカばっかり生まれ出てくる」のも必然だと思う。

 私が日本国憲法を変えるとしたら、二院制を変える。衆議院議員の互選によって参議院議員を選び、全ての権力を参議院に与える。これがベストな方法だと思いますよ。

 

文/鹿島 茂

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